始まりの……
まだまだ、プロローグです。
メタニエーラ王国王都ツェーントルより北へ約50キロ。技術の都フォークスと言う街がそこにある。その名の通り、この大陸で最も技術の発達している街だ。鍛治・建設・石工・木工・造船……ここで作れないものなど無いと、誰もが胸を張って笑った。
もちろん王家のお膝元、王都ツェーントルも負けてはいない。大陸を横断する運河の通り道であり、舗装された道路のお陰で各都市や周辺国にまで足を運べるこの都は、必然的に商業が盛んになった。言うなれば、商人の都とでも呼ぼうか。
技術の都で物を作り、商人の都で各国へ輸出する。この安定したサイクルによってメタニエーラ王国は大陸一の富裕国となった。技術を学びたければフォークスへ、商いで成功したければツェーントルへ。メタニエーラ王国は瞬く間に、老若男女様々な技術者や職人、商人の憧れの的となった。
そんな中、フォークスから来た技術者がまた1人、ツェーントルに新たな店を構えた。
その名も「道具店プティアック」
これは、物言わぬ冷たい鉄に魂を宿すと言われる、神の手とも称された若い技術者による、苦悩と成功の物語。――――ではなく、健気で努力家。あとちょっぴりアホ(?)なヒロインと、一癖も二癖もある王都の住人達が繰り広げるラブファンタジーである。