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trivisa_03  作者: 致死量
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三途

警察や犯行・証拠に関することなどは全て正しい物ではありません。フィクションとして書いているので多少は世界観としてお楽しみください。何か矛盾や間違っている知識・描写がありましたら、指摘してくださると嬉しいです。

 一昨日染め直したばかりの茶髪を手櫛で再度整え、ネクタイを締め直す。キュッと口角を上げ、勢いよく扉を開けた。


「このたび新たに”三途”のメンバーとしてトリヴィシャを追うために全力を尽くす加賀かが慎二しんじです!よろしくお願いします!」

「おう」

「よろしくっす」

「……あれ?」


 加賀は部屋を見渡し、驚きを隠すことなく顔を引きつらせる。

 ---あっれー、”三途”のメンバーって、俺含めて五人いたはずだけど……。

 もう一度、部屋を見渡す。何度確認しても、自分の言葉に返事をした二人以外、人が見当たらない。


「? どうした。そんな入り口で立ち止まってないで、中に入ってこい」


 近日世間を静かに混乱の渦に陥れている、犯罪グループ”トリヴィシャ”。犯行前に必ず「犯行声明」というタイトルで犯行予告をネットに動画をアップする、着ぐるみ二人が名乗る名前である。


 アップされた動画を遡ると、最初の方の「犯行声明」は自動販売機の取り出し口に傘を突っ込む、街頭にイルミネーションライトを付けて煌びやかにする、などの子供じみた悪戯の予告であり、豚と鶏の着ぐるみ二人がそのための順序を忙しなく説明するだけの動画であった。

 そのくだらなさから徐々に動画の閲覧者は増えていき、トリヴィシャがアップロードしたもので百万再生された動画もある。

 しかし、ある日「犯行現場」というタイトルで、目隠しされた男(後にこの男は税金を横領していた市の役員であることがわかる)が鶏の着ぐるみに屋上から落とされる動画が公開されたのをきっかけに、今までのような悪戯が人の生死に関わるモノへと変化し、トリヴィシャが「犯行声明」をアップした数日後に指定された場所や時間に人が死ぬ、という流れが出来上がった。


 それからしばらくして、警察の中でも特に優れた者……というのは建前で、上が持て余す厄介だが優秀な存在を集め、トリヴィシャの拘束・トリヴィシャによる犯罪の阻止を目的とした、”三途”が組織された。


 その厄介者集団に仲間入りした加賀は、”三途”のリーダーである近藤こんどうに言われたとおり入り口で惚けるのをやめ、話しかける。


「あ、はーい。失礼しまーす。あの、リーダー?何か人足りなくないですか?」

「……ああ、それはだな……………」

「二人ともゲーセンで誰がいちばんUFOキャッチャーがうまいか対決しに行っちゃったっす」

「は、UFOキャッチャー?」


 言い淀む近藤の代わりに、女のような顔をした若い男が加賀に理由を話す。


「最初はただの自慢だったんすけど、二人とも譲らなくて……直接対決しに朝から……」

「えええ……」

「普段はちゃんと四人ここにいるんすよ……今日は、たまたま……。あ、俺、ふじ宗太郎そうたろうって言うんで、よろしくっす」

「でも、今って勤務時間中じゃ……? あ、よろしくお願いします!」

「”折角こんな組織が出来たのに出来た途端トリヴィシャったらだんまりだもの”……と言って出てったよ……。俺が悪いのか、俺が……」

「やー、リーダーは悪くないっすよ。こんなことしても上から何も言われないから好き勝手し放題なだけで」


 どうやら勤務時間中に遊びに行っても咎められないほど、見放されているのか自由にさせられているのか……、とりあえず「三途」は何をしても大体許されるらしい。


「明日にはちゃんと揃うと思うんで」

「了解です!……ていうか藤さん何歳ですかー?同年代に見えるけど」

「俺っすか?今年で二十七っすね〜」

「え!!見えねえ!!若!!二十歳丁度ですって言っても通じるって!!!」


 加賀は両腕を使い、大きく驚きを表現する。

 その仕草にクスクスと笑い、藤は加賀に尋ねる。


「そういう慎二さんは何歳なんですか」

「え、俺?何歳に見えます?」

「うわ面倒くさい……。リーダー、慎二さん何歳っすか?」

「二十二歳らしいな」

「ちょっと!!!書類見るのはずるいって!!!何してんですかリーダー!これは合コンとかでよくある親密度アップのイベント、即ちアッサリと答えをバラされたら意味のないもの!どうしてくれんですかぁ」


 敬意と言う言葉を早速何処かへ捨ててきたのか、加賀は近藤の肩を掴んでガタガタと揺らしながら抗議する。


「男にそんなイベントはいらんと思った」

「うわその通り!!!知ってた!!」


 ガーンという言葉が見えそうな程落ち込んだ顔をした加賀に、藤が話しかける。


「やー、面白いっすね慎二さん。上手くやってけそうっす」

「確かにな」

「あ、ほんと?それは嬉しい!改めてよろしくお願いします!」


 へらりと笑った後、「あ、じゃあ寝る間も惜しんで考えた年齢当てイベント全くいらなかったじゃないか!」と悲壮感溢れる態度を示す加賀を、近藤も藤も穏やかな目で見ていた。

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