4.三歳のユート
毎日投稿頑張ります!
ユートがこの世界に生まれて三年。
赤ちゃんの頃は自分の体すらまともに動かせず、魔力の扱いどころではなかったが――
三年経った今、身体も精神もようやく“修行できる器”となっていた。
朝の光が差し込む寝室。
小さなベッドの上でユートは目を開き、ゆっくりと上体を起こした。
(……よし、今日も絶好調)
身長は低く、まだ丸みの残る三歳児の体。
だが、その瞳の奥には転生者の光が宿っている。
ベッドから降り、窓際へ。
朝の澄んだ空気を吸い込むと、胸の奥で微かな魔力が反応した。
(まずは軽い魔力循環からだな)
ユートはゆっくりと呼吸を整え、意識を身体の中心へ沈める。
胸の奥で、ほんの小さな水の川が流れるような“魔力の道”がある。
それを丁寧に撫でるように、全身へ広げていく。
――ぽっ。
指先に微細な光が宿った。
光は揺れ、ふわりと宙に浮く。
直径三センチほどの小さな魔力球。
三歳児が遊びで作っているものじゃない。
集中しないと制御できない、精密な操作だ。
(うん、昨日より魔力の巡りが早い。いい感じだ)
光を消すと、部屋の扉がノックされた。
「坊ちゃん~? おはようございます!」
乳母ベアトリスが笑顔いっぱいに入ってくる。
ユートを見る目が完全に 「私の自慢の天才坊ちゃん」 になっているのは気のせいではない。
「ユートは、もう起きてたのですね。最近は本当に早起きで……感心です」
「おきるの、すきなの」
三歳児らしい言い回しで答えると、ベアトリスは嬉しそうに頬を緩める。
「ふふ、本当にお利口さん……。それに、走るのも読むのも早くて、私、驚かされてばかりです」
(まあ、転生者だし、魔力訓練してるしな)
もちろん言えない。
けれどベアトリスの誉め言葉は素直に嬉しかった。
身支度を終えると、ベアトリスはユートの手を取り、朝食のため食堂へ向かう。
歩きながら、ユートは意識をウィンドウへ向ける。
ーーーーーーーーステータスーーーーーーーー
<基本情報>
名前 :ユート・アルティナール
年齢 :3歳
種族 :人間(転生者)
性別 :男
称号 :《転生者(封印中)》 《創造神の寵愛(封印中)》
レベル :3
HP :28
MP :22
STR :4
VIT :4
AGI :4.8
DEX :5.2
LUK :11
<一般スキル>
・魔力感知(初級)
・魔力操作・未覚醒(NEW・封印中)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(魔力操作はまだ封印中。けど……スキル欄に出たってことは、できてきているという証拠だ)
数年以内に封印に触れられるほどに成長する――
そんな直感があった。
食堂に入ると、父アレクシオが新聞を片手に座っていた。
その背筋の伸びた姿は、まさに領主であり父親の威厳そのものだ。
「おはよう、ユート」
「ぱぱ、おはよ!」
アレクシオは笑い、ユートを椅子に座らせる。
「最近、本当に言葉がしっかりしてきたな。三歳でここまで話せるとは……驚かされてばかりだ」
(そりゃ転生者だからな)
父はユートの手を見つめながら小さく呟いた。
「握力も強いし、身体能力も高い……もしかすると、お前には“才能”があるのかもしれん」
(うん、魔力量の才能はあると思う)
そう言いかけて、すんでのところで飲み込む。
パンをかじる三歳児の姿とは裏腹に、ユートの内心は忙しい。
(父さんの期待を裏切らないように、もっと鍛えないとな)
朝食後、父はユートを書斎へ連れて行った。
「今日から、アルティナール家の後継として基本の学問を学ぶぞ」
「がくもん……?」
「うむ。まずは地図から見てみよう」
父の膝に座り、地図を覗き込む。
「ユート、どれが我がアルティナール領か分かるか?」
「ここ、ぱぱのところ!」
アレクシオの目が見開かれ、微笑む。
「……ああ、正解だ。三歳で地図が読めるとは……恐ろしい子だな」
(いや、地図くらい普通に読めるぞ)
とは言わない。
だって、父が喜んでいるのが嬉しかったから。
その後も文字や数の簡単な読み書きを見せると、アレクシオは本気で驚いていた。
「ユート……本当に三歳なのか……?」
(いや、前世込みだと18歳超えてるんですけど)
これも言わない。
午後、ユートは庭に出た。
使用人たちが掃除をするのを横目に、庭の端にある小さな東屋へ向かう。
ここは“寝ているふりしてサボる場所”として知られており、逆に言えば誰も来ない。
(さて……今日の本番はここからだ)
ユートは膝をつき、ゆっくりと魔力を練る。
胸→肩→肘→手首→指先へ
魔力の流れを“細く、速く”集中させる。
そして――
――ふッ。
空気が、ほんの僅かに押し出された。
周囲の草が揺れ、小さな風輪が指先から弾ける。
(……成功だ。三歳でやっと、外界に干渉できるレベルに到達したか)
魔力が外界に影響を与える――
それは初級魔法を使うための“前段階”とも言える。
どんどん成長しているという実感がわいた。
訓練を終え、東屋から戻ろうとすると、
庭の隅で小さな鳥が羽を怪我してうずくまっていた。
(あ……)
ユートはそっと近づき、鳥を抱き上げる。
(治癒魔法なんてまだ使えないけど……)
けれど魔力をほんのり流し込むことならできる。
怪我を治すほどの力はないが、痛みを和らげる程度なら。
ユートは鳥の胸に手をかざし、柔らかい魔力を少しだけ送った。
鳥は震えが止まり、静かに目を閉じる。
(……よし。あとはベアトリスに渡そ)
ベアトリスは怪我した鳥を見ると目を丸くし、
「まぁ……優しい子……!」
と言って抱きしめてきた。
(うぉ、三歳児扱い全開だな……)
でも、嫌ではなかった。
夕方。
父はユートを抱き上げ、軽く肩車をして屋敷の廊下を歩いた。
「ユート、お前は本当に賢い子だ。将来が楽しみだぞ」
(……その期待、絶対に裏切らないから)
父の言葉はユートの胸を強く揺らした。
寝室に戻り、ベッドに横たわると、ユートは静かに拳を握る。
(強くなる。
魔力を極める。
封印を解く。
そして――この世界で、自分の人生を掴む)
胸の奥で、柔らかい光がまた一つ灯った。
それはまるで、ユートの決意に呼応しているようだった。
――こうして三歳のユートは、“ただの天才児”ではなく、
ゆっくりと本当の“覚醒の道”へと踏み出していくのだった。
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