第1話:かぐや
古代から境安、完内――…さまざまな時をこえて、変化を続けてきた物語がある。
その中の1つに、「かぐやのひめさま」。
竹取物語に類似した、ある貴族の少女の物語。
今から書き綴るのは、境安よりももっと昔、古代の日本国で語られた
「かぐやのひめさま」。
そこは、ある城下町。
誰も中を見たことがなく、神様が住んでいるとされたお城の近く。
そんな場所に、農家と、それから竹やぶがある。
今日もあの人は、やってくる―――…。
優しい、あの人。
顔も名前も知らないけれど、きっと若くて純粋な男の子。
ほら、今日もやってきた。
「この竹、やっぱり他と違う気がするな。」
そう言って、誰も気づかない私の存在に、今日も気づいてくれるんだ。
「中身も気になるし、あれ…?中から音がするような…。」
『コツ、コツ、コツ、コツ…』
小さな爪のような音。
他の人だと怖がって、あわてて逃げていってしまう、この爪音。
『コツ、コツ、コツ、コツ…』
「…中に誰かいるのかい?」
『コツ、コツコツ、コツ…』
あ、リズムが少し、乱れた。
『コツコツコツ、コツコ…』
ギーコーギーコ…。
…?今のは、竹を切る音かなぁ?
足元を見ると、銀色の刃が覗いているのが見えた。
スパッ。
今のは竹を切り落とす音。
2人の目が合う。
やっと会えた。
「やっと会えたね」
2人は笑う。
やっぱり君は、若くてきっと純粋な、そんな男の子。
自分よりかなり小さな私を抱いて、あのお城へ向かっていく。
そう、私はあのお城の、誰も知らないお姫様。
かぐやのひめさまなのです。