今度は俺の番だ
天衣と魁皇までも、いい雰囲気(?)になりつつある東京旅行。
一日が過ぎるのはあっという間、一夜をホテルで過ごすことになった如月は・・・?
今回から如月視点に戻ってますので、ご安心を。
「お帰り、明王君、ずいぶん遅かったね。他の子達、もう部屋に行っちゃったよ」
ホテルに着くなり、玲音さんはそういって私達に笑いかけた。
遅くなったのは当然、私がアニメショップでグダグダしていたから。
そのあと神宮さんが東京の喫茶店にいきたいといって、コーヒー飲みに行って‥‥
うん、めちゃくちゃ東京満喫してるな。自分。
「はい、これ部屋の鍵」
「サンキュー。そういや、悠翔は?」
「仕事だよ、今日はたくさんお客さんが入ってるからって」
「あいつもまじめに仕事してるのか。一安心だな」
よかった~、あの人が仕事でいなくて。
会ったらまたなんかやられそうだし。
「荷物は部屋の中に置いてあるからね。それじゃあお二人さん、ごゆっくり」
玲音さんの優しげな笑みは心なしか楽しんでいるようにも見えた。
部屋番号は310だった。
玲音さんが言ったとおり、荷物がぼんと置いてある。
それにしても、一人部屋って広い!
修学旅行とかは三人だったから、一気に得した気分!
テンション上がってきたぜ、ヒャッハ~~!
何が置いてあるのかなあっと。
歩き回っているとベッドの隣に不自然にある空間があった。
なんだこれはとそうっとのぞいてみる。
そこには同じ構造の部屋が広がっていて、中に人がいるように見える。
その人とは、なんと―!
「……水瀬? なんでお前……」
か、神宮さん!?
なんで!? なんで神宮さんが隣の部屋にいるの!?
ていうかなんですか、この部屋の構造は!
「……やられた……鈴木の奴、悠翔に何か言ったな……あの野郎」
神宮さんはぶつくさ言いながら、ため息交じりで私に言った。
「これはコネクティングルームだ」
コネクティングルーム????
「なんですか、それ」
「二つ以上の部屋が内側のドアでつながっている客室のことだよ。廊下に出ずともお互いの部屋を行き来できるから、大人数の家族旅行とかに便利だって聞いた」
と、いうことは?
もしかして私、神宮さんと一夜を明かすことになるの!?
「まあ一人じゃ暇だし、ちょうどいいか。今日一日付き合ったんだ、風呂あがったらこっちに来い。今度は俺の番だ」
ま、マジですか~~~~~~!
どどどどうしよう! 私なんか悪いことしたかな!?
ああもう、美宇さんの意地悪!
戸惑いを隠せないまま風呂をあがり、そうっと神宮さんの部屋へと入る。
彼は机のようになっているとこで椅子に腰かけ、本を読んでいた。
はうわあ……かっこいい……
「お、お待たせしました」
「ん」
神宮さんは本を閉じると、不意に私を見ていった。
「きれいだな、髪。伸ばしてるの初めて見た」
はわわわわ!!
「前輝流さんにも言われました。私は長くてうっとおしいんですけど」
「杉本に? ふうん」
すると彼は顔をうずめ、ぼそりといった。
「いらつく」
え?
「なんか知らんがむしゃくしゃするんだよなあ。もやもやするっつうか、腹ただしいっつうか……なんなんだよ、これ」
ふいに同じようなセリフを言っていた漫画のキャラを思い出す。
まさか、まさかとは思うけどもしかして……
「神宮さん……それってたぶん……やきもちってやつじゃないでしょうか……?」
私が言うと、彼はびっくりしたように顔を上げる。
見る見るうちに顔を赤くし、私から目線をはずした。
「マジかよ……かっこ悪……」
うおおおお! 神宮さん、かわゆい!
やきもち焼くとか、好きって証拠じゃん!
やばい! 死にそう!
