第2話
【第2話・水瓶座の少女と不思議な夢】
秩序の大地・セイルーン。
中央大陸の北の果て【水晶の宮殿】と呼ばれし、美しい宮殿。
太古から存在する宮殿、名を【水瓶座の宮殿】
と言う。
極寒の大地、1年の全てを氷と吹雪が覆う宮殿に【9986年】ぶりに一人の少女が降り立った。
名を【佐伯刹那】運命の少女である。
あれからどのくらいの時が経ったのだろうか?。
この美しい宮殿、水瓶座の宮殿に、突然私が現れてから・・・・不思議ともう数ヶ月は経っていても、何故か空腹や渇き、そして排泄は一度も行う兆しがない。
人としての機能が働いていないのか?。
それとも最早人ではなくなっているのか?。
私にはわからない。ただ、不思議と恐怖や不安はない。
まるで故郷にある安らぎさえ感じる。
ただの高校生だった私が・・・・・
今では遠い記憶。
数ヶ月前まで私はこことは違う世界で、ありふれた時を過ごしていた。
優しい両親、生意気だか姉思いの弟。
気さくで明るい親友。
学校では目立たないが、普通に級友達と、たわいのない会話に笑い、ふざけ、じゃれあい、ごく普通の女の子だったと自分でも思う。
幸せで平穏で退屈な毎日。
それが贅沢だと感じたことのない普通の女の子。
それが私【佐伯刹那】だった・・・・・。
いつの頃だったのか?、私はたまに夢を見るようになる。
そこは小説で読むようなファンタジーな世界。
明らかな人ではない生き物、エルフや獣人、そして龍などが普通に人と共存している世界。
そんな世界を空から俯瞰で見る夢。
夢の世界では私に肉体は感じられなかった。
幽霊のようにさ迷うだけ、ただファンタジーの世界の歴史をたどるだけ。
中には眼を背けたくなるグロテスクなシーンも有った。
だが、ほぼ毎日同じ夢をみるため、いつしか慣れて行った。
不思議な夢、夢の終わりはいつも同じ。
私にそっくりな女性が、水晶の様に透き通り、虹色に輝く剣?を振るい、11人の仲間達?と、共に怪物と戦っていた。
怪物はとても強く、仲間達は次々と倒れていく、まるで自分の役目を果たす様に、怪物の一部を切り取り、どこかに投げ去りて。
そして、最後に私にそっくりな女性が、ただ一人残り最後の一撃を怪物に与える。
持っていた、虹色に輝く水晶の剣を怪物の中心に刺したまま。
やがて怪物は男性の姿に戻る。
憂い、悲しみ、怒り、複雑な感情のこもった顔で、私にそっくりな女性と何かを会話する。
言葉がわからない、日本語ではない、私の世界にはない言葉で。
だが、悲しみの感情を女性が持っていた事はわかる。
何故なら、夢が覚めた私は無意識に泣いていたから。
そんな夢を見ながら、私の日常は変わり無く紡いでいった。
平穏に、だが確実に、運命の時に向かって。
運命のあの日、夢の最後が一部変わった日、私は事故に遭う。
夢の最後、悲しそうな顔をしながら男性を見送る女性。
いつもはここで夢は覚める。
だが、あの日初めて私にそっくりな女性が、私に向かい話かけてきた。日本語で。
『未来の私、記憶は確かに貴女に継いだ。やがて転輪の時を迎える。私は貴女、貴女は私、貴女はセイルーンを守護しなければならない。何故なら【神剣星女】なのだから。』
継いだ言葉が忘れられないまま、私は悩み通学し、そして電車事故に遭う。
何が自信の身に起きたのか?わからなかった。
ただ、いきなり強く衝撃を受け、一瞬夢の時と同じ感覚を得た記憶だけを残し、私は死んだ。
気がつくと無数の光が流れる世界にいた。
体は動かない。
流れる光に任せてただ流れるだけ。
目の前に私がいた。
直感で夢の私だとわかる。
少しづつ、確実に迫る夢の私。
やがて私と夢の私が重なりあう。
不安や恐怖はなかった。
次に気がつくと、私は【水瓶座の宮殿】の中の【水瓶座の神剣】の前にいた。
今思うと、この時すでに私は今の私になっていたのだと思う。
何故なら・・・・