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座敷童が小豆ご飯に飽きたと言っています。  作者: ヴぃc
第1章 アラサー無職彼氏ナシから頑張るゾ
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グリンピースご飯

 散歩の途中、畑仕事をしていたオクサマにえんどう豆をどっさりもらった。ラッキー今日はグリンピースご飯だな♪と泣いた烏がもう笑うよろしくウキウキしながら帰路についた。

 鼻歌まじりにえんどう豆のすじをとってさやから豆を取り、塩水にどんどん漬けていく。翡翠煮も捨てがたいけれど、今日は5合分のグリンピースご飯を炊いちゃうんだ。ニヤニヤしながらお米を研いでグリンピースと一緒にスイッチオン。先にグリンピースをゆでた後の煮汁でお米だけ炊いてから混ぜた方が緑が綺麗なのはショウチノスケ。だけど、私としては断然一緒に炊く派。だってその方が部屋中にお米とグリンピースが炊ける幸せな匂いが充満するんだもん。

 ご飯が炊ける間に、さっさとお味噌汁を作る。今日はグリンピースご飯がメインだからおみそ汁の具は、わかめと油揚げ。

 それからそれから『簡単だし巻き卵』を作ろう。卵3個を割りほぐして『卵豆腐』1個と備え付けの『たれ』を混ぜたら後は焼くだけ。手間なし!失敗なし!部屋中に漂う幸せな香りを胸いっぱいに吸い込んで『簡単だし巻き卵』を焼いていると、ひざ丈の黒い着物っぽいものを着た5~6歳くらいの男の子が立っていた。

 見知らぬ男の子(・・・・・・・)が鼻をヒクつかせながら立っている。全く意味が解らない状況に声も出ない。


「なんだか美味しそうなにおいがする!」


 この状況にありえないほど無邪気な甲高い子供の声。


「グリンピースご飯を炊いてるんだよ。」

「ボクもグリンピースご飯を食べたいっっ。」


 ピピピッピピピ。間抜けな機械音が鳴りグリンピースご飯が炊けたことを炊飯ジャーがお知らせしてくれた。状況に全く追いつけないポンコツな脳みそは一旦横において、念願のグリンピースご飯を2膳よそう。腹が減っては戦ができない。

  うん。まず食べよう。


 2人分にするにはだし巻き卵だけじゃおかずが足りないと思い、ウィンナーを炒めてプチトマトを添えた。

 ガツガツとグリンピースご飯を掻き込む子供を見ると、この美しい幼児に対して親のネグレクトが心配になってきた。児童相談所に通報するべきかなぁと思いつつ私もグリンピースご飯を食べる。

 得体の知れない子供と食卓を囲むなんて我ながらのんき過ぎると思うけど、どうしてだかこの子供を忌避する気持ちがわいてこない。

 さんざんご飯のおかわりをして気が済んだのか、キラキラした瞳で私をじっとのぞき込んでくる。


「まずは自己紹介するね。私は渡辺 のり子。あなたの名前は?」

「前の家では、わらしさまって呼ばれていたよ。」


 ネグレクトで逃げて来た少年じゃなくてリアルに座敷童なわけ!?人間離れした美しい(かんばせ)は、確かに妖怪と言われた方がしっくりくるけど、お布団にダイブしたら夢オチで終わらないかなぁ。無言の私をしり目にわらしさまは唇を尖らせてぐだぐだと愚痴を言い始めた。


「ボクがせっせとお家を栄えさせてあげてもお供えされるのは小豆ご飯だけ。あいつらは、ステーキや、すき焼きや、ピザなんか食べてるのにさ、ボクにお供えされるのは来る日も来る日も小豆ご飯。小豆ご飯以外が食べた~いって叫んでもちっともわかってもらえないし、ボクたち座敷童は家から出たらその家には帰ってこれないからずっと、ず~~~~~っと我慢して小豆ご飯食べてたんだけど、どこからかおいしそうな匂いが漂ってきてふらふら匂いを辿っていたらここに着いたんだ。」

「いくら美味しいご飯でも毎日同じだと確かに飽きるわね。」

「でしょ?のりちゃんにはボクが見えるし会話もできる。のりちゃんのご飯はとっても美味しかったから今日から僕ここに住むっ。」


 わらしさまは椅子の上に立ち上がって、鼻息荒くそう宣言して満面の笑みを浮かべた。

 どうやら、私はどこぞの家の座敷童をグリンピースご飯でたぶらかしてしまったらしい。どこの家かわからないだけに良心の呵責もあんまり無い。

 どうやら今日から『小豆ご飯に飽きた座敷童』が同居することに決定したようです。

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