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第3話 Repeated Nightmare “天丼はギャグの基本”

 


 路地裏にて。


「おうおう、随分と生意気な真似してくれたじゃねぇかぁ、おい!?」


「え、え、いや、単にこの道を通ろうとしただけで……」


「ここは俺達“地獄の三兄弟”の縄張りなんだよぉ!

 通り抜けたいなら、通行料を払って貰おうかぁ?」


「え、え、え、え?」


 強面の青年(あまり歳はいってなさそう)が、臆病そうな少年を脅しつけていた。

 なんというか、典型的なカツアゲのシーンである。

 典型的でないところを敢えて挙げるなら、カツアゲしている青年の周囲に時折雷光が走っていることだろうか。

 つまるところ、彼はアンリミテッドである。


「……ふむ」


 そんな一幕を見て、昌は小さく頷いた。

 と同時に声が聞こえる。


『ジャスティセイヴァー!

 悪の手先が善良な市民を虐げてるよ!

 懲らしめてやらないと!!』


「そうだな」


 小さく返事をする。

 ノイからの通信だ。

 状況からも分かる通り、今彼はジャスティセイヴァーのスーツを着込んでいる。


(……ちょうど良さげな感じもするし)


 こちらは声に出さない。

 今日の獲物――もとい、お相手は比較的手が出しやすそうな気がする。

 正直、言動から三下臭があるし。

 こんな人気の無い所でこそこそと弱気そうな相手に恐喝してる辺り、大したギフトでも無いだろう。

 この間出会った不良学生とキャラ付けも同じだし。


 ――前回と同じシチュエーションじゃないか、とか突っ込んではいけない。

 昌の目的は悪人を懲らしめることではなくノイの遊びに付き合うことなのだ。

 カツアゲくらいがちょうどいい案件なのである。


『ランクは――Dかな。

 ちょっとした電力を操れるって感じ?

 ま、ジャスティセイヴァーの敵じゃないよね!』


「え、そんなこと分かるのか?」


『当ったり前じゃん!

 ジャスティセイヴァースーツにはボクが開発した超凄いセンサー積んでるんだから!』


「へー」


 素直に感心しておく。

 そういえば、この場所への案内もノイが主導していた。

 アンリミテッドを探索するレーダーみたいなものでも付いているのかもしれない。


(しかし、となると前の不良くんよりかは厄介なのか)


 幻の炎を見せるだけの彼とは違い、今回の青年は物理的効果を発現できるギフトらしい。

 ノイの口振りを信用するならば、然程危険な能力でもなさそうだが。


『んー、ま、ざっと計算して200kV出すのが関の山かな。ハハ、ザコい』


 ちょっとイラっとくる少女の言葉は置いといて。

 実際その程度の電力なら危険も少なそうだ。


(よし、行くか)


 昌は決心し、2人へと声をかける。


「あー、ちょっと待った」


「あぁんっ!?」


 目つきの悪い青年だけが振り返る。

 大分イキった顔つき――なのだが。


「なんだてめ―――――え? ホントに誰、お前?」


 すぐに動揺が走る。

 まさか正義のヒーローのコスプレをしている人物に割って入られるとは思ってもみなかったのだろう。


(そりゃそうだ。

 俺だって思わない)


 普通に生活をしていたら、否、かなり普通じゃない生活をしていても早々お目にかかれないはずだ、こんな状況。

 しかし相手の混乱に付き合ってやるつもりはない。


「えーと、まあ、なんだ。

 カツアゲは止めるんだ。

 さもなけりゃ、このじゃ、ジャスティセイヴァーが許さないぞ?」


『もっとはっきり言ってよー!

