54.ギルド対決の余韻
短めです。
黒曜の盾の勝利で幕を閉じたギルド対決。
観客席の熱狂はまだ残っているが、
ユートたちはゆっくりと出口へ向かって歩き出していた。
ミナは胸の前で手をぎゅっと握りしめ、
まだ興奮が冷めない様子だ。
「……ユート……
本当に、すごかったね……
あんな戦い、初めて見た……」
ユートは静かに頷く。
「うん。
あれが……上級生の本気なんだな」
ジンが肩を組んでくる。
「お前、途中からずっと拳握ってたよな?
燃えてたんだろ?」
「……まあな」
ユートは苦笑したが、
胸の奥はまだ熱く、ざわついていた。
(あの舞台に……俺たちも立つ。
絶対に)
ノアが横から冷静に言う。
「でも、現実的に考えると……
今の私たちじゃ、あのレベルには遠いよ」
「わかってるよ」
ユートは素直に頷いた。
「だからこそ、強くなりたいんだ」
ミナがユートの袖をそっと掴む。
「……ユートなら、きっとなれるよ」
その言葉に、ユートの胸が少しだけ軽くなる。
◇
昇竜の誓団の一団は、
観客席の上段からゆっくりと退場していた。
その中心にいるアレンは、
仲間たちと談笑しながらも、
ほんの一瞬だけユートの背中を見つめた。
(……やっぱり、すごいな)
ユートの横顔。
戦場を見つめる眼差し。
拳を握りしめていた姿。
アレンは胸の奥がざわつくのを感じた。
(あの人は……きっと、もっと強くなる。
俺なんかより、ずっと先へ行く)
仲間の一人が声をかける。
「アレン?どうしたんだ?」
「……ううん、なんでもないよ」
アレンは微笑んだ。
だがその瞳の奥には、
静かに燃える決意が宿っていた。
(追いつきたい。
あの背中に……いつか)
まだ声をかける勇気はない。
まだ“並ぶ資格”もない。
だからこそ、アレンは胸の中で誓う。
(俺も……強くならなきゃ)
◇
学園の石畳を歩きながら、
黎明の翼のメンバーは自然と戦いの話に戻していた。
ジンが興奮気味に言う。
「黒曜強化ゴーレム、やべぇよな!
あれ、どうやって作ってんだ?」
ノアが淡々と答える。
「黒曜石の魔力伝導率と、
ゴーレム核の魔力圧縮率の問題だと思う。
でも、あれを扱えるのは相当な技量が必要」
「へぇ……」
ミナは少し不安そうにユートを見る。
「……ユート。
私たち、本当に……あそこまで行けるのかな……?」
ユートは立ち止まり、
ミナの頭にそっと手を置いた。
「行けるよ。
俺たちなら」
ミナの頬が少し赤くなる。
「……うん」
その様子を見て、ノアが小さく微笑む。
「……まあ、ユートが言うなら大丈夫でしょ」
ジンも笑う。
「だな!
俺たちのリーダーだしな!」
ユートは照れくさそうに頭をかいた。
(……俺が、みんなを強くする。
そのために……もっと強くならなきゃ)
◇
黎明の翼のギルドハウスは、
学園の外れにある小さな建物だ。
まだ新しく、
家具も最低限しかないが、
それでも彼らにとっては“拠点”だった。
玄関を開けると、
ふわりと木の香りが漂う。
ミナが靴を脱ぎながら言う。
「ただいま……」
ユートも続く。
「ただいま」
ジンが大声で言う。
「腹減ったー!なんか食おうぜ!」
ノアが呆れたように言う。
「……さっき食べたばかりでしょ」
カイルが笑う。
「ジンは燃費悪いからなぁ」
エマが台所から顔を出す。
「ご飯なら作ってあるよー!」
ジンが飛び跳ねる。
「神かよ!!」
ミナがくすっと笑う。
「エマちゃん、ありがとう」
エマは照れくさそうに笑った。
「みんなのためだしね!」
◇
テーブルに並ぶ料理は、
エマが作った温かいスープとパン、
そして簡単なサラダ。
ジンが一口食べて叫ぶ。
「うまっ!!」
ミナも嬉しそうに食べる。
「エマちゃん、料理上手だね……!」
エマは照れながら言う。
「えへへ……ありがとう」
ユートは静かに食べながら、
今日の戦いを思い返していた。
(……強くなりたい。
もっと、もっと)
その表情を見て、ミナが心配そうに声をかける。
「ユート……?」
「ん?ああ、大丈夫」
ユートは笑ってみせた。
だがミナは気づいていた。
(ユート……無理してる)
◇
食事が終わり、
みんなが部屋に戻った後。
ユートは一人、庭に出て木剣を握った。
月明かりが静かに照らす中、
ユートは黙々と剣を振る。
――ザッ。
――ザッ。
――ザッ。
静かな音だけが夜に響く。
(強くなりたい。
あの舞台に立ちたい。
ミナを守りたい。
仲間を守りたい)
その想いが、剣に乗る。
ふと、気配を感じて振り返ると――
ミナが立っていた。
「……ユート。
まだ練習してるの?」
「うん。
なんか……落ち着かなくてさ」
ミナは少しだけ笑った。
「ユートらしいね」
そして、そっと近づく。
「……私も、強くなりたい。
ユートの隣に立てるくらいに」
ユートは目を見開いた。
「ミナ……」
「だから……一緒に頑張ろう?」
ユートは静かに頷いた。
「……ああ。
一緒に強くなろう」
二人の影が、月明かりの下で重なる。
◇
学園の屋根の上。
アレンは一人、夜風に吹かれながら
ユートたちのギルドハウスを見つめていた。
(……やっぱり、すごいな。
ユートも……ミナさんも)
胸の奥が熱くなる。
(俺も……負けてられない)
アレンは拳を握りしめ、
夜の闇へと消えていった。
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