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大英雄の大罪人  作者: 親の顔よりみた小指
第七幕 不良品のドールハウス
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第九十三話 奢侈淫佚を知らぬ身体

 富士山には何かが隠されている。それも恐らく能力の核心に至るであろう物。その情報について、全く予想がつかなかった。

 

 そんな事を考えながら俺は一人で関西都市群を散歩していた。実際に富士山……旧日本へと行くのは三日後、先生の都合により俺達四人には三日の自由時間が与えられていた。


「ここ……どこだ?」

辺りを見回すと見慣れない建物が立ち並んでいる。

「随分と遠くに来ちまったかな………あれは……霊園か?」

辺りの建物を見ていると公園の様に開けた場所を見つけた。近くに置いてある看板からすると能力災害による死者が眠る場所との事だった。


 何に導かれたのか俺の足は自然と霊園の方へと動いていた。そして、俺の瞳は霊園にいた一人の少女の姿を捉えた。


「あら、まだこの場所を訪れる人間が居るとは」

少女がこちらに気付いたのか話しかけて来た。先程までは少女一人かと思っていたが、大柄で黒いスーツに身を包んだ男と金髪の小柄の少女の二人組だった。


「この辺りには初めて来たんだ。ここに霊園があるなんてのも初めて知った」

「あら、そうだったの」

少女は何か含みのある笑みを浮かべる。


「………えっ! あなた、それ義手でしょ!」

突然少女が俺の右手を握ってくる。

「……よく分かったな。かなり本物に近い筈なんだけど」

「ホントよ! 何この精度、クオリティ! 美しい、美しいわ! 無駄のない形に人智を超えた加工技術! はぁー誰が作ったのかしら。一度でいいから製作者と話して見たいなぁ」

「そ、そうか」


 乃亜の能力で俺の身体に合わせて作った特注の義手。彼女は義手……いや、機械が好きなのか? こうも褒められるとは、そしてこうもすぐに気づかれるとは思わなかった。


「そ、それじゃあそろそろ俺は帰るよ」

彼女の豹変ぶりにあまり関わらない様にしようと思い俺は帰る意思を見せた。

「……コホン、悪かったわね。機械弄りが趣味でね、少し出しゃばりすぎたわ」

 少女は顔を赤らめながら姿勢を正す。


「せっかくの縁よ。私達と共にこの霊園でも見ていかないかしら?」

少女はお嬢様と呼べる様な風格を取り戻し、共に行動する事を申し出て来た。

「………暫くは暇だから構わないぞ。俺は光、そっちの名前は?」


 自身の名前を告げた後、少女が笑みを浮かべて口を開く。

「そうね………クークラなんてのはどうかしら」

「どうかしらって………自分の名前だろ?」

まあ現に俺も偽名を使っているわけだが。


 自分をクークラと名乗る少女は、黒いスーツの男に日傘を差させて霊園の奥へと進んで行く。

「な、なぁ。そっちのスーツの人は?」

俺が疑問をぶつけると、

「ああ、忘れてたわ。触ってみれば貴方の疑問は解けるんじゃないかしら?」

と答える。


 俺はスーツの男を手で触ってみる。

「………なっ! クークラ、これって」

「どうかしら? 理解した?」

男は完全なる人間そのものであり、瞬き、呼吸と生きた人間と全く同じ動きをしていた。

 唯一の違いとすれば、体温が無く冷たいことだった。肌の様に見える物はゴム製であり、中身は完全に金属そのものであった。


「そうね………名を与えるとするなら………パペットなんかは如何?」

パペットと名付けられたスーツの人形とクークラ。謎の二人組は霊園の奥へと進んで行く。

 俺は不気味な二人の背中を眺め、何が起きても大丈夫なよう備えながら二人に着いて行くことにした。



「ねぇ、光君? 能力災害って嫌だと思わない? 私にとっては人類史上最悪の出来事よ」

霊園の奥まで進んだ時、突然クークラが話しかけて来た。

「………そうだな。あれは酷い事故だったよ」

 俺は慎重にクークラの問いに答える。爆心地にいた当事者だなんて悟られる訳にはいかない。


「ホントよね。アレのせいで能力者も相当数が死んだ。この霊園にもかなりの数能力者が眠っている。ほんっと勿体無いことだよ」

"勿体無い"という言葉に引っ掛かりを覚える。

 

「そうだな…………なぁ、勿体無いってどんな意味なんだ?」

「ああ、それはね……この手で解剖してみたかったってことだよ。光君」

 クークラがその言葉を言い終わった後、場の空気が変わった。

 最悪だ……クークラは能力の研究者だった。いや、それだけじゃない。この威圧感に存在感。過去に二度同じ様な体験をしたことがある。

 

「…………β」

「へぇ、知ってるんだ」

 βの名を出した途端に、クークラが一気に殺意を放つ様になった。

 

「どこから情報を得たのかな? それよりも、光君もさ、能力者でしょ? 気配で分かるよ、とても澄んだ純粋な気配を持っている。………是非解剖させてくれないかな?」

クークラは不適な笑みを浮かべ続ける。

「一応聞かせて欲しいんだが、俺とお前が遭遇したのは仕組まれていたことなのか?」

「まさか、私が用があるのは霊園の方で、全部偶然。………私も驚いたんだよ。私の前に能力者がノコノコやって来てくれたんだ。神に感謝だね」


「クークラ………本当に戦うんだな?」

「もう、回りくどい! 変に名前だなんてキャラ付けするんじゃなかった! 私はβの序列八位、人形だよ。クークラでも人形でも光君の好きなように呼ぶといいよ」

 人形………こんな場所で偶然遭遇するとは。バルバトスからの情報で天華に拷問紛いの実験を繰り返していた張本人だと掴めている。


「クークラ……ここで潰す!」

「あっそ、クークラの方で呼ぶんだ。まあどうでもいいか。じゃ、"光君の相手をするのよ"パペット」

 パペットの目の色が黒から赤に変わり機体の節々からキューンと甲高い音が響き渡る。


 パペットは先程までのスーツの男とは全くの別物。4本腕の異形へと変貌してこちらへと歩みを進めていた。

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