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36.初授業

午前中の実力測定を終えたSランククラスは、 疲れながらも興奮した表情で訓練場に残っていた。


ハルドが手を叩く。


「よし、ここからは授業だ。今日は初日だから特別に全教科を一気にやる。Sランククラスの全体像を掴んでもらうためだ。今日は自分が苦手とする教科はほかの人のを見とくのもいいし、自分の個人練習をしてもいい。ただ次からは苦手だとしても基礎からやるからな。」


生徒たちがざわつく。


「全教科……?」

「初日から……?」

「死ぬ……」


ハルドは笑った。


「安心しろ。普段はこんな無茶はしない。通常は一日2教科だ。午前1つ、午後1つ。曜日によって物理の日、魔法の日、特別な科目の日……と変わる」


ミナがほっと息を吐く。


「よかった……毎日全部だったら倒れちゃうよ……」


「だろ?だから今日は特別だ。“お前たちがどれだけの素材か”を見たいだけだ」


ユートは苦笑しながらも、 どこか嬉しそうに頷いた。



訓練場の中央に、 黒髪で筋肉質の男が立っていた。


「俺はガルド・ヴァレン。元王国剣聖だ。よろしくな」


生徒たちが息を呑む。


「剣術組は前へ。魔法組も見ておけ。剣の動きは魔法にも役立つ」


ユート、カイル、リオが前に出る。



ガルドは木刀を構えた。


「ユート、来い」


ユートは二刀を構え、踏み込む。


ガルドは片手で受け止めた。


「悪くない。だが――」


ガルドの木刀が一瞬で動き、ユートの二刀を弾き飛ばす。


「剣が軽い。お前は速さと重さを両立しているが、まだ“芯”がない」


ユートは悔しそうに歯を食いしばる。


「もっと強くなりたいです」


「その意気だ。これから頑張るぞ」



カイルは高速で踏み込み、 連続の斬撃を放つ。


ガルドはすべて見切り、軽く木刀でカイルの額を小突いた。


「速いが、直線的だ。ユートとは違う意味で読まれやすい」


カイルは悔しそうに拳を握った。



リオは静かに構えた。


「《古流剣術・二ノ型》」


ガルドの木刀とぶつかり、火花が散る。


ガルドが目を細める。


「……お前の剣、どこで習った?」


「家伝です」


「なるほど。古い流派だ。大事にしろ」



白いローブを纏った女性が現れた。優雅で、どこか神秘的な雰囲気。


「私はアリア。王国魔導院の主席魔導師よ。今日は魔力制御の基礎を見せてもらうわ」


魔法組――ミナ、ユート、セリナ、エリオット、ノアが前へ。



ミナは炎と光の精霊を呼び出し、 同時に魔力を流す。


アリアは目を丸くした。


「……あなた、精霊との同調率が異常に高いわね。十二歳でこれは……本当に驚異的よ」


ミナは照れながら微笑む。



ユートは静かに手をかざし、 魔力を一点に集める。


アリアはその魔力の密度に息を呑んだ。


「……あなた、魔力の質が異常に高いわ。剣士の魔力じゃない……十二歳でこれは規格外よ」


ユートは少し照れながら微笑む。



セリナは氷の魔力を緻密に操り、 空中に氷の花を咲かせた。


「美しい……」


アリアが思わず呟く。


「あなたの氷は“精霊氷”ね。普通の氷魔法とは違うわ」


セリナは驚いた顔をした。



エリオットは魔導書を開き、 古代魔法を発動する。


「《雷撃式・制御》」


雷が指先に集まり、 小さな球体となって浮かぶ。


アリアは驚愕した。


「古代魔法を“制御”できる十二歳……? あなたも相当、天才よ」



ノアは静かに手をかざす。


「《無色の刃》」


透明な刃が空中に現れ、アリアの髪を一筋だけ切った。


アリアは息を呑む。


「……あなた、本当に無属性なの?」


ノアは黙っていた。



白髪の老人が杖をつきながら現れた。 背は曲がっているが、纏う魔力は圧倒的。


「精霊導師ルーファスじゃ。精霊は友であり、力であり、時に試練じゃ。ミナ、セリナ、前へ」


ミナの周囲に炎と光の精霊が現れる。


ルーファスは目を細めた。


「……二体同時に安定しておる。十二歳でこれは……歴代でも数人じゃ」


ミナは驚き、精霊たちが嬉しそうに揺れた。



セリナの氷の精霊が現れ、空気が一気に冷える。


「お主の氷はアリアが言ってた気もするが“精霊氷”じゃ。普通の魔法とは違う。大切に育てるのじゃぞ」


セリナは深く頷いた。



筋肉の塊のような男が現れた。


「バルドだ!体術組、前へ!」


ジン、ユート、カイルが前に出る。



ジンは拳を構えた瞬間、バルドが笑った。


「お前、才能の塊だな。ちょっと殴ってみろ」


ジンの拳がバルドの腕に当たる。


バキィッ!


「……痛ぇな」


バルドが笑った。


「お前は、体術の天才だ」



ユートは剣術が主体だが、体術も基礎はできている。


バルドはユートの蹴りを受け止め、満足げに頷いた。


「剣士にしては体の使い方が上手い。魔法もできるんだろう?剣術と魔法、さらに体術を合わせれば、もっと強くなるぞ」



白衣の女性が現れた。


「メルティアよ。錬金術は“魔力の流れ”がすべてよ。じゃあ、エマ、前へ」


エマは薬瓶を並べ、 慎重に魔力を流し込む。


ポンッ!


今度は成功した。


「やった……!」


メルティアは微笑んだ。


「あなたは魔力の質が良い。錬金術師として大成するわ」



長身の男が弓を背負って現れた。


「弓聖アレンだ。レオン、前へ」


レオンは小さな弓を構えた。


「《必中の矢》」


放たれた矢は、 訓練場の端にある小さな的を正確に射抜いた。


アレンは目を丸くした。


「……お前の弓、外れないのか?」


「はい。外れません」


「とんでもない才能だ」



青いローブの女性が現れた。


「召喚士リュミエルよ。テオだっけ、前へ」


テオはピコを呼び出す。


「ピコ、お願い!」


「ピィッ!」


ピコは魔力を纏い、小さな体からは想像できない力を放つ。


リュミエルは驚愕した。


「……この子、ただの魔物じゃないわね」


テオは照れながら笑った。



黒いローブの女性が静かに現れた。


「幻術師ネレイアよ。幻術は珍しいけど使いこなせたら強いわ。ルナ、前へ」


ルナは静かに目を閉じた。


「《幻月の囁き》」


訓練場の空気が揺れ、一瞬、全員が月の光の中にいるような錯覚に陥る。


ネレイアは息を呑んだ。


「……あなたの幻術は“現実に干渉”している。危険だが……強い」


ルナは静かに頷いた。





夕方。 訓練場は静かになり、 生徒たちは疲れ切った表情で座り込んでいた。


「はぁ……初日からこれって……」

「明日、体動くかな……」

「でも……楽しい……!」


ユートとミナは互いに微笑み合った。


「これからが本番だな」

「うん。頑張ろう、ユート」


ハルドが最後に言った。


「お前たち、今日よく頑張った。Sランククラスは厳しいが……その分、誰よりも強くなれる。期待してるぞ」


こうして―― Sランククラスの本当の物語が始まった。


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