「だからあんときもむしゃくしゃしたのか」
「あの時って?」
「いや……水瀬、お前はあのアニメキャラが好きだったから俺にひかれたのか?」
図星をつかれ、私は何も言えなくなる。
黙ってしまったせいか、彼は分かったかのようにため息をついた。
「じゃあそっちの方が好きなわけだ」
「そうですけど……でも! 神宮さんも同じくらい……」
「だったら」
神宮さんはそういって、私を壁に押し付ける。
俗にいう、壁ドンとはまさにこのことなのだろうか。
「俺を一番に好きだって言わせてやる。覚悟しな」
か、神宮さん……
「お前が好きだ、如月……」
神宮さんの唇が、私と重なる。
初めてのキスは甘く、ほんのりと暖かった。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「にゅっふっふ~今頃如月とマスター、どうしてるんやろうなぁ~」
いかにも企んでいる様子で、美宇はニタニタ笑った。
何もかも、作戦通りだ。きっと二人きりなら距離も縮まるはず……
「ほい、あがり」
「チューン、ナイス~♪ ってことでミュウミュウの負けだね~♪」
「なっ! いつのまに! 尾上! 不正したやろ!」
「にやにや笑ってるからだろ、自業自得だ」
そういいながら、トランプをまとめる魁皇。
彼の隣には輝流はもちろん、天衣もいる。
男子二人部屋に女子が乱入し、今の今までトランプで楽しんでいたのだ。
「かあ~~! 腹立つ~! 絶対ずるしたな! うちは認めん!」
「ま、まあまあ美宇ちゃん。勝負なんですから」
「天衣は黙っとき!」
「負けた理由を他人のせいにするとか、人としてどうなんだよ」
「ミュウミュウはほんっと負けず嫌いなんだから~」
「やかましいわ!」
美宇の怒りが収まらないのを見かねた天衣は、苦笑いしながら優しくいった。
「でもよかったじゃないですか。美宇ちゃんのおかげで如月さん、うまくいってますし」
「まあそうやけど~」
「なんで俺達まで二人の恋愛を応援しなきゃなんねぇんだよ」
「いいじゃん、チューン。せっかく付き合ってるのにもったいないじゃん?」
そういう輝流の笑顔に曇りがあるのを、魁皇はすぐ見破った。
それでも何も言わず、トランプを整え直す。
輝流は笑顔を浮かべながらも、心の奥底にある願望を抑えるのに必死だった。
「そろそろ深夜近いですし、部屋に戻りましょう」
「せやな。んじゃ帰りに如月の様子でも見にいこか」
「ミュウミュウ、それ……」
彼女の手に見慣れないカードが握られている。
美宇はにったり笑いながら、カードを見せびらかした。
「マスターの友人に言って貸してもらったんや、ペアキー。これあれば侵入できるで。どや、リュウ。行ってみるか?」
輝流の中の願望がゆっくり膨らむ。
考えるより早く、彼の手はカードにのびていた。
深夜一時。如月は熟睡中だった。
そんな彼女の部屋のドアが勝手にあく。
入ってきたのは、輝流一人だった。
彼はゆっくりと如月がいるベッドに近づき、布団をそっとめくる。
すやすや眠っている寝顔が、いつにもましてかわいく見えた。
「にがっちゃん……」
いつの間にか、そうつぶやいてしまった。
彼女の唇に、自分のを重ねようとする。
脳裏に浮かんだ、彼女の笑顔が輝流を迷わせた。
そして自分が何をしようとしたか、我に返る。
彼は何も出来ぬまま、そっと部屋を出た。
閉めるドアの音とつぶやいた一言が、如月に聞こえていたことも知らずに―。
(つづく・・・)
今回の見どころは? ときかれたら、一目散に答えます。
明王さんの肉食っぷりだと。
うらやましすぎて、私と変わってほしいくらい・・・
ちなみにこのメンバーでトランプをさせたら、天衣ちゃんが一番弱いような気がします。
絶対顔に出そうですもんね・・・その分、魁皇が一番強そうです。
次回、友人二人の正体が!
同時に第二部、ラストです!!!




