桑名の鍛冶師
すみませんこれで伊勢志摩の章最後の予定だったんですが、
私なりの話の区切り上、もう一話増えます。
そして鍛冶師・村正と出会います。
天文4年(1535年)9月某日
━━━━平手政秀 齢43━━━━
北畠家の者達も連れて桑名港まで戻ってきたのだが、さて……
まさか実用性重視して打って貰った太刀がここに来て、突如半ばから折れてしまうとは……
不純物でも混じっていたか?
「太刀を新調しようにも、打った物を見てみないと分からんからな」
そう一人愚痴る平手を見て、近くにいた目ざとい商人が平手に近づいた。
「お武家様、お困りのようですが如何なされましたので?」
良い鴨を見つけたとニヤケ顔で近づいて来たのが気に入らぬが、その商人にどうしたものかと事情を説明することにした。
「実はな此処最近まで使っていた太刀が、突如半ばから折れてしまってな……どうしたものかと困ってしまってな。」
「それでしたら、この桑名港に良い鍛冶師が一人心当たりありますよ。なんでもその鍛冶師の太刀を使用した者が曰く『これほど切れ味が鋭く、一寸の事では曲がらない太刀は見たことがない。まさに剛剣と言えよう!』との話がありまして……、ここ最近ですと三河松平家の阿部正豊様がその太刀を手に入れなさったとか。」
「ほぅwそれほどの切れ味の剛剣かぁ!!」
(ん?阿部正豊?)
確か阿部正豊と言えば確か……『森山崩れ』の正豊か!?
阿部正豊
1521~1535
統率力 1
武 力30
知略力17
政治力 1
列伝:家康の祖父:松平清康が暗殺された『森山崩れ』の当事者。
守山城攻略のため布陣中、謀反の疑いがあった父・定吉が
誅殺されたものと勘違いし、清康を斬った。
備考:いま現在、清康殿は生存確認されています。
阿部定吉
1505~1549
統率力65
武 力46
知略力62
政治力64
列伝:松平家臣。息子の弥七郎が主君である清康を誤殺。
その責任からか自害をはかるが止められる。
清康の子・広忠の岡崎帰城に尽力し、その後は補佐役として活躍をした。
備考:現在親子で鳴海城に詰めています。
ふぅ、清康殿はまだ生存中か……
…………
……
あれ?『森山崩れ』って確か師走だっけか?
って、あまり時間が無いじゃないか!?
儂も太刀を手に入れて、防がねばならんな。
「済まぬが急ぎ、その鍛冶師の元に案内してもらえんか!?」
何やら鬼気迫る気迫を感じたのか、商人は急ぎ鍛冶師の元に案内するのであった。
案内してもらった場所は長屋の様な形の建物であった。
「此処にその鍛冶師が?」
「はい、此処がその鍛冶師の家です。」
「ふむ、案内ご苦労であったな。これは駄賃だ。」
そう言って小粒金を二~三粒渡すと、足取り軽くご機嫌に去って行く商人だった。
「さて、相済まぬ……この家の主殿はご在宅か。」
暫くすると、戸の奥から人の気配を感じた。
「誰だ?このしがない鍛冶師に何の様だい?お武家様や。ここにあるのは太刀や短刀、それに槍ぐらいだぞ。」
「うむ、実はの儂の使っておった太刀が、急に半ばから折れてしまってな。代わりに成ると言っては失礼であろうが、太刀を探していてな。」
「ほぉ……どれ?見せてみな。」
そう言われ腰から太刀を取り渡すとおもむろに、鍛冶師は太刀を斬り抜いた。
「ふむ……。これは……打ち直すよりも買い換えた方が良いな。太刀自身が死んでやがる。」
「そのような事まで分かるのか!?」
胸を張りニンマリとドヤ顔で、儂にこう言い放った。
「この桑名周辺じゃあ、俺に超える鍛冶師は居ないぜ。この村正様にはな!」
その名前を聞き…成る程と納得した瞬間、その名前であることに気が付いた。
「もしや藤原正真と言う御仁に知り合いはござらんか!?」
「ん?あぁ~ありゃ、俺の弟子だw」
【注:藤原正真 本多忠勝が使用せし蜻蛉切の作刀者である】
「と言う事は、千子村正と言われる太刀を造りしは……」
「おうw俺だ!」
うわwやべぇ~wあの村正の作刀者ご本人様だよw
失礼な態度取ってないよな?大丈夫だよな?
失礼な態度を取ってないと思いたい大丈夫であってくれ。
「これはとんだ無礼を!」
「無礼!?ちょいと待ちなお武家様や!?」
「いや、まさかあの太刀の作刀者にこうして会えるとは、是非とも村正殿の作った太刀を購入させていただきたい!」
「頭を上げてくれ!これじゃあ会話も出来やしない。まあ、ボロだが入ってくれや。」
こうして鍛冶師・村正と出会いその自宅に足を踏み入れることになった。
伊勢志摩の章の本当の最終話は、村正さんとの会話とスカウトになると思います……
うまく書ける……
今後、政秀さんの腰に差す太刀等は村正作の物になると思いますw




