何をお願いしたんですか?
無事にクリスマスデートを終えた如月
そしてあっという間に、舞台は年越しへ!
十二月三十一日。深夜二十三時。
「着付け完了です!」
天衣さんが、にっこりと私に笑いかける。
鏡を見るときれいな絵柄の着物を着せられた、私がいた。
「わざわざありがとうございます、天衣さん」
「フフフ。似合ってますよ、如月さん」
「天衣さんこそ。というか初詣にわざわざ着物着ていかなくても……」
「わかっとらんなあ、如月。何もかも最初が肝心なんや。そんなこと言うたら、神様に願い叶えてもらえへんで」
美宇さんがため息交じりでつぶやいた。
ルナティックハウスのメンバーで初詣に行くとなった今、私は日向神社にお邪魔して着付けを手伝ってもらっていた。
神社の手伝いがある美宇さんは凪君のやさしさにより、初詣には一緒に行けることになったらしい。
とはいえ、何も着物を着ていくことないと思うけどなあ。
小学以来だぞ、着物着たの。
着物は天衣さんチョイスらしく、様々な花がちりばめられた青の着物だった。
美宇さんのは赤色で花火を絵柄にしたやつ、そして天衣さんはピンク色で朝顔が刺繍されていた。
「おっ、もうすぐ年明けるやん。そろそろ出るで、二人とも」
美宇さんに言われ、私ははいと明るく返事をした。
そして、待ちに待った一月一日!
神社前で他の男子を見つけた私達は、大声で言った。
「新年! あけましておめでとうございます!!!!」
「あ、三人とも! おそかっ……」
全員の顔が一気に変わった気がした。
ちょっとした沈黙を破ったのは、輝流さんだった。
「か……かわいいよ、三人とも! 着物着たんだ!~ すっげ~!」
「驚いたな。でも、似合ってるぜ全員」
「……ま、いいんじゃねぇの」
褒められたのがなんだかこそばゆくて、私はつい顔をそらした。
「うっしゃあ! ほないくで、初詣やで~! んで、どないするん? 何から行こうか?」
美宇さんが私たちに声をかける。
私より先に、輝流さんが口を開いた。
「んー……オレ的に除夜の鐘鳴らしたいけど、客多そうだしなあ」
「鐘鳴らすのは無理だろ。つーわけで鈴木、神社で働いてるんだろ? お前のオススメに任せる」
さすが神宮さん! ナイスアイデア!
その言葉を聞いた美宇さんは、にんまりと笑った。
「やっぱり一番はお参りが基本や! みんなあ! 賽銭の準備はええかあ!」
五円玉を高く空にあげながら、彼女は行ってしまう。
順番が回ってくるとみんなお金を投げ、鐘を鳴らした。
私の願いはもちろん、神宮さんとの恋がうまくいきますようにってこと。
そして、小説が完成できるように。
二つもお願いするのはずるいかもしれないけど、毎年やってるし問題ナッシング!
「如月さん、何をお願いしたんですか?」
「内緒に決まってるじゃないですか。ね? 美宇さんっ」
「分かっとるやん、如月。願いを口にしたら叶う確率が減るんやで~」
「へ~そうなんですね~」
天衣さんがそういって、にっこり笑う。
自分でそう言っときながら、二人は何をお願いしたのかが気になる。
将来の夢とかかな? 今度さりげなく聞いてみよっと。
ちらりと隣を見ると、無言で祈り続けている神宮さんがいた。
彼は目をつぶり、ずっと何かを願っているように見えた。
「王様~長い~あとつっかえちゃうよ~」
「あ、悪い」
「何をお願いしたんっすか、そんなにたくさん」
「たくさんっつうか……一つのことを念入りにってとこだな」
神宮さんのお願いって何だろう。
しかも念入りにやるほど、叶ってほしやつなんて。
そんなお願いが、神宮さんにもあるのだろうか……
(つづく・・・)
ちなみに私も如月と全く同じことやってます。
小説が完成することは叶うことが多いのですが、
他のことはまったく叶ってません。
やっぱり一個しか御利益ないんですかね・・・
次回、初詣はまだまだ続く!