 なんで口ごもるのさ!?』


 ノイがぶつぶつ言ってくるが、素面でこんな台詞言え、なんて無理な話だ。

 一方、相手の青年は信じられないようなモノを見たかのような目でこちらを見つめながら、


「……ジャスティセイヴァー?」


「……うん、ジャスティセイヴァー」


 聞き返されるとかなり恥ずかしいのだが、それを堪え。

 昌はとりあえず例の“儀式”を執り行う。


 ①右手でガッツポーズ。

 ②武道のニュアンスを込めて両手で∞を描く。

 ③正拳突きを決める。


「正義の拳で、弱きを救う。

 破邪拳聖、ジャスティセイヴァー……だよ?」


『前よりはマシだけど、まだまだキレが悪いなぁ』


 ノイからの厳しい採点。

 いい大人が人前でこんなことやる勇気も鑑みて欲しいところだ。


 その一方で、一部始終を見ていたカツアゲ男は腕を組んで空を見上げ、


「……そうか。ああ、そうだな。

 そろそろ暖かくなってきたころだもんな」


 変な納得のされ方をしていた。


「なあアンタ、一つ良いことを教えてやる」


「うん?」


 青年の言葉に、思わず返事をしてしまう昌。


「この路地を出た右曲がって、三つ目の交差点を左に行くとスーパーがあんだがよ」


「うんうん」


「その裏手に、腕のいい精神科がある」


「誰の頭がおかしいって!?」


「まともな思考でそんな格好できるってんなら、相当やばいと思うぜ」


「……ま、まあ」


 ――それもそうかもしれない。

 白昼堂々と特撮ヒーローのコスプレしているとかどう考えても……


(いやいや、お金のためなんだ、お金のっ)


 深く考えるとくじけそうになる、ので。

 昌は迷いを振り切り、カツアゲ男に向けてヤケクソ気味に叫ぶ。


「とにかく!

 悪行を働くお前を倒しに来たんだよ、こっちは!」


「な、なにぃ!?

 こっちは親切で言ってやったのに、なんだその態度は!!」


「うん! それは! ありがとね!」


 割と真面目に心配してくれてた口調だったので(それはそれで屈辱だが)、一応お礼も言っておく。


「へっ! しかしてめぇ、俺が“地獄の三兄弟”長兄、“雷光の太一”だと分かってんな口聞いてやがるのか?

 ヤクザ(っぽい人)だって、俺らを避けて歩くんだぜぇ?」


「ああ、そうなんだ」


 名前からして、他に2人居る模様。

 しかし自分を地獄の三兄弟とか宣う奴に痛い人扱いはされたくないものである。


 カツアゲ男――もとい雷光の太一は、その名の通り雷の火花をバチバチを見に纏い、


「俺の“雷”、かわせるものならかわしてみなぁ!!」


「ジャスティ・パーンチ」


「げほぅっ!?」


 気の抜けた掛け声と共にパンチ一発。

 地獄の三兄弟長男は地に倒れ伏した。


 なお今のジャスティパンチはこの間の反省を生かし、出力を大幅下げてさながらスタンガンのような使い方ができるようになっている。

 おかげで太一君は気絶しただけで命に別状は無さそうだ。


(最初からそうしろと思わないでもないが)


 それでも改善に動いてくれたのは有難いことである。

 ずっとあのままだったらどうしようかと不安だったのだ。


『やったね、ジャスティセイヴァー!!

 大勝利だよっ!!』


「そだな」


 嬉しそうなノイの声に軽く返し、昌は(警察が来ないうちに)その場を去ろうと――


「待てぇっ!!」


「え」


 ――したところで、呼び止められた。

 声の方を見やれば、程近くにあるビルの窓が開かれ、そこから青年が顔を覗かせている。

 タイミングから見て、地獄の三兄弟の一人なのだろうが――


「……不法侵入?」


「いや、ここ俺っちらの部屋だから」


「……それなら問題ないか」


 昌がふと零した疑問へ律儀に答えてくれた。

 長男がカツアゲしていた時に縄張り云々言っていたが、単に住んでるアパートがすぐ近くだったからということらしい。


 それはそれとして。


「まあ、とりあえず聞いておくけど、お前誰?」


「はんっ! よくもそんなことを言えたもんだな!!

 俺っちは“地獄の三兄弟”次兄の“氷像の太二”!

