美女の謎
1950年のイギリス、ある謎で有名な美女がいた。それは何十人もの男性からプロポーズをされたにも関わらず、その全てを断ったという。
彼女は気さくな女性だったので男性だけでなく、周りの女性にも人気があった。老若男女問わず色んな人々から愛された彼女であったが、色恋沙汰はまるでなく、男性と二人きりでいるところを見た人など一人もいなかったくらいである。
そんな彼女にある友人の女が何故恋人を作らないのかを聞いたことがあった。彼女は綺麗な笑顔でこう言った。
「愛し合っている人がいるの」と。
もちろんこの噂はすぐに街中に広まり、話題となった。それは仕方ないことであろう。なぜなら、彼女は恋の噂が一切ない女性である。しかもそんな彼女が「愛し合っている人がいる」というのだ。彼女にプロポーズした男たちはもちろん、彼女の友達など、彼女のことを知っている人物たちは皆彼女の謎に興味を持っていた。
誰もが気になる秘密を暴こうとする人も多く、特に彼女の女友達などはただそのような色恋沙汰に興味かあるわけで、人並み以上に彼女の噂の彼を聞こうとしていたが、彼女はその彼のことだけは一切話そうとしなかった。
そんなこんながあり、結局彼女の噂の彼の情報は一切掴めないまま、何年ものときが過ぎ、彼女も一人の老女となってしまった。
彼女はなんの色恋沙汰もなく、最後にはベッドで寝たきりになってしまった。慕われていた彼女は女友達に囲まれながら、ついに最後の時を迎えることになった。
彼女は最後の最後に、周りにいる彼女の友人に言うわけでも、彼女自身の人生に言うわけでもなく。ただ、此処にはいない誰かへ向けてこう言ったのだ。
「私はいつまでも待っているわ…」
1850年のイギリス、1組の老夫婦の姿があった。
「おじいさんや。私はあんたを愛せてよかった」
おばあさんはベッドで横たわったまま、自分の最後を悟ったように言った。
「ワシもじゃよ。ワシもお前を愛せてよかったと思っとる」
おじいさんはそれを悟った様子だったが、悲しそうな顔はせず、落ち着いておばあさんに伝えたいことを伝えた。
「おじいさんや…」
「また、、、またあんたを好きになってもええかな…?」
「あぁ、勿論だとも」
おじいさんはとてもとても優しい声で言った。
おじいさんの手をしっかりと握っていたおばあさんの手は、ゆっくりと力を失った。
二人の側で暖炉の火は暖かく燃え続ける。