なんちゅうことしてんねん!
エイプリールフールに告げられたのは
嘘でも何でもない、東京への旅行計画だった!
「ついに来た~!!! 初東京!」
異常にテンションが高い輝流さんを横目で見ながら、私は大きく息を吸った。
私を含めたルナティックハウスの従業員全員は、現在一泊二日の社員旅行に来ている。
その場所はまさかの東京だ。
一人十万持って来いと言われた時は殺す気かと思ったりしたけど、母や弟からかっぱらってきてなんとか払えた。(もちろん自分の払ってはいるのでご安心を)
早朝5時に集合と言われ、約4,5時間かけてようやく到着した頃にはすでにお昼の時間帯だった。
「うっわ~……都会の空気はいつ吸っても変やな~」
「そうですね~やはり東京は人口も多いですから」
「お二人は東京、行ったことあるんですね」
「あるはあるけど、あんまみとらんで。そういう如月はどうや?」
「はい、まあ一度だけ」
私達が話しているのを聞きながら、輝流さん達が口をはさんだ。
「いいなあ、にがっちゃん達。オレらなんて京都だよ?」
「建物見物しただけでなんもなかったもんな」
「え~! 京都、いいじゃないですか。私、行ってみたいです!」
「でもさあ修学旅行って言ったら東京じゃない? 王様に連れてってもらった時は楽しかったけどさあ」
ん? 王様にって?
「この旅行、うちらは三回目なんや。最初が福岡、次に広島で去年が京都やったっけ?」
うわ! うらやましい!
京都以外は行ったことあるが、神宮さんと旅行に三回も行ったとかうらやましすぎるだろ! ちくしょう!
「荷物持ったか? 誰かいないとかねぇよな」
「はっ! チューンがいない!」
「殺すぞ」
「冗談だよ、冗談。んで王様、これからどうすんの? ホテルとかは?」
「目立つからすぐ見つかると思ったんだが……」
歩きながら神宮さんは、きょろきょろあたりを見渡していた。
何を探しているのだろう。
不思議に思っていた、その時―
「ミョウちゃ~~~~~~ん!」
聞きなれない声が、私達の耳に響く。
数メートル先に人影があるのが分かった。
どうやら二人の男性のようだ。
そのうちの一人がぶんぶん手を振りながら走り、神宮さんに向かって……
「おっ久しぶりですぅ~ぎゅ~」
「よぅ、悠翔。お前全然変わんねぇな」
「ミョウちゃんもちっとも変ってませんね! 抱き心地がとってもいいです♪」
「そりゃどーも」
ちょ、な、なんですかこれ!
知らない人が、神宮さんと抱き合っているですと!?
今までそういうのは輝流さんだけかと思っていたのに!
これは何とも萌える展開になってきたぁぁぁぁ!
……じゃなくて、この人誰!?
とか何とか思っている私に、その男性は気づいたようだった。
彼はきらりんっと顔を輝かせたかと思うと、視界に真っ暗になる。
気が付くと私は、彼の胸の中にいた。
「!?」
「かんわいいです! 高校生くらいでしょうか~? 僕のペットのにゃんこそっくりです~」
こ、高校生に間違われてるんですけど!?
ていうか痛い! この人の抱き方、めっちゃ痛い!
しかもにゃんこに似てるって……私猫以下!?
「ゆぅうぅとぉ……?!」
すごく低い声が、背後から聞こえる。
声のトーン的に神宮さんのようだった。
彼の周りから、どす黒いオーラが漂っているようにも見える。
「離れろ! 嫌がってんだろ!」
「あ、ごめんなさい。かわいかったので、つい」
かわいかったですまされるのか、これ!
危うく絞め殺されるところだった……
その人を改めてみると、黄色のウェーブがかった髪の毛が特徴的な人だった。
「王様! 何なの、この人! 知り合い!?」
「如月さん、大丈夫ですか?」
「こいつは大っ事な後輩やぞ! なんちゅうことしてんねん!」
「高校生じゃなくて中学生の間違いだろ」
ううっ……いい先輩をもって幸せだなあ……約一名をのぞいて!
「ごめんね、びっくりさせちゃって。君、痛いところはない?」
ようやく話してもらえた解放感に浸っていると、いつの間にかもう一人の男性がそばにいた。
その男性はもう一人とは対照的に黒髪の黒縁メガネで、肌が白く整った顔立ちをしていた。
「あ、大丈夫です。ありがとうございます」
「よかった。彼、いつもこんなんだからちょっと心配で。明王君もごめんね、せっかく久しぶりに会ったのに怒らせちゃった?」
彼の言葉を受けた神宮さんはさっきの男性にデコピンしながら、ため息交じりで言った。
「まあなあ。今回はこの辺にしといてやるが、次は覚悟しろよ」
「は~い……」
「ふふっ、変わらないね。君は」
「お前もな」
そういって彼に頬むと神宮さんは私達に、二人を指さしていった。
「こいつら、オレの高校の時の同級生なんだ。東京で働いてる」
「初めまして大空玲音です、よろしくね」
「星悠翔って言います。仲良くしてくださいね~」
こ、この人たちが神宮さんの友人!
イケメンの友達は、やっぱりイケメンなんだな。うん。
そうして一人で興奮している中、荷物を運ぼうと動き出したのだった。
(つづく!!)
実際の地名を出していいのか悪いのか、いまだ判断が付いていない私です。
神宮さんの貴重な友人二人は、個人的にお気に入りです。
彼の高校時代、一度でいいから見てみたいものですね。
次回、東京探索!