 てめぇ、兄貴をやってタダで帰れると思ってんじゃねえだろうな!!」


「……そ、そうか」


 分かりやすい説明だった。

 その二つ名からして、冷却能力のギフトなのだろう。


『んー、ランクはお兄さんと同じっぽいねー。

 ま、ジャスティセイヴァーは液体窒素の中でも不自由なく行動できるように設計してるし、ヨユーヨユー』


「……む、無駄に高性能だな、このスーツ」


 遊びにそこまで全力を傾ける必要があるのか甚だ疑問だが、昌が造ったわけでも無いので気にしても仕方ない。

 そもそも本当にノイの言うスペック通りかも怪しいところなわけだし。


「なにブツクサ喋ってんだコラァッ!!」


 少女との通信をしていると、次男の太二君は窓から身を乗り出し路地裏に躍り出てきた。

 そのままの勢いで昌へ突貫してくる。


「俺っちのギフトは“冷却”!

 そのおかしなスーツごと凍らせてやらぁっ!!」


「ジャスティ・パーンチ」


「ほげぇっ!?」


 気の抜けた掛け声と(以下略)

 路地裏に転がる人影が2つになった。

 昌は2人目の地獄三兄弟にも怪我はないことを確認し、


「……じゃ、帰るか」


「待てえぃ!!」


「え」


 三度、路地裏に怒号が響く。

 驚くべきことにそれを発したのは――


「……君、さっきカツアゲされてたよね?」


 ――地獄兄弟に脅迫されていた少年であった。

 先程まで怯えていた彼はこちらをきっと睨み、


「ああ、あっしは兄貴達の恥ずかしいノリについていけず、地獄の三兄弟を脱退したのさ。

 その結果があの制裁だよ。

 だけど――だけどよぉ!

 目の前で兄貴達をやられて、黙っていられる程あっしは人間デキていねぇのさぁっ!!」


 だったらもっと前に割り込んでくればいいじゃないか、とは思うものの。


(まあ、彼らの間にも色々あるんだろう、きっと)


 他にもツッコミどころは色々あるが、面倒臭いので全部はスルーすることにした。

 こちらが黙っていると、三男の太三君が迫ってくる。


「あっしは“俊足の太三”

 ギフトは“加速”よぉっ!!

 力こそ兄弟最弱だが、なに、当たらなければどうということは無いっ!!」


「ジャスティ・パーンチ」


「もへぇっ!!?」


 気の抜けた(以下略)

 結局、路地裏には地獄の三兄弟全員が転がることとなった。


「……ふぅ」


 一息ついた昌の耳に、サイレンの音。

 誰かが通報したのだろう、警察が近づいているようだ。


「……考えてみたら、今日は逃げる必要ないんだよな」


 ふと気づいた。

 前のようにクレーター等作ってはいないし、カツアゲ犯も気絶させただけで怪我はない。

 犯行の様子は、スーツに搭載されたカメラで録画済み。


「急いで逃げ出すのも疲れるし」


 そういう理由もあるにはあるが。

 ともあれ、警察への弁解準備はパーフェクトと言える。

 気を大きくした昌は何となく仁王立ちになり、パトカーを待ち構えた。


「ふっふっふ、来るなら来い」







 ――そして。


「うん、事情は分かったけど君も署に来てね?」


「え」


 駆けつけてきた警官に腕を掴まれる昌がそこに居た。


「な、何故!?

 俺はカツアゲしてたアンリミテッドを捕縛していただけで――」


「うんうん、分かってる分かってる。

 アンリミテッドに対してはその辺り割と緩い(・・)しね。

 でも――」


 警官は何かを諭すような顔でこちらを見つめてくる。


「――これ正直なとこ、ただ兄弟で(・・・・・)じゃれ合ってただけ(・・・・・・・・・)とも思えないかね?」


「…………それもそっすね」


 とりあえず、任意同行という形にはしてくれた。





 取り調べ室にて。


「……また来たのか、お前さん」


「いや、すいません、ホント、別に悪気があってやったわけじゃないんです」


 前と同じ刑事さんに睨まれながら、昌は前と同じように謝り倒す。

 目から涙が出そうになるのを必死に抑えながら。




 ――結局、あの3人には他に余罪もあるということで、3時間程度の僅かな(・・・)拘束で昌は無罪放免となった。




 頑張れ、ジャスティセイヴァー!

 挫けるな、岩崎昌!

 約束の報酬を貰う、その日まで!!


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