08.03.04:00「犯行声明」
「どうも豚さんです」
「鶏さんでーっす」
コンクリート打ちっぱなしの壁に囲まれた部屋で、頭上の豆電球に照らされた着ぐるみ二人がぺこりと礼をする。
「ねー鶏さん」
「なんだい豚さんや」
「今日は僕たちにお便りが届いているんだ」
「わあ嬉しい!どれどれ……」
鶏は豚が取り出した紙を開いて、意気揚々と読み上げる。
「ペンネーム”飛田牛”さんからのお便りでっす。えー”制裁者の皆さん初めまして”」
「初めましてー」
「”私の周りは貴方達を犯罪者だと言う馬鹿な大人がたくさん居ますが、私は悪い人をやっつけてくれる、正義のヒーローだと思っています”」
「照れちゃうなー」
「”自ら進んで行動し、その理由を語らずに悪を断つ豚さんと鶏さんに、私は勇気をもらいました”……ふむふむ」
「ふむふむ」
「”なので虐められて辛くても、学校へ行けるようになりました。トリヴィシャの皆さんがいつか私を虐める人を断罪してくれることを夢にくじけずに頑張っています。私に勇気をくれて、ありがとうございました”」
「僕らの存在が少しでも飛田牛さんの支えになれてるなら嬉しい限りだね」
「そうだね、こんな良い子を虐めちゃうなんて酷いね!」
「僕は飛田牛さんが可哀想で涙がとまらないよ」
シクシクと豚が背中を丸めて泣いているふりをする。鶏は豚から預かった手紙を画面端へ置いた。
「……というわけで正義の味方である俺たちの今回のターゲットは〜〜〜」
「飛田牛さんを苦しめるいじめっ子に決定しましたー」
「これで飛田牛さんが学校を好きになってくれると嬉しいな!」
「それでは今回の制裁の詳細です」
そう言うや否や、豚はスケッチブックを取り出す。
「はいご覧くださーい」
豚は表紙をめくり、『①鈍器でぶっころ』と書かれたページをカメラに向ける。
「まずはやっぱり鈍器でぶっころですよね!」
「以上です」
「はや!って思った貴方!わかってないな〜〜〜、正義の味方は悪の敵を嬲ることはしないんですよ!」
「そうそう、倒したら倒したでハイ終了ってね」
「というわけで、全国のいじめっ子の皆さーん!自分が殺されるかもしれない恐怖にビクビクしながら待っててね!」
手を振る豚を横目に鶏が手前に移動してきて、画面全体に鶏の顔が映った瞬間、動画は終了した。