第9話:別世界
鹿児島から船で1時間もかからず、私は種子島の発車ステーションに到着した。
そして、私は島の様子を見て、唖然とした。
そこはまさに法の外側といった雰囲気の場所だった。
港を出ると、《ほしくず》の施設が建てられていて、元々の島の自然も景観も見事に破壊していた。
我が物顔で立つ建物の足元には、スプレー缶で無数の落書きがある。
色も描かれ方も様々で、きっとたくさんの自殺志願者によって描かれたのだろう。
たくさんの色が混ざり、どす黒くなって、なんだか嫌な感じだ。
ロケットの排煙のせいか、酷く息苦しい。
私の五感に、この島は無数に攻撃を仕掛けてきた。
まるで、この島全体で、私を追い出そうとしているようだった。
肺に島の空気が流れ込んでくる。
やめろ、気持ち悪いと、体が反射的に拒絶反応を起こす。
携帯で地図を開こうとしたが、電波が繋がらない。
吐き気を催しながら、どこへ行こうかと思っていると
「ようこそ」
背後から声がした。
振り返ると、位の高そうな男が、張り付けたような笑顔で語りかけてきた。
その顔に、以前あった役員と同じ感覚を覚える。
なぜこうも不気味なのだろうか。
「ご案内します」
そう言われ付いて行くと、質素な待機所が見えてきた。
恐る恐る中に入ると、ベッドが置いてあるのみで、とても無機質で、殺風景な場所だった。
時計すらないのがなんだかいやらしい。
ただ、広めの窓があり、開放感はなんとかある感じだ。
ここで後2日かぁ。
また少し気持ちが落ち込んでしまったので、さっさとお風呂に…あれ?
見渡すと、この部屋には出入り口以外に扉はない。
まさか、お風呂もない?
流石に、対応が雑すぎやしないだろうか。
私はますます怒りが込み上げた。
が、この部屋にはベッドしか無いし、他にすることもない。
ここまできて、私はここで眠るしか選択肢が残されていなかったのだ。
ベッドの中で考える。
どうしてこうも見掛け倒しなプロジェクトなのだろうか。
貼り付けられた笑顔に似て、中身はこんなものか。
もしかしたら、ロケットに乗る日も雑な対応をされてしまうかも知れない。
それなのに、不安が拭えるだろうと思って、先に招待してきている。
ますますよく分からない。
まあそれも、明日の18:00には分かることだ。
不安を未来の自分に丸投げし、私は何とか眠りについた。
嫌に静かな、この部屋の空気に包まれながら。
第9話:別世界 終
お読みいただきありがとうございました!
もうめんどくさいんで、前書き書くのやめます!
ていうか邪魔くさいんで、今までの前書きも消しちゃいます!
ということで、第10話もお楽しみに!
[期待の大型新人]でした!