ファータの日常―side.夕(後)
予約投稿ミスったので、取り下げるのも面倒なのでそのままにしちゃいます☆
時計塔の修理は、意外と早く終わりました。
まあ、生産ギルド長直々に修理を行ったので当然と言えば当然かもしれませんが。
オルフさんの腕前はやはり、流石の一言につきます。あの巨体に似つかわしくない繊細な手付きで、ショートした回路を次々と治して行きました。
……オルフさん。絶対に助手とかいりませんよね? ちなみにわたしは、オルフさんに支持された道具を道具箱から出したり、重い部品を他の部品と繋げる時にそれを支えたりしていました。
まぁ何がともあれ、修理は全て終わったので早速時計塔を登りました!! もちろんてっぺんまでですよ~!!
「ふわあぁ……すっごく高いです!!」
そしてわたしは今、時計塔のてっぺんに登り、胸壁の間から王都を見下ろしています。……え? そんなに低い身長なのにどうやって見下ろせるかって? うぅ、た、確かに胸壁がわたしにとっては高くて、普通にしてたらぶら下がらないと見れませんよ。今は、持ってきた道具箱を台にしてます。
上からみるとこんな感じなんですね。あ、あれはエレナさんの家です。あっ、わたしの家も見えましたっ!!
「わはは。大興奮じゃな、ファータ」
あ、オルフさんもいるのを忘れていました。……えへへ、ちょっと恥ずかしいです。思わずはしゃいでしまいました。でもでも、これは仕方のないことなのですよ。私のお家は一階建てですし、こんなに高い建物に登ったのは初めてですからね!!
「ほんとにもう、絶景ですね!! 世界の向こう側までみえます。それに、夕日を受けた街並みがものすごくきれいです……」
「それだけじゃないぞ、ファータ」
「はい?」
「ほれ、よくみて見い」
オルフさんが指差すのは、夕日とは反対側の、日の光が当たらなくなり始めたところです。
あれは、住宅街のほうですね。家の窓という窓から光が溢れ、街灯もまばゆく光っています。
「徐々に徐々に、魔導灯がついてくるじゃろう?」
オルフさんの言うとおり、太陽が届かなくなったところから明かりが灯り、まるで波のように押し寄せています。
太陽の自然な光と、魔導灯による人工的な明かりの入れ替わり……なるほど、みなさんはこれのことを言っていたのですね。圧巻です。
「わかっていると思うが、あの家から漏れる明かりも、あの魔導灯もワシらが作った物じゃ。太陽には遠く及ばんが、夜の闇にも負けない明かり。80年も前から、ワシら人間の生活を支えてきた大事な明かりじゃ。……ワシら職人や技術者は、多くのことはできん。生涯を、1つのことに捧げる人種。じゃが……」
今はもう、下から照り上げる白い光ばかりです。まるで、ここにいるよって語り掛けてくるかのようで……息を飲むほど綺麗な光景です。
隣を見上げると、暗がりでもわかるほど、オルフさんはとても穏やかな笑顔を浮かべていました。
「多くのことはできなくても、多くの人を支えられる……それを自覚できるこの瞬間が、なんとも嬉しいんじゃぁ」
どこもかしこも、魔導灯の光です。
魔導灯が一般に普及されてから、夜の犯罪率は一気に減ったそうです。さらに夜でも快適に作業ができるし、家族との団欒の時間もぐっと増えたと、いいことばかりだと聞きます。
それを生産ギルドの皆さんが支えている。そして、たまにそのお手伝いをしているわたしも……。
「わはは。なんだファータ。泣き出しよって」
「え?」
そんなはずは……あれ? あれあれ?
目をこすってみますが、次から次へと涙が溢れて止まりません。
わたし、どうしたのでしょうか?
戸惑っていたら、オルフさんの手が……厳ついけど、とても暖かい手がわたしの頭を包みます。そして、ゆっくりと左右に動いていました。
「お前も嬉しいんじゃな? ワシもな、初めてこの光景を見た時は涙が止まらんかった。じゃが同時にな、あの時ようやく一人前の技術者に慣れた気がした。ワシらはこの街を支え、この街に支えられているとな。愛するこの街を……守っていこう、とな」
そっか、オルフさんは最初からわたしをここに連れてってくれるつもりだったんですね。
職人や技術者としての責任・役割。そして、誇り。
ここから見える景色には……そんな見えない財産が、たくさん詰まっているんですね。
「……オルフさん」
だから、伝えよう。
ここで学んだこと、理解したことを、わたしの大好きな棟梁さんに。
「わたしも、守っていきたいと思います。いえ、守ります。この、大好きな人たちが住む、大好きな街を」
「ファータ……」
「えへへっ」
「ではそのためには……」
そうですね、そのためには……
「早速総括ギルドから生産ギルドへ移転じゃな!!」
「それはダメですっ」
「なぜじゃっ!?」
「な、なぜって……そ、それよりも、守るためにやることはお仕事じゃないんですかっ!?」
「仕事なんかワシのところでもできるじゃろ!! なぜ生産ギルドへ来てくれないんじゃあ!!」
「ま、前から断ってるじゃないですかぁ!! わたしは総括ギルドのほうがあってるんです!!」
「今日一緒に仕事して確信したんじゃ!! やはりファータはワシらに必要なのじゃ!!」
「そ、そんなこと言われても困りますっ!!」
結局この問答は、あまりに帰りが遅くて変に思った他の生産ギルド職員の方が来るまで続きました。