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伝言
リューオスは思う。
タツキという子ども、桃泥棒の常習犯ではあるが悪い子ではない(だろう)。
父親にこっぴどく叱られたのだろう。
タツキは家に居づらかったのか、桃畑の中に座り込んで泣いていた。
その傍らにファニィがいて、慰めるようにアームを動かし頭をよしよししていた。
「桃が好きか?」
リューオスはそんな風に声をかけていた。
タツキは頷いた。
「じゃあ、畑の手伝いをしろ。そしたら桃ぐらいやるから」
タツキは頷いた。
「親を泣かすなよ」
それから、タツキはリューオスの畑を手伝うようになった。
* * *
リューオスは、タツキの家族にタツキが地上にいることを伝えた。
今のところ、帰る手段がないことと、一応は無事なことは伝えた。
母親は泣きだしそうだったが、我が子の無事を喜んでいた。
そして、リューオスは地上に魔導電話をかけた。
あいかわらず雑音だらけで通じにくい状況だった。
タツキの家族にはタツキが無事であること伝えた、というメッセージはなんとか通じたようだ。