6/12
釣り人
天空岩は意外に広い、とリューオスは改めて思った。
その日は、池まで歩いていた。
そんなに深い池ではなさそうなのに、釣りをしている竜人がいた。
「釣れる?」
「三匹釣れた。なんだ、翼なしのリューオスじゃないか」
と答えたのは、ホウセンカだ。
同じ岩の上で暮らしてるから、互いの名前は知っていた。
「たまに魚、食べたくなって。桃と交換しないか?」
「いいねぇ」
ふと、リューオスは、タツキが地上でどんな食事をしてるのか気になった。
「地上に落ちた子どもの話は知ってるか?」
「知ってるよ。タツキって子だろ。無事に帰ってくるといいな」
「地上……竜の大地ってどんなとこだろうな」
「さあね? 上から見た感じじゃ日が照らないのに、それでいて熱そうで、地面から炎が噴き出して、ありゃ、この世の地獄だな」
「……見てみたいな」
「マジか!?」
ホウセンカは釣り竿を握ったままだった。地上のことよりも釣りの方が気になるようだ。