閑話 それぞれの想い
ちょい長めかも
新入生闘技大会が終わった翌日。 学園はまだ興奮の余韻に包まれていた。
廊下を歩けば、誰もが昨日の決勝戦の話をしている。
「ユートの最後の一撃、見たか?」
「ミナの上位精霊、あれ反則だろ……!」
「Sクラス、団体戦も優勝とか……今年の新入生どうなってんだよ」
そんな声があちこちで飛び交っていた。
◆
アレンは朝早くから訓練場にいた。 昨日の準決勝――ミナとの戦いを思い返している。
(……あの二重結界、完全に破りきれなかった)
剣を振るたびに、 ミナの光と炎の結界が脳裏に浮かぶ。
(ユートだけじゃない。 ミナも……あの子も、間違いなく“本物”だ)
アレンは剣を握り直す。
「……負けたままで終わるつもりはない」
そこへ、同じAクラスのミリアがやってきた。
「アレン、朝から訓練?相変わらずね」
「ミリアか。君も早いな」
ミリアは苦笑しながら肩をすくめる。
「昨日のミナちゃんの精霊…… 正直、あれは反則級だったわね」
アレンは静かに頷く。
「だが、あれを使いこなせるだけの精神力がある。 あの子は……強い」
ミリアはアレンの横顔を見て、ふっと笑う。
「悔しいんでしょ?」
「……当然だ」
アレンは剣を構え直す。
「次は勝つ。 ユートにも、ミナにも」
その瞳は、昨日よりもさらに強い光を宿していた。
◆
Bクラスの教室では、 ダグラスが机に突っ伏していた。
「うおおおお……悔しい……!」
周りのクラスメイトが笑いながら声をかける。
「お前、ユートに負けたのそんなに悔しいのかよ」
「いや、あれは仕方ないだろ。相手が悪かったって」
ダグラスは勢いよく顔を上げる。
「違うんだよ! あいつ、強いのはわかってたけど…… あんなに強いとは思わなかったんだよ!!」
クラスメイトたちは苦笑する。
「でもさ、ダグラス。 お前、ユートに“悪くなかった”って言われてたじゃん」
「……あれは嬉しかったけどよ」
ダグラスは拳を握りしめる。
「次は勝つ。 絶対に勝つ。 あいつに一撃でも入れられるように……鍛える!」
クラスメイトたちは笑いながらも、 その目に宿る本気を感じていた。
◆
Cクラスのリリアは、 ミナの準優勝を聞いて目を輝かせていた。
「ミナちゃん、すごい……! 上位精霊なんて、本当に呼べるんだ……!」
友達が苦笑しながら言う。
「リリアも風魔法で頑張ってたじゃん。 ミナちゃん相手にあそこまでやれたの、普通にすごいよ」
リリアは頬を赤くしながら首を振る。
「でも……もっと強くなりたい。 ミナちゃんと、また戦いたいから」
友達は笑顔で頷いた。
「じゃあ、練習付き合うよ。 次は勝てるようにね!」
リリアは嬉しそうに笑った。
◆
レナードは図書館で魔法書を読み漁っていた。
(リオ・フェルナン…… あの“読み”は異常だ)
氷魔法は本来、 相手の動きを封じるのが得意だ。
だが――
(僕の魔法は、全部読まれていた)
レナードは本を閉じ、 静かに呟く。
「……次は、読ませない」
その瞳には、 静かな闘志が宿っていた。
◆
学園のあちこちで、 Sクラスの話題が飛び交っていた。
「ユートの二刀、マジでやばいよな」
「ミナの上位精霊、あれどうやって呼ぶんだ?」
「リオの読み、あれ反則じゃね?」
「セリナも強かったし……Sクラス全員化け物かよ」
中にはこんな声も。
「でもさ…… あの二人、決勝戦の後に一緒に帰ってたよな?」
「えっ、マジで? なんかいい雰囲気だったって聞いたけど……」
「……まさか、そういう関係?」
「いやいや、まだ早いだろ……多分」
そんな噂話が、 学園中に広がっていった。
◆
夜。 アレンは一人、寮の屋上に立っていた。
月明かりが静かに照らす中、 アレンは剣を見つめる。
(ユート…… 君は強い。 だが、僕は――負けるつもりはない)
ミナの上位精霊。 ユートの二刀。 リオの読み。 セリナの氷。
(Sクラス…… 本当に、とんでもないクラスだ)
アレンは剣を握りしめる。
「……次は、勝つ」
その声は静かだが、 確かな決意に満ちていた。
――一方、Sクラス
新入生闘技大会が終わった翌日。 Sクラス専用ラウンジには、 大会に出場しなかったメンバーたちが集まっていた。
ユートやミナ、リオ、カイル、セリナは インタビュー対応やギルド勧誘の対応などで忙しく、 ここにはいない。
