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墓地の前

作者: ツヨシ

小さいころ、お墓が怖かった。

なぜ怖いのかと聞かれても、よくはわからない。

ただひたすら怖いのだ。

とはいってもお墓に行くのはお盆の時くらい。

お墓も少し離れた場所にある。

だからそれほどは気にしていなかった。

そんな折、一家で引っ越しが決まった。

お父さんの仕事の都合だそうだ。

少し離れているがそれほど遠くはないところと聞いていた。

お父さんとお母さん、それに僕とおばあちゃんまで一緒になって、引っ越しを手伝った。

そして新しいマンションに向かった。

引っ越し先がそのマンションだと知り、びっくりした。

お墓詣りの時にいつも見ていたマンション。

こんなところには住みたくはないなと毎回思っていたマンション。

引っ越し先はそこだった。

つまりマンションの目の前に墓地があるのだ。

毎年お墓参りに行っていた墓地が。

部屋に入ってさらに絶望した。

一番大きな窓から墓地がばっちり見えるのだ。

――なんでこんなところに……。

と言っても今更どうしようもない。

僕はマンションの部屋にいるとき、できる限り外を見ないようにして過ごした。

それはもう不自然なほどの動きを伴って。

お父さんとお母さんはそれでも全く気が付かなかったが、おばあちゃんは気づいた。

「お墓、怖いよね。でも我慢しな。もうじき怖くなくなるから」

そう言った。もうじき怖くなくなるという意味は分からなかったが。


引っ越してきて数か月が経ったころ、ばあちゃんが突然倒れた。

心臓の病気だそうだ。

入院、そして手術。

しかし家族の想いは届かなかった。数日後に、ばあちゃんは亡くなった。

葬式も終わり、少し落ち着いたとき、僕は気づいた。

ふと目に入った墓地が、少しも怖くないのだ。

僕は墓地を見た。

両の目でしっかりと。

そして思った。

ああ、あそこに今、ばあちゃんがいるんだな、と。



       終

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― 新着の感想 ―
感涙!(T_T)。お祖母ちゃんは死期を予期していたのですね。そして孫を墓地から守ってくれてますのね。 感涙(> <。); お彼岸にぴったりの作品でしたね(ノ≧∀≦)ノ しかし笑いがこみあげます┐…
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