あの性格はあかん!
誕生日についに告白した如月。
いよいよお待ちかね、女子にとっての大舞台を迎える!
「ではこれより、チョコレートを作りたいと思います」
「は~~~い!」
「ちょいま~ち! なんでうちまでここにいなきゃあかんねん!」
美宇さんが不満げに私に言う。
私のかわりに、天衣さんが笑顔で答えてくれた。
「まあまあそういわずに、後輩が頼ってきてるんですよ? 先輩として力になってあげたいじゃないですか」
「かあ~お人よしやなぁ~だからってうちは関係ないんとちゃう?」
彼女の愚痴を聞きながら、私は苦笑いを浮かべた。
告白して三日後、あっという間に二月十三日になった。
明日十四日は、年に一度のバレンタインデーだった。
告白したとはいえ何もあげないのはさすがに気が引ける。
そのため料理が得意な天衣さんに教えてもらおうと、現在冥皇大学の寮へお邪魔してるのだ。
「今日が日曜日でよかったですね。さすがに三人同時に休むと、マスターさんが変に思いますし」
「何回もサボってるリュウよりはましやと思うがな」
「なんか、すみません。休日に押しかけて」
私がそう言うと、天衣さんはまたにっこり笑った。
「構いませんよ。休日でもこんな風に集まれるなんて、私は嬉しいです」
はへ~、さすが天衣さん。なんて人がいい!
あなただけだよ、私に優しくしてくれるのは! (あ、もちろん神宮さんもだけど)
「では始めましょうか。まずチョコを細かく切りましょう」
天衣さんの指示に従い、私は慣れない手つきでチョコを小刻みに切っていく。
それを椅子に座りながら見ていた美宇さんが、思い出したように口を開いた。
「そういや如月、マスターとはうまくいってるん?」
「えっ。あ、はい。先日告白しました……」
「こ、告白!?」
二人の声が、重なった。
美宇さんだけならまだしも、意外にも天衣さんまで食いついてきた。
「おめでどうございます! よかったですね、思いを伝えられて」
「なかなかやるやん、如月! 返事ももらったん?」
「いえ……時間をくれと言われて……」
私の知識上、そう言って断る確率が高いと聞いたことがある。
だからふられる前に、せめてバレンタインチョコは作っておきたかったのだ。
「美宇さんは凪君に作らないんですか?」
「ご心配なく。うちはと~っくに作っとるで。なんと言っても天衣がついとるし、他の奴にあげるのなんざごめんや」
やっぱり凪君にしか作らないんだ……
ま、私もそのつもりだけど。
「天衣さんは誰に渡すんです?」
「私はルナティックハウスの男性メンバー、全員に渡します。毎年お世話になっているので、感謝の意味を込めて」
残念、尾上さん。あなたの好意に、一ミリも気づいていませんよ……
「それじゃ、溶かしていきましょうか。チョコレート」
天衣さんがそういうのを、私は笑って答えた。
「あとは固まるのを待つだけなので、休憩しましょうか。お茶入れてきますから、座って待っててください」
はあっとついたため息が、いつもより深い。
あれから奮闘した結果、無事にチョコを作ることに成功した。
固まるまでの休憩がてらゆっくり待つことにした。
キッチンを出ると、椅子に座っていた美宇さんが言った。
「なあ、如月と天衣はどう思う?」
「なにがですか?」
「喫茶店の男連中や」
唐突に何を言い出すのだろうか、この人は。
私の戸惑いに触れず、彼女はため息交じりで言った。
「うちの友人が喫茶店寄ったときに、あの人かっこいいね~ばっか言ってきおってなぁ。確かにリュウは顔はええで、だが! あの性格はあかん!」
美宇さんが言っていた言葉にだんだん怒気が含まれてきた。
興奮するように、こぶしを高くあげ叫んだ。
「女ならとにかく誰でもちゃらちゃら声かけるわ、仕事はしょっちゅうサボるわ! むかつくことしかせぇへん!」
まあ、分かる気がするなあ。
さぼり癖には毎回困らされてるし。
美宇さんと輝流さんが正反対すぎるんだろうけどね。
「でも最近輝流さん、女子に話しかけられてもあまりからまなくなりましたよね?」
お茶を運びながら、天衣さんが言う。
彼女は美宇さんと私に微笑みかえした。
「輝流さんなりに、少し変わってきてるのではないでしょうか」
「そうか~? そんな変わってきてるとは思わへんけど……」
「輝流さんはいいとして、お二人は尾上さんのことはどう思ってるんです?」
私はたまらず聞いてしまった。
輝流さんもまあ厄介だけど、尾上さんもなかなかの変わり者だと私は思う。
第一、あの人私を馬鹿にしかしないし。
「尾上~? はっきり言うが、どっちも嫌いや! 偉っそ~な態度とか人を小馬鹿にした口とか!」
「わかります、それ! 私も尾上さん苦手です!」
「せやろ? ほんっまうちの喫茶店はましな男おらんわ~」
「そうでも、ないと思いますが……」
そういう天衣さんの言葉に、思わず振り向いた。
「私はいい方だと思いますよ。優しくて、まるでお兄さんみたいで」
尾上さん、どんだけ男として見られてないんだ……
ちょっと期待してみたが、残念だ。
「天衣はほんっと鈍いなぁ~。尾上がかわいそうやわ」
「何の話ですか?」
「こっちの話や」
確か美宇さんも尾上さんのこと、知ってるんだっけ。
こりゃ、一筋縄じゃいかなそうだな。
私の恋も実る可能性低いし……
「つーことは、喫茶店ナンバーワンはマスター決まりやな」
「如月さん、頑張ってください!」
「か、からかわないでください!」
ため息をつきながら、私は上を仰ぎ見る。
バレンタインデーがすぐそばに迫っていた……
(つづく!!)
第一幕ぶりの女子会、って感じですね。
こんなに性格が違うのに、仲がいいって不思議ですよね。
三人で料理をしていると、美宇ちゃんは豪快さが似合う
男飯が似合いそうですね。
次回、バレンタイン当日に奇跡が・・・?




