午後2時の抽選
午前10時すぎだろうか。
通りかかった見慣れないパン屋さんに足を止めた。
ガラス越しに見える棚と、やわらかそうなパンの色。
「入ってみる?」
軽い気持ちで扉を押した。
カラン、と音が鳴ったその瞬間、ほんの少しだけ、外の空気と切り離された気がした。
入って斜め右側のショーケースの台の中にに
「半額」
「50円」
手書きの札とともにいつくかの商品がおいてあった
半額とシールが貼られた、フルーツサンドが2つか、3つか…。
で
その隣には50円と値札があり、これは買いだ!
と思ったがなぜ売れていないかを考えるまでもなく、驚きとともに私は目を奪われた。
それはランドセルほどの大きさのパンで、『どでかウインナーサラダパン』と書かれており所々から大きいソーセージや緑の野菜やトマトが飛び出ていたり、今にも飛び出そうだ。
持って買えるのも、切るのも、食べるのも、食べきるのも大変そうな大きさと量に見えた。
5㎏くらいはあるのかもしれない。
直感で思った。
「ママ!メロンパンほしい!」
子どもの声に我に返り、トングとお盆を持ちメロンパンを1つ取る。
レジに並び店員さんがレジを売っている間に聞いてみた
「…あの、入口の50円のパンが欲しいんですけど…」
言い始めたとき、店員さんは一瞬だけ言葉を選ぶような顔をした。
その間を埋めるように、後ろから声がした。
「それは抽選だよ」
振り向くと、イートインスペースにいたおじさんが立っていた。
いつから見ていたんだろう。
「午後2時からで、みんなそれを待ってるんだ。先には買えないよ。」
少し強めにも聞こえたその声はきっと50円のパンを狙っているからだろうか。
「あ、そうなんですね…」と返すと
店員さんが、小さくうなずいた。
「予約票、お出ししますか?」
差し出された紙はレシートと同じ紙質で内容が予約票となっていた。
そこには番号が印字されている。
「あ、じゃあ…」と一応もらっておく。
「抽選は午後2時からになります」
時計を見る。10時ちょっと過ぎ。
——あと4時間。
一度帰ってまた来るか…?
考えようとしたそのとき、
ふと、自分の手元が気になった。
メロンパンが1つだけ。
なぜか、それが少しだけ居心地悪くなり。
近くにいた夫に
「…メロンパンをもう一つ、取ってきてくれる?あなたが食べたいものがあったらそれも持ってきていいから…。」
と頼み
結局、パンは3つになった。
それだけ買って、店を出た。
外の空気は、さっきより現実的で、少し軽い。
袋の中には、温かいパンと、番号が書かれた予約票。
頭の中でさっきのパンと予約票がぐるぐるしている。
午後2時。
もう一度来たら抽選に参加できる。
帰ってからもう一度来るか?
その価値があのパンにはある。と思う。
でも、一度家に帰った体をまた外用にするのは面倒もある。
たかが抽選、されど抽選。
また行くか?やめるか?
そんなことを考えながら目が冷めた。




