ファータの日常―side.夜
今回は短い上に、ちょっとシリアス(?)です。
「……ふぅっ。今日も楽しい1日でした」
夜は、家で1人きり。1年も暮らしていればもう慣れたものです。
ですが、お昼にはエレナさんにあぁいったものの、やっぱりさみしいものはさみしいですね。
特に今日のような、たくさんの人と会った日の夜は数割増しです。
そう言えば、1人暮らしの人はペットを飼ってさみしさを紛らわすって聞いたことがあります。えへへ……ペット、もふもふ…………悪くないですね。
そんなことを考えながら、壁の近くに置いてあるテーブルへ近づきます。そこにあるのは、写真立てに入った一枚の写真……。わたしの大事な人。もう会うことのできない、わたしをここまで育ててくれた、大事な人。
「おじいちゃん……今日も楽しかったです。エレナさんは相変わらず優しかったですし、オルフさんからは、とても大事なことを学びました。――――うっ!!」
その瞬間、体に激痛が走りました。しかしこれは、わたしには慣れたもの。そして、エレナさんの誘いに乗れない最大の理由。
「え、えへへ。今日はたくさん歩いたので、ちょっと痛みます。……それでは、もう寝ますね。お休みなさい」
足の付け根を中心に、ズキズキと痛みが広がっていきます。こんなに歩いたのは久しぶりでしたからね。少し無理をしてしまいました。
痛みに耐えながらベッドに近づくと、バタッと倒れこみ、わたしはそのまま眠りにつきました。
ファータが眠りにつくと同時に、王都は大雨に見舞われた。
仰向けに寝る彼女の顔は、明るく長い茶髪によって左半分が隠されている。表情の伺える右側の顔は安息とは程遠く、苦痛にゆがんでいた。
無意識に両足の付け根を両手でさする。それによってめくれたピンクのネグリジェの下には、およそ可憐な少女には似つかわしくない光景が広がっていた。
…………雷の光が窓から入り込む。眩しく鋭い光に対して、“それ”は鈍く輝いていた。