水鏡
晴れたので、リューオスは草むしりをしていた。
ふと、いつぞやの水たまりができた場所を見てみる。
なんの変哲もない地面だった。
そういえば、その周辺の土は草が生えてないような……?
何気なくその場所の土を払ってみた。
そうして思い出した。
リューオスが子どもの頃、そこに平たい石か何かあって、父親が一生懸命石を寄せようとしたのだ。
思ったより大きな石だったようで、結局どかすことはできず石の上にそのまま土をかぶせた。
リューオスはスコップを持ってきて、土を寄せた。
そうすると、あった。
そこに平たい黒い岩のような石のような物体。
自然のものだろうか? 人工物のようにも思えた。
平な岩だが、くぼんだ形状になっている。
これはもしや……?
リューオスは池の水を運んでいた。
そこへホウセンカがついてきた。
「なんだなんだ? 雨が降ったばかりなのに。畑に水やりか?」
「まあ、そう見えるよな」
リューオスは苦笑した。
「今日は釣れないのか?」
「全然。雨が降ったから魚が暴れてるかと思ったのに」
リューオスは両手にバケツ一つずつ持って歩いていた。
「俺も手伝ってやるよ」
ホウセンカはリューオスの持ってるバケツを一つ持って、飛び上がる。
「畑に持っていくんだろ?」
リューオスが頷くと畑へと飛んでいく。
「助かるよ」
とリューオスは片手で持ってたバケツを両手に持ち直して歩いた。
リューオスは黒い岩のくぼみの部分にバケツの水を入れてみた。
すると、やはりそうだった。
溜まった水にタツキの姿が映っていた。
タツキは一人で空を見上げていた。
「なあ? これが見えるか?」
リューオスはホウセンカに聞いてみた。
「ああ、見えるよ」
「やっぱり」
「黒い石だろ?」
「じゃなくて……」
「なんだ、池の水でも入れて魚でも飼うつもりか?」
どうやら、ホウセンカにはこの映像がまったく見えてないらしい。
「こんなんじゃ小さすぎるだろ」
「いやいや、魚は飼わないよ」
ホウセンカは不思議そうに黒い石を見下ろしていた。
リューオスはどうしたものか悩んだが、説明するのは辞めた。
そのかわりに、
「桃、持っていくか?」