残されたメンバーは―― エリオット、ジン、ルナ、テオ、ノア、エマ、レオン。
彼らは大会に出場しなかったが、 昨日の戦いを見て、胸に様々な思いを抱えていた。
◆
眼鏡を押し上げながら、 古い魔導書をめくるエリオット。
「……ユートくんの《心眼》、 あれ……魔力の流れを読む技術……?」
彼は昨日の決勝戦を何度も思い返していた。
「ミナさんの上位精霊…… 召喚の構造が……普通じゃない……」
隣で見ていたルナが苦笑する。
「エリオット、昨日からずっと研究してるね」
エリオットは顔を赤くしながら本を閉じる。
「だ、だって…… あんな魔法、見たことないんだ…… 僕も……もっと強くなりたい」
控えめな声だが、 その瞳には強い光が宿っていた。
◆
ジンは腕を組み、悔しそうに唸っていた。
「くっそー! ユートのやつ、あんなに強かったのかよ!」
エマが笑いながら言う。
「ジン、悔しそうだね〜」
「そりゃ悔しいだろ! 俺も出てたら、絶対あいつと殴り合えたのに!」
レオンが冷静に突っ込む。
「いや、殴り合いにはならないと思うけど…… ユート速いし」
ジンは拳を握りしめる。
「次の大会は絶対出る! ユートと真正面から勝負するんだ!」
その声は、ラウンジ中に響いた。
「次はもうなくない......?」
◆
ルナは窓辺に座り、 昨日の決勝戦を思い返していた。
「ミナちゃん…… あんなに強かったんだね」
ノアが隣で静かに頷く。
「上位精霊……普通じゃないよね」
ルナは自分の手を見つめる。
「幻術って…… あの二人の前じゃ、通じるのかな……?」
ノアは少し考えてから言う。
「通じるよ。 ルナの幻術は……本物だから」
ルナは驚いたようにノアを見る。
「ノアくん……ありがとう」
彼女の瞳に宿る光は、 昨日よりも強くなっていた。
◆
テオは肩の上のピコを撫でながら言う。
「ピコ、見た? ミナちゃんの上位精霊……すごかったね!」
ピコが「ピィ!」と元気に鳴く。
エマが笑いながら近づく。
「テオも召喚術得意なんだから、 上位召喚とかできるんじゃない?」
テオは首を振る。
「まだ無理だよ…… でも、ミナちゃんを見て思ったんだ。僕も……もっと強い召喚獣を呼びたいって」
ピコが胸を張る。
「ピィ!」
テオは笑った。
「うん、ピコも一緒に強くなろうね」
◆
ノアは黒いローブを揺らしながら、 静かに紅茶を飲んでいた。
ジンが声をかける。
「ノア、お前は悔しくないのか?」
ノアは少し考えてから答える。
「悔しいよ。 でも……僕は僕のやり方で強くなる」
エリオットが興味深そうに聞く。
「ノアくんの魔力…… 昨日、ちょっとだけ見えたけど…… あれ、本当に“無属性”なの……?」
ノアは微笑む。
「さぁ……どうだろうね」
その言葉に、 エリオットは思わず息を呑んだ。
「でも、本当に悪いものではないから、安心してよ」
◆
エマは机の上に薬瓶を並べながら言う。
「ミナちゃんの光炎衝…… あれ、錬金術で再現できないかな〜?」
レオンが慌てて止める。
「やめてくれ。 また爆発するだろ」
エマは頬を膨らませる。
「むー! ちゃんと安全にやるもん!」
ジンが笑う。
「エマの爆発、嫌いじゃないぜ!」
エマは嬉しそうに笑った。
「じゃあ、次はジンくんに協力してもらおうかな〜?」
「えっ!? 俺!?」
ラウンジに笑い声が広がった。
◆
レオンは静かに弓を磨きながら呟く。
「ユートの動き…… あれ、弓で追えるかな」
ノアが言う。
「レオンなら追えるよ。 君の弓は……本当に速いから」
レオンは少し驚いたようにノアを見る。
「……ありがとう。 でも、もっと鍛えないと」
彼は弓を背負い、立ち上がる。
「 遠距離からでも、勝てるって証明したい」
その背中は、 昨日よりもずっと頼もしかった。
◆
大会に出られなかった彼らも、 それぞれの場所で悔しさと憧れを胸に抱き、 静かに、しかし確かな決意を固めていた。
エリオットは魔導書を開き
ジンは拳を握り
ルナは幻術を磨き
テオはピコと共に召喚陣を描き
ノアは静かに魔力を整え
エマは薬瓶を振り
レオンは弓を引く
(次こそは――)
(次こそは、あの舞台に立つ)
(ユートやミナと肩を並べて戦う)
その想いは、 Sクラス全体の士気をさらに高めていく。
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