第4話:声。
「・・・瑞樹・・・」
サチという名の少女の後をついていく僕の耳に、どこか聞き覚えのある、甲高い声が聞こえた。
「瑞樹・・・!」
自分の名前を、必死に叫ばれているような気がした。
「瑞樹、瑞樹・・・!!」
やっぱりそうだ。
これは、この声は。
「ユウ・・・キ?」
どこか遠くから聞こえてくるその声に僕は手を伸ばした。
「瑞樹!」
「ユウキ!」
僕の名前を叫んでいるのは、何年か前まで、毎日一緒に過ごしてきた、唯一の友達、久瀬ユウキだった。
今、僕とサチが探している、金髪の、明るく活発な少女。
「瑞樹、今、助けてあげるから・・・ごめんね、瑞樹、ごめん・・・」
あの時と同じ台詞が、また聞こえる。
「ユウキ!ユウキ、謝らなくていい、もう、謝らなくていいから、はやく戻ってきてくれよ・・・」
その時気付いた。
僕は完全に、弱っていた。
ユウキのいない生活が続き、不思議な少女に出会い、何も食べず・・・そうだ。
サチと出会ってからもう、3日が過ぎる。
僕は今きっと、幻聴を聞いているんだ。
「瑞樹・・・?どうしたの?」
だけどこの声は、やっぱり・・・
「ミズキ。」
透き通るような声がした。
前を向くと、サチが立っていた。
「何をしているんだ?行くぞ。」
無口な少女は、それだけを言い、また歩き出した。
僕もついていったが、それ以降、ユウキの声が聞こえることはなかった。