ファータの日常ーside.昼(前)
かわいく書けてるかなぁ……(どきどき)
「ふんふふふ~んふ~んっ」
今日もいい天気でよかった。週に1回のお出かけの日ですからねっ。雨の日にお出かけなんて絶対にいやですから!!
仕事用のリュックを背負って、今にもスキップでもしそうなくらい、現在のわたしはごきげんですっ!!
「あら、ごきげんねぇファータちゃん」
「あ、お隣のおばぁちゃんこんにちはっ。今日はいい天気ですね」
「こんにちは。そうねぇ。本当にいい天気。これからおでかけ?」
「はいっ。ギルドに修理依頼された物を届けにいくんです」
「あらそう。だからそんなに大きなリュックを背負っているのねぇ」
「えへへっ。そうなんです」
わたしが背負っているリュックにはたくさんの研ぎ終わった刀や包丁、修理した魔導機が入っています。1週間前にギルドの方から配達されて、今朝やっと全部処理が終わっところ。それなりに重量があるけれど、見かけよりも力があるわたしはこのくらいなら簡単に運べるのですっ。
「車に気をつけてね」
「はいっ。ありがとうございます。いってきま~すっ」
「はいはい。いってらっしゃい」
おばぁちゃんに手を振り、先を急ぎます。今日は珍しく仕事がいっぱいありますからね!!
さぁ……まずは総括ギルドです!!
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ギルドとは、一般の方々の困りごとの受付窓口のようなものです。普段何か困ったことがあれば、ギルドに相談に来ます。
怪我や病気になったら調薬ギルド。魔導機や武具関連で困ったら生産ギルドと分野は様々で、他にも魔石ギルドや冒険者ギルド等があります。
そしてここ、総括ギルドでは専門性の低い案件全般を扱います。先程挙げたギルドは専門職の方々しかいないため、人数が少ないのです(冒険者ギルドは例外ですが)。なので、そういった専門の方々に頼み辛い簡単な要件は、総括ギルドに依頼するというわけです。
つまるところ、総括ギルドは何でも屋さんの集まりといったところですね。庭の雑草とりから荷物運び、雨漏りの修理までなんでもござれ!!って感じです。
わたしの家から歩いて30分ほど。商業区の真ん中にある総括ギルドにようやく到着しました。
「こんにちはーっ!!」
元気よく挨拶するのは基本ですねっ。近くにいた人には少しびっくりさせちゃったみたいですけど、みんな笑顔で返してくれます。
「やぁファータちゃん」
「こんにちは!!」
「今日も元気だね」
「はいっ。元気が一番ですから!!」
「今日もかわ――(ギロッ)――い、いい笑顔だね」
「えへへっ。ありがとう!!」
同じギルドに所属するもの同士、やっぱり仲良くしたいですよねっ。
「あら、ファータちゃんいらっしゃい。相変わらず小さいわねぇ」
「こんにちは!! 小さいは余計だと思います!!」
「相変わらず出不精なのね、もっと外に出ないとだめよ?」
「えへへ、ごめんなさい」
ギルド受付員のお姉さんたちも話しかけてきてくれますので、少しお話をします。綺麗な方が多いので、ちょっと羨ましく思いながら。わたしも成長したら、こんな大人になりたいですね!!
そうやって挨拶を交わしながら、今日の目的地まで足を運ぶ。
「こんにちはエレナさんっ」
「あら、こんにちはファータちゃん。今日も元気一杯ね」
受付カウンターで、暇そうに頬杖をついているおねぇさんこそが、エレナさん。いろいろあってこの総括ギルドで、わたしの個別担当受付をしています。
「お久しぶりですね。どのくらいぶりでしたっけ?」
「もう2週間ぶりよ。ファータちゃん、ギルドからの依頼がないと出てきてくれないんだもの。暇でしょうがないわ」
「それじゃあ他に担当の人を作ればいいじゃないですか」
「冗談いわないでよ。個別担当の受付ギルド職員がつく人間なんてそういないわ」
「え、そうなんですか?」
てっきり、わたし以外にもいっぱいいると思ってたのに。
も、もしかしてわたしって問題児と思われているのでしょうか!? だから、定期的に沢山の仕事がやってきて…………? はわわわわわ!!
「ま、今さらファータちゃん以外の担当なんかしたくないだけなんだけどね」
「それが本音ですかっ!?」
余計な心配して損しましたよっ!!
「まぁまぁ落ち着いて。かわいい顔が台無しよ?」
「誰のせいだと…………はうぅ」
あ、頭を撫でないで~!!
エレナさんは母性というか、なんというか……そばにいてほっとするおねぇさん。頭を撫でるのがとてもうまく、抱きしめられながらそれをやられると否が応でも落ち着いてしまう魔性の手の持ち主。ちなみに、わたしの貧相な体つきとは真逆のダイナマイトバディの持ち主でもあります。
「うふふふ。本当にかわいい子ねぇ。…………私は毎日でも会いたいのに、呼んだ時しか会いに来てくれないなんてひどいわ」
「ごめんなさい。最近は難しい魔導機の回路の修理を頼まれてたんです。それがついつい夢中になっちゃって……」
「いっそのこと、私の家にすんでもいいのよ?」
「それはダメですっ」
「どうして!? 私はこんなに大好きなのにっ!!」
「わ、わたしも大好きですよ?」
「じゃあどうして!?」
「だってエレナさんの家は鍛冶に使える釜戸も、魔導機を弄れる作業場もないから…………」
「それは盲点だったわ」
がっくりとテーブルに突っ伏するエレナさん。
正直に言えばわたしもエレナさんと暮らせれば毎日が楽しいと思うけど……やっぱり作業場がないと耐えられませんっ!!
「まあ、気が変わったらいつでもいってちょうだい。私も旦那もいつでもファータちゃんを受け入れる準備は出来てるから」
「受け入れるって……わたしは今でも十分幸せですよ」
こんなに優しい人たちに囲まれているんですからね、これ以上望んだら罰が当たっちゃうよ。
「えへへっ」
「……うふふ。そうね。じゃぁ早速、お仕事に入りましょうかね」
「はいっ。よろしくお願いします。これが今回修理と研ぎを依頼されたものです」
背負ってきたリュックをエレナさんに手渡す。
ちょっと思ったのですが、わたしも結構力持ちですが、エレナさんもすごいですよね……。片手でリュックを持ちながら、もう片方の手で中身をチェックしています。
「今回はこれで全部だったかしら?」
「はい。問題ないはずです」
「じゃあ裏で確認してくるからちょっと待っててね」
「はい。わかりました」
受付カウンターから立ち上がり、リュックを持って奥の扉へと消えるエレナさん。そのちょっとした動作も綺麗で、やっぱり見惚れてしまいます。
確認作業は、量が量なだけにちょっと時間がかかりそうですね。さて、待ってる間はどうしましょう……。
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