21.新しい武器
短めです
フロスト・オーガを倒してから数日。ユートは屋敷で稽古を続けていたが、壊れた剣の残骸が目に入るたびに胸が重くなる。そんな時、頭の奥にミナの声が響いた。
『ユート、剣はもう使えないんでしょ?』
『ああ。新しい武器を探さないとな。……鍛冶屋へ行こうと思うんだ。執事のカストルも一緒に来てくれる。』
『いいね!私も行く。ついでに杖も新しくしたいと思ってたの。』
『じゃあ決まりだ。数日後、王都で会おう。』
二人の声が重なり、再び約束が交わされた。
◇
数日後。王都の街並みは活気に満ち、商人たちの声が響いていた。ユートと執事カストルは屋敷から馬車で街へ向かい、鍛冶屋の前でミナと合流する。
「ユート!」
ミナが駆け寄り、笑顔を見せる。
「来てくれてありがとう。今日は三人で武器探しだね。」
カストルは落ち着いた声で言った。
「ユート様、ミナお嬢様。必ず良き武器を見つけましょう。」
鍛冶屋の扉を開けると、炉の炎が赤々と燃え、槌を振るう音が響いていた。壁には大小様々な剣や杖が並び、光を反射して輝いている。
◇
ユートは一本一本の剣を手に取り、重さやバランスを確かめる。だが、どれも「これだ」と思えるものではなかった。
「うーん……悪くはないけど、しっくり来ないな。」
ミナは横で見守りながら、時折剣を手に取ってユートに渡す。
「この剣はどう?少し軽いけど、速さを活かせそう。」
ユートは試しに振ってみるが、首を横に振った。
「軽すぎるかな。俺には合わないかも。」
カストルは静かに棚の奥を指差した。
「ユート様、こちらはいかがでしょう。炎と光を通すことを前提に鍛えられた剣だそうです。」
ユートはその剣を手に取った。重さは程よく、握った瞬間に手に馴染む感覚があった。刃は鋭く、鍛冶師の技が光っている。
「……これは。」
彼は剣を振り抜き、空気を裂く音を聞いた。炎と光の残滓が刃に映り込むような錯覚が走り、胸が高鳴る。
「ユート、それだよ!」
ミナが目を輝かせる。
ユートは深く頷いた。
「よし、この剣に決めよう。」
「ユート様、剣に名前を付けたほうがよろしいかもしれません。すると、少し剣が扱いやすくなるという話を聞いたことがあります。」
「わかった。」
《暁光剣》 ――夜明けの光と炎を象徴する剣。二人の「光炎斬」にちなんだ名だった。
◇
鍛冶屋の奥には、剣だけでなく魔法の杖も並んでいた。壁一面に大小様々な杖が掛けられ、材質も形も多種多様だ。黒檀のように重厚なもの、白銀で装飾されたもの、宝石を埋め込んだ華やかなもの――それぞれが独自の魔力を放っている。
ミナは一歩一歩、棚を見て回りながら手を伸ばした。
「うーん……どれも綺麗だけど、私に合うかどうかは別問題ね。」
彼女は一本の杖を手に取った。黒い木材に赤い宝石が埋め込まれている。握ると魔力が強く反応し、炎の精霊が呼び起こされるような感覚があった。
「これは……力強いけど、ちょっと荒々しい感じ。」
ユートが横から覗き込み、軽く笑った。
「ミナには少し攻撃的すぎるかもな。もっとバランスの取れた杖の方がいい。」
次にミナは白銀の杖を手に取った。先端には透明な水晶が輝き、握ると魔力が穏やかに流れ込んでくる。精霊との契約が自然に強まるような感覚があり、彼女の心が落ち着いた。
「これは……すごく安定してる。精霊が近くにいるみたい。」
カストルが静かに頷いた。
「ミナお嬢様にふさわしいのは、力を暴走させず、精霊との絆を深める杖でしょう。」
ミナはさらに奥へ進み、青い宝石が埋め込まれた杖を手に取った。握った瞬間、冷たい魔力が流れ込み、氷の精霊が呼び起こされるような感覚が広がる。
「これも悪くないけど……私には少し冷たすぎるかな。」
ユートは横で見守りながら言った。
「ミナの魔法は光と炎が中心だ。氷よりも、もっと温かみのある杖が合うと思う。」
ミナはしばらく悩み、再び白銀の杖に視線を戻した。水晶が朝の光を受けて輝き、まるで彼女自身の魔力を映しているかのようだった。
「……やっぱり、これがいい。」
彼女は白銀の杖をしっかりと握り、深く息を吸い込んだ。魔力が滑らかに流れ、精霊との契約が強まる感覚が確かにあった。
ユートは満足げに頷いた。
「いい選択だ。これなら、光炎斬の時ももっと安定して力を合わせられる。」
「《白銀杖》と名付けるわ」
カストルも微笑み、静かに言った。
「《白銀杖》――その名にふさわしい輝きです。お嬢様の魔力を支えるに相応しいでしょう。」
ミナは杖を胸に抱き、嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう、ユート。ありがとう、カストル。これで私も、もっと強くなれる。」
――こうしてユートは《暁光剣》を、ミナは《白銀杖》を手に入れた。二人の新しい武器は、次なる冒険への準備を整え、二人の心に確かな期待を灯していた。
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