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0.転生

R-15は保険でかけさせていただきました


——気がついたとき、俺は真っ白な空間にいた。

そこは空も地面も曖昧で、光の薄い霧が世界の境界を白くぼかしている。生暖かい風が頬をなで、どこか現実離れした静けさが満ちていた。


「ほっほっ。やっと目を覚ましたかの」


 穏やかな声に振り向くと、長い白髭をゆらして笑う老人が立っていた。光の粒が漂うローブをまとい、杖の先には青い宝玉が輝いている。威厳ある姿なのに、雰囲気は妙にゆるい。


「え、あの……おじいさんは?」


「ふぉっふぉ。まあ普通はそう聞くわな。儂は神じゃよ、人間」


「神……?」


「そうじゃ。お主はさっき、トラックに跳ねられてのう。実に見事な吹っ飛びっぷりじゃったぞ。儂も久々にみたわ、あんな綺麗な放物線は」


「いや褒めるとこじゃないですよね!?」


 思わず怒鳴ると、老人はケラケラと肩を揺らして笑った。


「まあまあ落ち着け。お主は確かに死んでおる。しかしここで終わりではない。儂は“転生”の機会を与えようと思っておってな」


「転生……本当ですか?」


「うむ。異世界じゃ。魔王がおって、魔法が存在し、人間も魔族もおる。お主らが好む王道じゃよ」


 胸が高鳴った。異世界。魔法。魔王。それだけでワクワクが止まらない。


「ところで、お主の名は?」


「あ、そうだ……自己紹介してませんでしたね。

俺は 篠原しのはら 優灯ゆうと。普通の高校生で……まあ、唯一の特技といえばガチャ運がちょっといいくらいです」


「ほぉ……“”の字か」


 神様が一瞬、意味深に目を細めた。その表情はすぐに消え、何事もなかったように戻る。


「どうかしました?」


「いやいや、気にするな。ふぉっふぉ……面白い名じゃな。“灯”は時に世界を照らす光にもなる。

……まあ、お主にその気があるかどうかは別じゃがの」


「は、はあ?」


 老人の含みのある言い方に首をかしげていると、彼は手を叩いた。


「では本題じゃ。お主には転生の機会を与えようと思うておる——異世界にな」


 来た。異世界転生のお約束だ。


「特典も授けよう」


「特典とは、スキルとかの……?」


「そうじゃが、儂としてはもう少し遊び心のあるものを渡したいんじゃよ。お主、スマホゲームのガチャが好きじゃったろう?」


「えっ、なんで知って……って神様だからか」


「ふぉっふぉ。当然じゃ。そこでじゃ」


 老人は杖を掲げた。すると空間に巨大な魔法陣が展開し、黄金の光が迸った。


「お主には——“ガチャ”というスキルを与える」


「…………え?」


「なんじゃその顔は。喜べ、これは儂の自信作じゃぞ」


「ガチャを……スキルに?」


「そうじゃ。“ガチャ”をいつでも引けるスキルじゃ」


 老人の杖が床を軽く叩くと、視界の端に半透明のウィンドウが表示された。


■【固有スキル:ガチャ】

内容

・任意のタイミングで“ガチャ”を引ける。

・ガチャからはアイテム・装備・スキルなどが排出される。

・レア度は【R・SR・SSR・UR】の四段階。もっと上があるかも…?

・一日一回、無料で“1連ガチャ”が可能。

・無料の“1連ガチャ”を貯めて、"10連ガチャ"を引くこともできる。

・ガチャの中身は完全ランダムだが、使用者の成長と世界の状況に応じて確率が“揺らぐ”。

・魔物などを倒すことで手に入る魔石を使うことでも、ガチャを引ける。


「……これ、めちゃくちゃすごくないですか?」


「うむ。儂の中でも傑作じゃな。お主、ガチャで運を試すのが好きじゃろ?」


「そりゃ好きですけど……いや、好きでしたけど……!」


「ならば丁度よい。お主の人生、いや転生後の冒険そのものが“ガチャ”じゃ。運を味方につけて生きてゆけ」


 老人は目を細め、どこか楽しそうに俺を見ていた。


「では、せっかくじゃし転生前に一度、10連を引いてみるかの?」


「もちろんです!」


 胸が高ぶる。ガチャ好きの魂が震える。


「ではここに“引く”と唱えよ」

「引く!」


 ——ドウゥンッ!!

