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少女の眼~道具店プティアック~(改訂版)  作者: 気まぐれ眼
序章~ファータの日常~
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ファータの日常―side.夕(前)

読んでいただき、ありがとうございます!!

「こんにちはオルフさん」

「おお、ファータ。今日も元気そうじゃな」


 エレナさんとお昼ごはんを食べた後、今度は生産ギルドへとやってきました。魔導機の回路の組み立てを数日前に頼まれていて、それが昨日の夜に終わったのです。お昼に総括ギルドへお届け物もありましたし、そのついで……と言ったら悪いかもしれませんが、帰りにここに寄ったのです。

 そして、この方はオルフさん。鋭い目つきに、縦にも横にも私が2人分は入りそうなほど大きい傷だらけの体。見た目はとっても怖いのですが、話してみるととても優しくて面倒見のいいおじいさんなのです。

 今もわたしの頭を撫でており、職人らしいゴツゴツとした手がとても安らぎます。オルフさんの頭を鷲掴みされるような撫で方も好きなのですが、やっぱりエレナさんには敵いませんねっ。


「えへへっ。この前頼まれた魔導機の回路組み立てが終わったので、お届けに来ました」

「おお、さすがはファータじゃなぁ。どれどれ見せてみい…………と、いいたいところなんじゃが」

「……? どうかしたのですか?」


 困ったように頭を掻くオルフさん。なにか問題でも起きてるのでしょうか?


「これから時計塔の修理に向かわなければならんのじゃ。少しやっかいなところが壊れてしまったようでな。他の者には難しいところじゃから、ワシが直しに行くところなのじゃ」

「時計塔って……王都の中央に立ってるビッグ・シャトーのことですか?」

「ああ、その通りじゃ」


 ビッグ・シャトーとは、高さ96メートルを誇る世界最大の時計塔のことです。メタニエーラ王国の技術力の象徴として30年前に建てられ、今では観光名所として有名なのです。

 毎日朝の9時、お昼の12時、夜の6時と3回鐘を鳴らし、王都に暮らす人々の生活を陰日向から支えてくれています。

 その鐘の音は人々を包み込むような安心感を与える音で、わたしも始めて聞いた時は思わず立ち止まって呆けてしまいました。

 メタニエーラ王国の技術力の象徴と言われるだけあって、あれの時計塔はかなり精密で複雑な魔導機が使われています。なので、わざわざオルフさんが出向くみたいですね。


「あ、あの……オルフさん。ちょっとお願いしてもいいですか?」


 ですが、わたしが今気になっているのは残念ながらそこではないのです。


「ん? どうしたんじゃ、そんなに改まりおって」

「え、えっとですね……オルフさんが時計塔を修理しているところを見学してもいいですか?」

「見学じゃと?」

「は、はい!! その、えっとですね。やっぱり色んな魔導機を見ておきたいと思うんです。その……ぎ、技術者として!!」

「技術者として…………それだけか?」

「はうっ!!」


 や、やっぱりお見通し…………ですよね?

 オルフさんの射るような目に、思わず怯んでしまいます。


「ファータ、お主気づいておらんかも知れんが顔を見れば丸わかりじゃぞ」


 わ、わたしが…………。


「遠まわしに言わんでもちゃんと言うがええ」


 び、ビッグ・シャトーの…………。


「登ってみたいんじゃろう? ビッグ・シャトーの頂上に」


 中に入ってみたいだけだって!!


「ううぅぅ…………」


 お見通しでしたか!!


「わっはっはっは。その様子ではやはり図星だったようじゃの」

「はうぅぅ……」


 や、やっぱり恥かしい!!

 だ、だってだって!! 高いところに上りたいだなんてまるで子供みたいじゃないですか!! で、でもでも、登ってみたいものは登りたいのです。……まぁ、中にある魔導機回路を見てみたいというのも本音の1つではありますけどね。う、うそじゃないですよ!?


「あ、あのあのぉ……だめでしたら、別に…………」


 高さ96メートルを誇るビッグ・シャトー。それはメタニエーラ王国王城に次いで、この国で2番目に高い建物です。

 先程説明した通りあの時計塔は精密魔導機の宝庫です。なのでよほどの用事がない限りその内部に入ることは許されません。

 以前内部に入っててっぺんまで登った人から話を聞いたのですが、そこから見る景色はまさに絶景だとか。それを聞いてから、ぜひ1度でいいから登ってみたいと思っていたのです。

 で、でもダメですよね……本来お仕事で行くためなのに、そんな遊び目的だなんて。


「誰がダメと言ったか?」

「……え?」

「あそこから見下ろす王都は絶景じゃ。誰でも見てみたいと思うじゃろう。……どうだファータ。交換条件じゃ」

「交換条件……ですか?」

「そうじゃ。さすがにこの年になると1人で作業するのも辛くての、だれか優秀な助手でもいればずいぶんと楽に仕事ができるんじゃがなぁ……誰か手伝ってくれんかのぉ……」


 ちらっちらっとわたしに視線を向けてくるオルフさん。

 これはひょっとして!!


「はいはいはいっ!! オレオレ。オレ行きたーーーーごわはっ!?」

「(ばっかやろ!! お前死にたいのか!?)」

「(やだ!! オレは登りたいっ!!)」

「(気持ちはわかるが頼むから大人しくしてくれっ!! まだ死にたくないだろう!!)」

「え、えぇっとぉ…………」


 い、今の人はいったいどうしたのでしょうか……。

 すごい勢いで出てきたと思ったら、ほかの人に首根っこをつかまれてすぐにギルドの奥へと引きずられていっちゃいました。


「おほんっ!! つまりだ、ファータが修理を手伝ってくれるのであれば連れて行ってやってもよいぞ」

「え、えっと……ほ、ほんとにいいんですか?」


 でも、さっきの人は?


「もちろんじゃ。あやつらのことなら……まぁ気にするないつものことじゃからな。……なあ、お前ら」

「オレはいやーーーーぎゃすっ」

「も、もちろんッスよ棟梁!!」

「棟梁、ファータさん、どうかお気をつけて!!」

「ほれ、あやつらもそう言っておるじゃろう?」


 なんだかオルフさんとてもいい笑顔です。それに他の職員さんたちもいい笑顔なのにどこか引きつっているような……気のせい、ですかね?


「じゃ、じゃあお言葉に甘えまして、よろしくお願いします!!」

感想等いただければ、とても喜びます♪

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