55.夏休みの始まり
短めです。
ギルド対決から季節は巡り、
学園はすっかり夏の空気に包まれていた。
蝉の声が響き、
校舎の影は濃く、
空はどこまでも青い。
ユートは掲示板に貼られた紙を見上げた。
『夏季長期休暇のお知らせ』
ミナが隣で嬉しそうに言う。
「ユート……!
ついに夏休みだね!」
ジンが両手を上げて叫ぶ。
「よっしゃあああああ!!
夏だあああああ!!
修行だあああああ!!」
ノアが冷静に言う。
「……海とか遊びとかは?」
「修行の合間にやる!!」
カイルが笑う。
「まあ、ジンらしいな」
エマが手を挙げる。
「素材集めもしたいし、みんなで行けるの楽しみ!」
ミナはワクワクした表情でユートを見る。
「ユートは……どうしたい?」
ユートは迷わず言った。
「決まってる。
――全員で強くなる夏にする」
ミナの瞳が輝く。
「うん!」
◇
担任のハルド先生が教壇に立ち、
クラス全員を見渡した。
「夏休みは自由行動だが……
冒険者科の皆は特に気をつけとけ。
魔物の活動が活発になってるから」
教室がざわつく。
ハルドは続ける。
「特に“西の断崖の谷”は危険度が上がってる。
行くなら十分注意すること」
ノアが小声で言う。
「……逆に言えば、経験値は高いってことだね」
ジンが拳を握る。
「行くしかねぇ!!」
ミナが笑う。
「ジンくん、やる気満々だね」
ユートは静かに頷いた。
(……夏休みで、一気に強くなる)
◇
夏休みの計画会議が始まった。
テーブルには地図が広げられ、
ユートが指し棒で説明する。
「まずは“レベル上げ”が最優先。
候補地は三つ」
① 南方・緑風の丘
初心者向け
魔物は弱い
景色が良く、休憩に最適
② 西方・断崖の谷
中級者向け
魔物は強いが経験値が高い
足場が悪く危険
③ 北方・蒼月の湖
魔力濃度が高く、魔法の練習に最適
水属性の魔物が多い
ミナが言う。
「……湖、綺麗そうだね……!」
エマが頷く。
「素材もいっぱい取れそう!」
カイルが言う。
「罠の練習は断崖の谷がいいな」
ジンが叫ぶ。
「全部行こうぜ!!」
ノアがため息をつく。
「……まあ、夏休みは長いしね」
ユートは全員を見渡し、
静かに言った。
「順番は――
緑風の丘で基礎強化。
断崖の谷で実戦。
蒼月の湖で魔法と素材集め。
これで行こう」
ミナが嬉しそうに頷く。
「うん!
楽しみだね、ユート!」
ユートは微笑んだ。
(……この夏で、絶対に強くなる)
◇
アレンはギルドハウスの屋根の上で、
一人剣を振っていた。
汗が滴り落ちる。
呼吸は荒い。
だが、アレンは止まらない。
(ユート……
君はきっと、夏休みでさらに強くなる)
剣を握る手に力が入る。
(俺も……負けてられない)
仲間が声をかける。
「アレン、休まないと倒れるぞ!」
「……大丈夫。
俺は……もっと強くならなきゃ」
アレンは空を見上げた。
(いつか……
あの背中に追いつくために)
◇
朝日が差し込み、
ギルドハウスが明るく照らされる。
ミナが元気よく言う。
「ユート!
今日から夏休みだよ!」
ジンが叫ぶ。
「行くぞおおおおお!!
緑風の丘へ!!」
ノアが地図を確認する。
「まずは基礎強化。
焦らず、確実に行こう」
カイルが荷物を背負う。
「罠もいっぱい仕掛けるぞ」
エマが笑う。
「素材もいっぱい集める!」
ユートは剣を背負い、
仲間たちを見渡した。
「よし――
行こう、みんな」
ミナがユートの隣に立つ。
「うん!」
黎明の翼は、
夏の大地へと歩き出した。
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