 空間に光の柱が立ち上がり、虹色の粒が舞った。完全にソシャゲの演出そのものだ。


ー------------------ー

◆ 初回10連ガチャ結果 ◆

①【SR】スキル《高速詠唱》

内容: 魔法の詠唱時間を半分に短縮する。

②【R】装備《魔力増幅の指輪》

内容: 魔法攻撃力+10%。

③【SSR】スキル《マナ・ストック極》

内容: 魔力の最大容量が本来の五倍になる。

④【R】アイテム《魔法触媒の欠片》

内容: 一度だけ魔法成功率+50%。

⑤【SR】スキル《圧縮魔法術》

内容: 魔力の密度を高め、威力を増幅できる。

⑥【SSR】アイテム《永劫の魔導書》

内容: 一度だけ好きな魔法を習得可能。

⑦【R】装備《初心者魔導ローブ》

内容: 防御は低いが魔力回復速度+10%。

⑧【SR】アイテム《古代魔導書の切れ端》

内容: 使用するとランダムで古代魔法を覚える。

⑨【SSR】装備《星霜の魔導杖》

内容: 魔力の流れを整え、魔法威力を大幅上昇。

⑩【UR】スキル《魔法創造》

内容: 世界法則の範囲内で新魔法を創造する究極スキル。

ー------------------ー


「うおお……UR出た……!」


「ふぉっふぉ。幸先が良いのう」


「え、これってめちゃくちゃ強いんじゃ……?」


「強い。強すぎるほど強い。儂としても出すつもりはなかったのじゃが……運よのう?」


「運……すごっ」


「きっと、お主のこれからが波乱に満ちておるということじゃろう」


「不吉なこと言わないでくださいよ!」


 老神はただニヤニヤしている。どうやらこの神様、こういう茶化しが好きらしい。


「さて。本題じゃ」


 老人は杖で空間を指し示す。白い世界にひとつの巨大な地図が浮かび上がった。


「お主が転生する世界の名は“エルディアス”。魔王が存在し、人族と魔族の戦争が続いとる。ただし、勇者はまだいない。お主がどう動くかは全て自由じゃ」


「魔王を倒す・倒さないも?」


「うむ。お主次第じゃ」


「俺は……まず魔法を極めてみたい気がしますね」


「うむ、それがよい。魔法を好む者は伸びる。ガチャを使いこなし、好きに生きよ」


 神様はふっと目を細めた。


「最後にひとつだけ忠告しておく。お主の“ガチャ”のスキル——それは世界の理にも影響を与える。

ゆえに、味方も敵も、お主に注目するじゃろう」


「注目されるのは苦手なんだけど……」


「ふぉっふぉ、まあ気にするな。時には運が道を切り開くものじゃよ」


 老人は杖を軽く叩いた。眩い光が俺の体を包み込む。


「では行ってまいれ——新たな世界へ。お主のガチャ運が、良き未来を引き当てんことを祈っておる」


「はい!」


 光が視界を真っ白に染めた。胸の奥で何かが脈を打つように熱く、強く高まっていく。


 ——こうして俺は、ガチャというチートを携え、“魔王のいる世界”エルディアスへと転生することになった。

 後に“最強の魔法使い”と呼ばれることになるとは、このときの俺はまだ知らない。


初投稿!

学生なのに下書きもなく勢いで始めてしまったので、頑張ります!誤字報告や、「これはおかしいだろ」のような意見でもいいので感想を書いていただけると嬉しいです!

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