この格好はどうかと……
明王とのデートの対策のため、
輝流と予行練習!?
こんなんで、よかったのだろうか。
不安な思いを抱えながら、もう一度自分の格好をガラス越しに見る。
あの日から翌日、約束の日が来た。
服はあんまり意識してはいないものの、自分が持ってる中で一番のものを選んだ。
そしてー
『みなちゃんっていっつも髪さらさらだよね~うらやましいなあ』
友達によく言われる、髪のこと。
準備する際、前クリスマスの時に輝流さんが言っていた髪型の話を思い出した。
別にあんまり意味はないが、なんだかんだ言っていつも協力してくれる彼へのちょっとした感謝だ。
でもやっぱ、落ち着かないなあ。
「にがっちゃん、お待たせ。ごめんね、準備にちょっと時間が……」
「あ、大丈夫です。私もさっき来たところです」
私が微笑む間も、彼は一ミリも動かない。口をパクパクさせて、心なし顔が赤く見える。
うう……やっぱやめとくんだった……
「か、かわいいよ! にがっちゃん! オレがツイテみせてって話したの、覚えてたんだね!」
「まあ……ちょっとした恩返し、というか……」
「なんか見違えちゃったなあ。いつもツイテで来ちゃえばいいのに」
いいえ、そんな滅相もない!
そんなことしたら、美宇さんにからかわれること間違いなし!
「んじゃ、いこっか!」
「はい。どこにいくんですか?」
「デートっていえば映画館でしょ? 面白そうな映画見つけたから、見に行かない?」
映画館、か。懐かしいな。
昔はよく見ていたけど、最近はDVD派だから、あんま見に行かないんだよね~
何より、金かかるし。
「映画まで何時間あるんですか?」
「三時間ちょい、かな。余裕あるし、ちょっと寄っていい?」
「いいですけど……どこに?」
「洋服屋♪」
いやな予感が、した。
なぜならそこは、女性専門洋服屋だったからだ。
店に入るとすぐきれいな女性が、輝流さんを向かい入れた。
「いらっしゃいませ~。あ、滝本君。待ってたわ」
「ごめんね~忙しいのに頼んじゃって」
「せっかくの後輩が頼ってきてくれてるのよ? 先輩として、やるべきことはしたいじゃない?」
はてなを浮かべたいくらい、訳が分からない。
私が首をかしげていると輝流さんが口を開いた。
「紹介するね。中学ん頃サッカー部のマネージャーとして、お世話になったリリィ先輩」
「初めまして、木枯友梨香です。よろしくね」
相変わらず名前聞いても由来が分からんニックネームだな。
というか、先輩にまでニックネームつけるんだ。
まあ実際神宮さんにもニックネームつけてるし敬語使ってないから、当たり前なんだろうけど。
「リリィ先輩は、王様と同級生でね~。ルナティックハウスの中の構造や、制服をコーディネートした人なんだよ~」
え、すご! さすが神宮さんの知り合い!
すごいのは見た目だけじゃないってことかな、うん。
「それでなぜそんなニックネームに?」
「ユリの英語がリリィだからさ♪ ほら先輩の名前、友梨香じゃん?」
由来がすごく深いような、そうでもないような……
「んじゃリリィ先輩、あとはよろしく」
「はーい」
え、ちょ……はい!?
何がどうなってるんです!?
「というわけで、私のコーディネートでかわいくしてあげるわね☆」
OH,NO! 誰か、HELP,ME!!
「明王君もやるなあ。こんなかわいい女の子をバイトに雇うなんて」
「あ、あのぅ友梨香さん? この格好はどうかと……」
「え~かわいいと思うけどなあ」
洋服を次々に着せられる私は、恥ずかしくて鏡さえ見れなかった。
友梨香さんは私を試着室に連れると、かわいい服ばかり着せた。
どれも私には不似合いなやつばかりだというのに、彼女は笑顔で色々渡してゆく。こんな格好で神宮さんに会うのはかなり恥ずかしいぞ。
輝流さん……あなたは無責任すぎます……
「明王君、元気? 最近は忙しくて喫茶店に行けてなくてね~」
「はい。何事もなく、コーヒー作ったり他の先輩方をしばいたりしてます」
「相変わらずだなあ。えっと水瀬ちゃん、だっけ。あなたは明王君と輝流君、どっち推しなの?」
ふいに聞かれて、思わず衝撃の声が漏れる。
ここで神宮さんというべきなのだろうか。
そりゃ付き合ってるし、好きなんだから言ってもいいだろうけど。
私的に輝流さんは嫌いじゃないわけで……
ああ、もう! なんでこんなに考えてるんだ、私!
「試合してる時の観客といったら、二人目当てがほとんどでね。モテるったらありゃしない。明王君とは同じクラスだったけど、毎年紙袋いっぱいにチョコもらってたよ」
さ、さすが神宮さん!
負けてらんないなあ、私も。
「ま、それは輝流君も同じ。ファンサービスにたけてるから、みんなかっこいいって喜んでた」
やっぱり人気なんだなあ、あの二人。
そんな人と付き合っちゃったんだなあ、私。
「それで? どっち推しなの?」
「えっと、神宮さん……です」
「そっか。じゃあまずもう一人のイケメンに評価してもらわないとね☆」
はい?
「輝流君、お待たせ~。出来たよ~」
「お~遅かったね~……って……」
「ほら、水瀬ちゃん」
いやあ!!! 誰か助けてぇぇぇぇぇ!
友梨香さんい押され、試着室から顔をだす。
今の私はもう、最悪と言えるほどの格好だった。
だって皆さん、スカートですよ!? 女っぽくない私が、スカートをはいてるんですよ!?
こんな服、恥ずかしくて外で出歩けるわけないじゃないですか!
「……かわいい……」
え?
「かわいいよ、にがっちゃん! 予想以上にかわいい! よし、買おう!」
「なんでそうなるんですか!?」
「王様とのデートにぴったりじゃん! さすがリリィ先輩! コーディネートばっちしだね!」
「ふふ、まあね」
ダメだ……逃げ出すことが出来ない……。
結局私の恥ずかしすぎる服装は、輝流さんによって買わされデートに着ざるを終えなくなった……
「いやあ、マジでかわいかったわ~。今日一日あの格好でいてほしいくらいだよ~」
「全力でお断りします」
「まあまあそう言わずに。ほら、映画始まっちゃうよ?」
そういって映画館に行き、指定された席へと座る。
輝流さんが面白そうと見に来た映画は『愛と青春と悲しみのコーヒー』という題名だった。
題名からして、突っ込むとこが多すぎるのは黙っておこう。
なぜなら内容がかなりのものだったからだ。
主人公とその友達が、同じ人を好きになってしまうというまさにドロドロの恋愛展開!
いやあ、萌えた!
おかげさまで、かなり参考になりました!
こういうのもあるんだな、やっぱ恋愛恐るべし!
「まだ時間ある? おやつでもどっかで食べない?」
「はい」
輝流さんに言われ、私は彼とともに歩き出した。
(つづく!)
暑い夏が続いていますね。
ちなみに私の好きな季節は秋です。やっぱ読書の秋ですよね。
しくにくのメンバーでは美宇ちゃんと輝流が
夏が好きそうですよね。
次回、デートはまだまだつづく!




