第八十六話 終結へと進む能力鍛錬
「技……か。多分私の能力だと必殺技は無理だなぁ」
奏との会話を終え、再び能力を鍛えようとする美蘭だったが大きな壁に突き当たっていた。
「もう木相手の練習にも飽きてきたし……人相手にどの程度能力が使えるのかも分からないし………どうしよ」
途方に暮れた美蘭は上を見上げる。
「あ………相手、いるじゃん」
美蘭は空に向け掌を向ける。
「…………来い」
と美蘭が呟いた後、大きく鳴り響く音と共に一つの人影が姿を現す。
「イテテっ………何だ美蘭。もうリベンジか?」
「やっぱ飛んでたんだね。爺さん……いや、天城さん、相手になってよ」
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「美蘭……これで何度目だ?もう日が出てきそうだぜ?」
「はぁ、はぁ、もうちょい。もうちょいで何か掴めそうなんだよ!」
能力の効果を実践で検証する。そのために美蘭は天城に挑み、倒されては立ち上がり、倒されては立ち上がりを繰り返して半日程が経過していた。
「美蘭、奏はどうした?連れてくれば良いだろうに」
「ダメ……これは私の練習なんだから。………それに奏は私より能力使うの上手いし。巻き込めないでしょ!」
「……俺は巻き込んでも良いのな」
「だって爺さんそもそも敵じゃん! はぁ、はぁ、もう一回やるよ!」
「………辞めだ。美蘭、今は休め。俺が決めた期間はあと二日あるんだ。今は終わりにしろ」
「なっ、何でだよ! もうちょいだって言ってんだろ!」
「落ち着け、美蘭。………能力ってモンは体力を犠牲にして人智を超えた力を引き出すんだよ。息も絶え絶えな今のテメェはこれ以上能力を使うと危険だ」
戦い始めてから試すような態度だった天城だが、真剣な面持ちで話し始める。
「危険って、はぁ、何が?」
「美蘭……体力が限界の時に能力を使うと、寿命を削ることになるぞ?」
「なっ……寿命?そんな情報どこにも……」
「能力に関しては色々と詳しいんだよ、俺はな」
「詳しいって……爺さん、一体何者なの?」
初めて会った時からそうだ。神話種なんて概念を知っていたり、この人だけ異様に能力を使いこなしていた。
能力なんて力がこの世に現れてまだ十年しか経っていないのに……この爺さんは異常だ。
「爺さん……アンタの情報源は何?」
「知りたいか?美蘭」
「お、教えてよ」
そして、天城は一拍置いて、
「………嫌だね。テメェみたいなガキには俺が死ぬまで教えねーよ」
「なっ! 誰がガキだ! このジジイ、期待だけさせやがって」
「そんじゃあな。また明日だ美蘭」
そう言って天城は翼を広げて飛び立ってしまった。
「クソッ………はぁ、早く休も」
「ふあぁ、爺さんが居なくなって気が抜けちゃった。めっちゃ眠い」
美蘭は欠伸を繰り返しながら練習に使っていた樹木の元へと戻る。
「……あ、奏だ。かなでー、眠いよー」
美蘭は奏の上に覆い被さり、直ぐに眠りにつく。そんな光景を上空から眺めながら、
「やっぱガキじゃねーか。…………俺が死ぬまで……か。ちゃんと全部教えてやるよ。その時が来たらな、美蘭」
と天城は言うのだった。
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「うぅ……ん。おも……い」
数時間が経ち、奏は目を覚ます。
「って、姉貴?何して、何で抱きついてるんだよ!」
「んん……もっと寝てたい………おやすみ」
「おい! 姉貴! あと二日しか無いんだぞ?寝てる場合かよ!」
「もう………起きる気がないならこっちにだって策があるんだからな」
そう言って奏は手を美蘭のみぞおちに近づける。
「ゆっくり……優しく、発動」
「あぁぁっ、痛ぁあ! 何?何が起きて………奏か」
「やっと起きたか……面倒な姉だな、全く」
奏は美蘭に対してデコピン程度の刺激を波動で与え続けていた。
「奏! ここ痣残ってるんだけど! めっちゃ痛い! もっと優しく起こしてよ………うわ、痣のとこ酷くなってるし……最悪」
「えっ、ごめん。全然知らなかった。でも姉貴だって全く起きなかった癖に……いでっ!」
この騒動は奏が一発頭を叩かれたことにより決着した。
「さて……奏。あと二日って言ったよね」
「え……起きてたのか?言ったけどさ」
「二日も掛けない。あの爺さんとの戦いは今日で決着をつける!」
と美蘭は自信満々に言う。
「え……でも姉貴、能力は?」
「もう大丈夫。私は睡眠を取ったことにより体力は完全回復してるからね! さて、覚悟してなよ爺さん」
そうして美蘭は掌を再び空へと向けたのだった。




