30.王都冒険者養成学園《グランディア》
めっちゃ眠いので次は明日かも
屋敷での新生活が始まってから数週間。ユートとミナは毎朝庭で鍛錬を重ね、昼は書斎で魔法や知識を学び、夜には暖炉の前で次の冒険について語り合う日々を送っていた。王都の人々もたまに、若き冒険者《黎明の双星》の名を口にするようになり、二人の存在は少しずつ広まっていた。
そんなある日、両親たちが屋敷を訪れた。ユートの父と母、ミナの父と母が揃って居間に座り、暖炉の火が柔らかく揺れる中で、真剣な話を始めた。
「ユート、ミナ。お前たちの成長は目覚ましい。だが、冒険者としてさらに力をつけるには、体系的な学びが必要だ。」
ユートの父が低い声で切り出した。
ユートの母も頷き、続ける。
「王都には冒険者を育成する学園があるの。剣術、魔法、戦術、歴史……多くの分野を学べる場所よ。そこで学べば、もっと強くなれるはず。」
ミナの父が微笑みながら言った。
「二人は若くしてDランクに昇格した。だからこそ、学園で学ぶ資格がある。私たちは二人に入学を勧めたい。」
ミナの母は少し申し訳なさそうに言葉を重ねた。
「これまでミナはユートの家に住まわせてもらっていた。私たちも心のどこかで申し訳なく思っていたの。でも、この屋敷ができて安心したわ。だからこそ、次は学園での学びを贈りたいの。」
ユートは驚き、ミナは目を輝かせた。二人は互いに顔を見合わせ、胸の奥に熱いものを感じた。
学園――それは新しい舞台であり、未来への扉だった。
親たちの提案を受け、二人は王都学園の入学試験について詳しい説明を受けた。学園は王城の近くに建つ壮麗な建物で、冒険者志望の若者たちが集まる場所だ。入学には試験があり、三つの分野で実力を示さなければならない。
剣術試験
模擬戦で剣の技を披露する。
相手は学園の教官や上級生。技の正確さ、力強さ、戦術眼が評価される。
魔法試験
精霊魔法や属性魔法を使い、標的を破壊したり、複数の魔法を制御する力を示す。魔力の安定性と応用力が重要。
知識試験
筆記試験で、魔物の生態、遺跡の構造、罠の種類などを問われる。実戦経験を活かした答えが求められる。
ユートの父が言った。
「ユート、お前は剣術試験で力を示せ。二刀流の技は必ず評価される。」
ミナの母が微笑みながら言った。
「ミナ、あなたは魔法試験で精霊との契約を披露して。炎と光を同時に操れる力は、学園でも注目されるはず。」
ユートの母が真剣な声で付け加えた。
「知識試験も忘れないで。実戦経験を活かし、冷静に答えることが大事よ。」
二人は真剣に頷き、試験に向けて準備を始める決意を固めた。
◇
屋敷の庭は、ユートにとって最高の鍛錬場となった。朝日が昇ると同時に彼は暁光剣と黎明の剣を手に取り、二刀流の鍛錬を始める。冬の冷たい空気を切り裂く剣戟の音が響き、庭の木製人形や石の標的が次々と斬り刻まれていく。
二刀流は難しい。片方の剣を振るうだけでも全身の筋肉と集中力を必要とするのに、二本を同時に操るには、まるで左右の腕が別々の意思を持つかのような感覚が必要だった。ユートは何度も剣を交差させ、流れるような動きを目指す。だが時折、左の剣が遅れ、動きがぎこちなくなる。
「ユート、左の剣が少し遅れてる。もっと同時に動かして。」
ミナが後方から声をかける。彼女は魔法で風を操り、ユートの動きを観察していた。
「わかった。二刀を一つの流れにするんだな。」
ユートは息を整え、再び剣を振るう。暁光剣が光を放ち、黎明の剣が重さを加える。二つの剣が交差し、木製人形を一瞬で切り裂いた。
汗が額を流れ、息が荒くなる。だがユートは止まらない。剣術試験では模擬戦が行われる。相手は学園の教官や上級生。彼らを前にして怯むわけにはいかない。二刀流の技を完璧にしなければならない。
「もっと速く、もっと滑らかに……」
ユートは心の中で呟き、剣を振り続けた。朝日が庭を照らし、剣の光が未来への道を示していた。
◇
昼下がりの屋敷の書斎。窓から差し込む光が机の上の羊皮紙を照らし、インク壺の影を長く伸ばしていた。ミナは白銀杖を両手で抱え、深く息を吸い込む。
「炎の精霊、光の精霊……二つの力を同時に呼び出す。」
杖の先に赤い炎が揺らめき、同時に柔らかな光が広がる。二つの精霊が現れると、空気が震え、魔力の流れが複雑に絡み合った。炎は暴れようとし、光はそれを抑えようとする。均衡を保つのは難しく、ミナの額には汗が滲んだ。
ユートは隣で見守りながら、魔力循環術を使って彼女の魔力を安定させる。
「ミナ、呼吸を整えて。魔力を一つの流れにまとめるんだ。」
ユートの魔力が彼女に流れ込むと、炎の精霊が落ち着き、光の精霊が優しく包み込む。二つの力が重なり合い、杖の先に新しい輝きが生まれた。
「……できた!」
ミナの声が震える。炎と光が融合し、赤と白の輝きが渦を巻いて広がった。
「これなら試験で披露できる。炎と光の同時制御は、学園でも注目されるはずだ。」
ユートが頷いた。
ミナは笑みを浮かべ、杖を握りしめた。
「ユートの魔力があったから成功した。私一人じゃまだ不安定。でも、二人ならできる。」
ミナは何度も練習を繰り返し、炎と光の融合魔法を安定させていった。
◇
夜になると、二人は屋敷の図書館に向かった。壁一面に並ぶ本棚には、魔物の生態や遺跡の構造、古代の魔法に関する書物がぎっしりと詰まっている。暖炉の火が揺れ、静かな空気が漂っていた。
ユートは羊皮紙を広げ、問題を書き出した。
「岩甲獣の弱点は?」
「脚の関節。炎で加熱すれば岩が割れる。」
ミナが即答する。
ミナも問題を出す。
「古代遺跡に多い罠を三つ挙げて。」
「矢の罠、落とし穴、魔力封印。全部経験した。」
ユートが答える。
二人は互いに問題を出し合い、答えを確認しながら理解を深めていった。時には本を開き、図を指差しながら議論を重ねる。
「この遺跡の構造図、罠の配置が複雑だな。」
ユートが呟く。
「でも、精霊の力で魔力の流れを感じ取れば、封印の罠は見抜けるはず。」
ミナが説明する。
ユートは頷き、羊皮紙にメモを書き込んだ。
「試験では実戦経験を活かして答えることが大事だ。僕たちならできる。」
ミナは微笑み、ページをめくった。
「ユートと一緒なら、知識も力になる。二人で学べば、どんな問題でも乗り越えられる。」
夜が更けても、二人は本を読み続けた。暖炉の火が小さくなり、窓の外には星空が広がっていた。だが二人の瞳には未来への光が宿っていた。
こうしてユートとミナは、魔法の研究と知識の勉強を重ね、学園入学試験に向けて準備を整えていった。屋敷は二人の鍛錬と学びの場となり、未来への扉を開く舞台となった。
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