36.初授業
午前中の実力測定を終えたSランククラスは、 疲れながらも興奮した表情で訓練場に残っていた。
ハルドが手を叩く。
「よし、ここからは授業だ。今日は初日だから特別に全教科を一気にやる。Sランククラスの全体像を掴んでもらうためだ。今日は自分が苦手とする教科はほかの人のを見とくのもいいし、自分の個人練習をしてもいい。ただ次からは苦手だとしても基礎からやるからな。」
生徒たちがざわつく。
「全教科……?」
「初日から……?」
「死ぬ……」
ハルドは笑った。
「安心しろ。普段はこんな無茶はしない。通常は一日2教科だ。午前1つ、午後1つ。曜日によって物理の日、魔法の日、特別な科目の日……と変わる」
ミナがほっと息を吐く。
「よかった……毎日全部だったら倒れちゃうよ……」
「だろ?だから今日は特別だ。“お前たちがどれだけの素材か”を見たいだけだ」
ユートは苦笑しながらも、 どこか嬉しそうに頷いた。
◆
訓練場の中央に、 黒髪で筋肉質の男が立っていた。
「俺はガルド・ヴァレン。元王国剣聖だ。よろしくな」
生徒たちが息を呑む。
「剣術組は前へ。魔法組も見ておけ。剣の動きは魔法にも役立つ」
ユート、カイル、リオが前に出る。
ガルドは木刀を構えた。
「ユート、来い」
ユートは二刀を構え、踏み込む。
ガルドは片手で受け止めた。
「悪くない。だが――」
ガルドの木刀が一瞬で動き、ユートの二刀を弾き飛ばす。
「剣が軽い。お前は速さと重さを両立しているが、まだ“芯”がない」
ユートは悔しそうに歯を食いしばる。
「もっと強くなりたいです」
「その意気だ。これから頑張るぞ」
カイルは高速で踏み込み、 連続の斬撃を放つ。
ガルドはすべて見切り、軽く木刀でカイルの額を小突いた。
「速いが、直線的だ。ユートとは違う意味で読まれやすい」
カイルは悔しそうに拳を握った。
リオは静かに構えた。
「《古流剣術・二ノ型》」
ガルドの木刀とぶつかり、火花が散る。
ガルドが目を細める。
「……お前の剣、どこで習った?」
「家伝です」
「なるほど。古い流派だ。大事にしろ」
◆
白いローブを纏った女性が現れた。優雅で、どこか神秘的な雰囲気。
「私はアリア。王国魔導院の主席魔導師よ。今日は魔力制御の基礎を見せてもらうわ」
魔法組――ミナ、ユート、セリナ、エリオット、ノアが前へ。
ミナは炎と光の精霊を呼び出し、 同時に魔力を流す。
アリアは目を丸くした。
「……あなた、精霊との同調率が異常に高いわね。十二歳でこれは……本当に驚異的よ」
ミナは照れながら微笑む。
ユートは静かに手をかざし、 魔力を一点に集める。
アリアはその魔力の密度に息を呑んだ。
「……あなた、魔力の質が異常に高いわ。剣士の魔力じゃない……十二歳でこれは規格外よ」
ユートは少し照れながら微笑む。
セリナは氷の魔力を緻密に操り、 空中に氷の花を咲かせた。
「美しい……」
アリアが思わず呟く。
「あなたの氷は“精霊氷”ね。普通の氷魔法とは違うわ」
セリナは驚いた顔をした。
エリオットは魔導書を開き、 古代魔法を発動する。
「《雷撃式・制御》」
雷が指先に集まり、 小さな球体となって浮かぶ。
アリアは驚愕した。
「古代魔法を“制御”できる十二歳……? あなたも相当、天才よ」
ノアは静かに手をかざす。
「《無色の刃》」
透明な刃が空中に現れ、アリアの髪を一筋だけ切った。
アリアは息を呑む。
「……あなた、本当に無属性なの?」
ノアは黙っていた。
◆
白髪の老人が杖をつきながら現れた。 背は曲がっているが、纏う魔力は圧倒的。
「精霊導師ルーファスじゃ。精霊は友であり、力であり、時に試練じゃ。ミナ、セリナ、前へ」
ミナの周囲に炎と光の精霊が現れる。
ルーファスは目を細めた。
「……二体同時に安定しておる。十二歳でこれは……歴代でも数人じゃ」
ミナは驚き、精霊たちが嬉しそうに揺れた。
セリナの氷の精霊が現れ、空気が一気に冷える。
「お主の氷はアリアが言ってた気もするが“精霊氷”じゃ。普通の魔法とは違う。大切に育てるのじゃぞ」
セリナは深く頷いた。
◆
筋肉の塊のような男が現れた。
「バルドだ!体術組、前へ!」
ジン、ユート、カイルが前に出る。
ジンは拳を構えた瞬間、バルドが笑った。
「お前、才能の塊だな。ちょっと殴ってみろ」
ジンの拳がバルドの腕に当たる。
バキィッ!
「……痛ぇな」
バルドが笑った。
「お前は、体術の天才だ」
ユートは剣術が主体だが、体術も基礎はできている。
バルドはユートの蹴りを受け止め、満足げに頷いた。
「剣士にしては体の使い方が上手い。魔法もできるんだろう?剣術と魔法、さらに体術を合わせれば、もっと強くなるぞ」
◆
白衣の女性が現れた。
「メルティアよ。錬金術は“魔力の流れ”がすべてよ。じゃあ、エマ、前へ」
エマは薬瓶を並べ、 慎重に魔力を流し込む。
ポンッ!
今度は成功した。
「やった……!」
メルティアは微笑んだ。
「あなたは魔力の質が良い。錬金術師として大成するわ」
◆
長身の男が弓を背負って現れた。
「弓聖アレンだ。レオン、前へ」
レオンは小さな弓を構えた。
「《必中の矢》」
放たれた矢は、 訓練場の端にある小さな的を正確に射抜いた。
アレンは目を丸くした。
「……お前の弓、外れないのか?」
「はい。外れません」
「とんでもない才能だ」
◆
青いローブの女性が現れた。
「召喚士リュミエルよ。テオだっけ、前へ」
テオはピコを呼び出す。
「ピコ、お願い!」
「ピィッ!」
ピコは魔力を纏い、小さな体からは想像できない力を放つ。
リュミエルは驚愕した。
「……この子、ただの魔物じゃないわね」
テオは照れながら笑った。
◆
黒いローブの女性が静かに現れた。
「幻術師ネレイアよ。幻術は珍しいけど使いこなせたら強いわ。ルナ、前へ」
ルナは静かに目を閉じた。
「《幻月の囁き》」
訓練場の空気が揺れ、一瞬、全員が月の光の中にいるような錯覚に陥る。
ネレイアは息を呑んだ。
「……あなたの幻術は“現実に干渉”している。危険だが……強い」
ルナは静かに頷いた。
◇
夕方。 訓練場は静かになり、 生徒たちは疲れ切った表情で座り込んでいた。
「はぁ……初日からこれって……」
「明日、体動くかな……」
「でも……楽しい……!」
ユートとミナは互いに微笑み合った。
「これからが本番だな」
「うん。頑張ろう、ユート」
ハルドが最後に言った。
「お前たち、今日よく頑張った。Sランククラスは厳しいが……その分、誰よりも強くなれる。期待してるぞ」
こうして―― Sランククラスの本当の物語が始まった。
感想、ブックマーク、評価、リアクション、お願いします!!
誤字報告や文法がおかしいなども是非!!!




