27.Dランク昇格試験
王都での一年間の活躍を終えた冬の終わり。冒険者ギルドの広いホールには新しい告知が貼り出されていた。厚い羊皮紙に刻まれた文字は、冒険者たちの目を引き、ざわめきを生んでいた。そこには「昇格試験 ― EランクからDランクへの挑戦」と大きく記されていた。
受付嬢がユートとミナを呼び止め、柔らかい声で告げる。
「ユートさん、ミナさん。あなた方の功績は十分です。盗賊退治、魔物討伐、護衛、遺跡探索……どれも高評価でした。ギルドとしても、あなた方を次の段階へ進ませるべきだと判断しました。次はDランク昇格試験に挑んでいただきます。」
ホールにいた他の冒険者たちもざわめいた。まだ11歳の少年少女が昇格試験に挑むなど、前例がほとんどない。だが彼らの名はすでに王都で広まり、誰もがその実力を耳にしていた。二人は互いに目を見合わせ、胸の奥に熱いものを感じながら、力強く頷いた。
◇
昇格試験は三つの課題から成り立っていた。
模擬戦闘:ギルドの熟練冒険者との模擬戦。実力と連携を試す。
依頼遂行:実際の依頼を受け、成功させること。今回は「中型魔物の討伐」。
知識試験:遺跡や魔物に関する基礎知識を問う筆記試験。
受付嬢は一つ一つ丁寧に説明し、二人の目を見て言葉を重ねた。
「模擬戦闘では、あなた方の戦術と連携を試します。依頼遂行では、実際の現場での判断力と持続力を見ます。そして知識試験では、冒険者として必要な理論と経験を確認します。三つすべてを合格して初めて、Dランクへ昇格できます。」
◇
試験場は王都ギルドの地下に広がる石造りの闘技場だった。壁には古代の戦士の紋章が刻まれ、床には幾度もの戦闘で刻まれた傷跡が残っている。観覧席には審査員や他の冒険者が集まり、若き《黎明の双星》の挑戦を見守っていた。
対戦相手は二人。大盾を構えた戦士と、弓を持つ射手。戦士は巨体で、盾は人の背丈ほどもある鉄製。射手はしなやかな体躯で、矢筒には鋭い矢がぎっしりと詰まっていた。二人は長年の経験を持ち、互いの動きを熟知している。
戦士は盾を前に構え、じりじりと間合いを詰める。盾の裏からは鋭い槍が突き出され、ユートの動きを封じようとする。射手は後方に位置し、戦士の影に隠れながら矢を放つ。矢は盾の隙間から飛び出し、ユートの肩や脚を正確に狙う。
ユートは二刀を構え、戦士の盾に斬撃を浴びせる。暁光剣の速さで隙を突き、黎明の剣の重さで盾を揺さぶる。しかし戦士は熟練の技で受け止め、盾を巧みに動かして攻撃を逸らす。矢が飛ぶたびにユートは身を翻し、剣で弾き返す。剣戟の音が響き渡り、火花が散る。
ミナは後方で精霊を呼び出す。風の精霊が矢の軌道を逸らし、光の精霊が射手の視界を奪う。射手は一瞬の隙を突かれ、矢を外す。ユートはその隙に間合いを詰め、戦士の盾の隙間を突いて斬撃を浴びせた。戦士は後退し、射手も矢を放つ余裕を失った。
審査員は驚きの声を上げた。
「11歳でこれほどの連携……信じられない。」
◇
次の課題は実戦。王都近郊の森に現れた「岩甲獣」と呼ばれる中型魔物の討伐だった。全身を岩の甲殻で覆い、突進力は凄まじい。
森は鬱蒼と茂り、木々の間から差し込む光は薄暗い。鳥の声は途絶え、空気は重く張り詰めていた。地面には獣の足跡が残り、折れた枝が散乱している。緊張感が漂い、ユートとミナは息を潜めて進んだ。
岩甲獣が姿を現した瞬間、地面が揺れるほどの咆哮が響いた。巨体は人の二倍、甲殻は鋼のように硬い。突進は雷のように速く、木々をなぎ倒す勢いだった。ユートは二刀を構え、正面から突進してくる岩甲獣を受け止める。だが力は圧倒的で、押し返されそうになる。
「ユート、弱点は脚の関節!」
ミナが叫び、炎の精霊を呼び出す。炎が岩甲獣の脚を包み、熱で岩が割れた。隙間が生まれた瞬間、ユートは二刀を交差させて斬り込む。鋭い斬撃が岩甲獣の脚を裂き、巨体が地面に崩れ落ちた。
森に静寂が戻り、鳥の声が再び響いた。討伐は成功。依頼主から感謝され、ギルドに報告が届いた。審査員は記録を取り、二人の実力を高く評価した。
◇
最後は筆記試験。魔物の生態、遺跡の構造、罠の種類などを問う問題が並んでいた。
問題例:
「岩甲獣の弱点はどこか」
「古代遺跡に多い罠の種類を三つ挙げよ」
「精霊魔法を複数同時に制御する際の注意点は何か」
ユートは戦闘経験から答えを導いた。
「岩甲獣の弱点は脚の関節。突進を止めるにはそこを狙うべきだ。」
ミナは精霊との契約で得た知識を活かして解答した。
「古代遺跡には矢の罠、落とし穴、魔力封印の罠が多い。精霊魔法を複数同時に制御する際は、魔力の流れを分散させず、均衡を保つことが重要。」
結果は合格。二人の知識は実戦に裏打ちされており、審査員も高く評価した。
◇
ギルドのホールで、受付嬢が二人に新しいカードを手渡した。
「ユートさん、ミナさん。あなた方は正式に Dランク冒険者へ昇格です。」
カードは銀から淡い金色に変わり、二人の名前の横に「Dランク」と刻まれていた。
ユートは拳を握りしめ、ミナと顔を見合わせた。
「これでやっと一人前の冒険者だ。」
「うん。次はもっと大きな依頼に挑めるね。」
ギルドの仲間たちも拍手を送り、二人の昇格を祝った。
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