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第6話:罪と罰の使い道



夜に福岡へ着いた私は、適当な宿に泊まって、翌日は街をぶらついてみることにした。

観光でもしてみようかと思ったが、福岡の名所などほとんど知らない。

携帯の充電を節約しながら太宰府のあたりを歩き、名前も知らない神社をいくつか回ってみる。


——そこで気づいた。私は、もともと観光なんて興味がなかったのだ。

写真を撮っても、美味しいものを食べても、胸は動かない。

演出された景色や料理なんか、宇宙の神秘には到底かなわない。

それに、食べ物なんて腹を満たせればそれでいい。

どうして人は、こんなものをありがたがって土地を渡り歩くのか。

「宇宙を観光した方が、よっぽど意味がある」

そう捻くれたことを考えながら、私はダラダラと観光した。


夜になり、観光にも飽きて、適当な店に入りお腹いっぱい食べることにした。

お酒と一緒にフルコースをたいらげる。

けれど酔いが回るにつれて味も曖昧になり、腹が満たされるほど虚しさが増していく。

もう食べられなさそうだし、そろそろ会計をしよう。

そう思って立ち上がった私に、ふとこんな考えが浮かんだ。


「食い逃げ…してみようか」


そもそも、500万円を支払っている私は、さほど所持金を持っていなかった。

支払えない金額ではなかったが、私の常識で考えると、今日の夕食はとても高い。

それに、私はもうすぐ死ぬ。

どうせなら今までやったことないような、それこそこうゆう罪を犯してみたい。

きっと、これから罪を犯しても、罰は受けないだろう。

というか、私の行く末は死刑みたいなものだし。

きっと、一回の料理代くらい、払わなくても世界は揺るがないだろう。

——やってしまおうか。

そこまで思った所で、私は自分の酔った頭の中の考えに寒気が走った。

——私は、なんてくだらないことを考えているんだ。

もちろん、私はもうすぐいなくなる。

でも、だからといってこれからを生きる他人の足を引っ張る理由にはならない。

ダメだ、ちゃんと払おう。

そして私は素直に会計を済ませ、よろよろと宿へ戻った。


頭が痛い。胸も苦しい。

理由のわからない苛立ちだけが残り、布団に潜り込む。

……私は、自分のことを知らなすぎる。体も、心も。

私に残された時間は短い。

だからこそ、自分を知るために使おう。

——そう、私は決心した。


第6話:罪と罰の使い道 終

お読みいただきありがとうございます!


いま、なんとなく別のプロットも考えてるので、いつか投稿するかもです!


第7話もお楽しみに!


[期待の大型新人]でした!

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