始まり
念のためこの物語はフィクションであり、登場する団体・人物などの名称はすべて架空のものです。
世の中にVR技術が普及して数年。
VRゲームも様々な種類のゲームが開発された。
基本的にMMOに多いのは剣と魔法のファンタジー世界だがそうではないゲームもある。
和風世界だったり、大航海時代の交易商人になったり、三国志や戦国の武将や家臣になったり、ゾンビがうようよいる世界だったり。
戦いのないヴァーチャルアイドルを育てるゲームや農場・牧場をのんびり広げるようなゲームもある。
そんななかの1つに異色のゲームが有った。
”あなたも小説家になれる図書館”はその名の通り自分で小説を書いてその図書館の書棚におくことができるという変わったゲームだ。
しかも、そこから出版社に声がかかって商業出版される人間もいるくらいゲームは盛況なんだな。
実際俺がこのサイトを知ったのは”超皇帝”というアニメの原作がここのサイトだというのを知ったからだったりする。
小説家というのは決して派手ではないがそれなりに人気のある職業でもある。
そして”あなたも小説家になれる図書館”は基本は登録無料であって登録の手続きも難しくはない。
VR用のHMDやグローブも昔に比べれば随分と安くなったものだ。
俺は本が好きなただのオッサンだがなんだか面白そうだとこのゲームをはじめてみることにした。
必要なものはVR環境とパソコンもしくはスマホだけ、しかも馬鹿みたいにハイスペックなパソコンなどでなければ処理落ちするなんてこともない。
貧乏人には有り難いことだ。
早速、俺は”あなたも小説家になれる図書館”のサイトにアクセスし登録を行うことにした。
「ハンドルネームは……深海でいいか」
ちなみに深い意味はまったくない。
ハンドルネームとメールアドレス、年齢や性別などを登録してチェックをクリアすれば登録完了だ。
本来はアバターなどもある程度変えられるらしいが、面倒なので初期設定のなんの変哲もないおっさんのアバターのままだ。
「さてと、これであなたも小説家になれる図書館に
本格的にアクセスできるのかな」
”図書館”に早速アクセスすると、VRの巨大な図書館の入り口の前に立っていた。
「ふうん、ゲームの中はこんな感じなんだな」
”おかげさまであなたも小説家になれる図書館は
小説蔵書数が50万、登録者数は100万を突破しました”
そんなことが脇に書かれている。
「へえ、この中に50万もの作品があるのか」
図書館のドアを開けて中に入る。
その中はまさしく巨大な図書館であって、書棚の中にはずらりと小説が並んでいた。
そして、老若男女様々なアバターが図書館のなかを行き来している様子が見えた。
本を読んでいるものも書いているものもいるようだ。
「さて、超皇帝はどこにあるのかな?」
なんせ50万も作品があるとなると単純に書棚を探していたら日が暮れてしまう。
なにはいい方法はないかとメニューを見ると新着の短編小説・新着の短編小説・更新された連載中小説というリストや累計ランキングと言う文字がモニターに浮かぶ。
「いや、この中にはなさそうだよな」
さらにランキングを見ようとすると大きく分けて恋愛・ファンタジー・その他のジャンル別日間、週間、月間、四半期、年間とある。
「ファンタジーのランキングににあるかな?」
ざざっと日間ランキングを見てみたが残念ながらその中にはないようだ。
そして小説検索という欄を見つけた俺はそこに超皇帝という文字を入力してようやくその書棚に辿り着くことができた。
普通の図書館と違って目当ての本が貸出中で読めないということはないのはいいな。
「しかし、目当ての作品を探すのは思ってた以上に大変かもな」
そして早速見つけた超皇帝を俺は読み始めた。
「へえ、アニメとは内容は結構違うけどむしろ俺はこっちのほうが好きだな」
こうして俺は暇な時間には”あなたも小説家になれる図書館”に入り浸る日々が始まったのだった。