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大英雄の大罪人  作者: 親の顔よりみた小指
第六幕 邂逅・永逝につき
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第八十二話 居候の海上旅行

「……もうそろそろ始めるか」

 天城が如月家に住み始めてから数日が経過した。厳密に言えばただの居候であるのだが。

 

「爺さん……始めるって……鍛練をか?」

「テメェ等が強くなれば俺にも利がある。……頼むからちゃんと取り組んでくれよ?」

 天城は数日間寝転んでばかりだった重い腰をようやく上げた。


「それで、天城さん。場所は?東京なんか戦うほど広い場所なんてどこにも無いよ?」

「そうだな奏。だが、都市で戦う筈もねェだろ?」

 天城は一拍置いてから話を続ける。

「お前達がこれから行く場所は"南鳥島"だ」


________________________


「うっぷ、あ、あのさ、天城さん。もう少しゆっくり丁寧に飛んで?」

 天城は、二人を抱えて海上を飛行していた。高波や鳥との衝突をギリギリで避け、蛇行を続けていた。


「これ以上遅く飛んでたら島に着く前に日が暮れちまうだろうが」

「うぅ、爺さん、こんな飛び方してたら、酔っちゃうって、うゔっ」

「………はぁ……こんな時だけ団結かよ」

 天城は空中で止まり、休息を取りながら再び加速を再開する。



「はぁ、はぁ、死ぬかと思った。ゔっ」

 南鳥島、東京都に所属する日本の最東端。そんな場所に膝から崩れ落ち、口元を押さえる二人の人影があった。


「あ、姉貴。大丈夫か?天城さんの飛び方滅茶苦茶だったよ。……少し休んでても良いんだぞ?」

「だ、大丈夫。アンタもでしょ、奏。期限もあるから休んでられない」

 砂浜の上で二人は会話を交わす。


「それじゃあ、行こうか」

「ああ、姉貴」


 天城から告げられた目的、それはたった一つ。天城が首から下げている球を奪う事。協力しようが、能力を使おうが全て自由。期間は三日間である。


「ちゃんとついて来てね?奏」

「任せろ姉貴。ここまでついて来たのなら足手纏いになりたくない」

 美蘭と奏は島の中心部へと進んで行く。


________________________


 歩み始めた二人の姿を上空から眺める男が一人。

「……ガキ相手ならまずは能力の知覚からさせるべきだったかなぁ」

 

 

 人を鍛えるなんてモンは初めての経験だから……少し段階を端折りすぎたか?


 珍しく天城が色々と思考を巡らせていると、

「やっと見つけた。奏、やって!」

と言う会話が薄らと聞こえてくる。


________________________


「はぁ、はぁ、どこにも居ない! 何なのあの爺さん。逃げ足早すぎる」

「天城さんってば、そんなに奪われたくないのか?」

「散々ガキって言ってたんだし負けたくないんでしょ、きっと」

 二人はそんな事を話しながら島の周りを殆ど一周していたのだが、天城との接敵は一度も無かった。


「もしかして……あれか?」

 奏は空を見上げながらボソリと呟き、声に釣られ美蘭も辺りを見回す。

「……爺さん、空は流石に卑怯だよ。……やっと見つけた。奏、やって! 爺さんを上から堕として」


 美蘭は耳を塞ぎ、その場に蹲る。

「姉貴……俺の能力の事、よく覚えてるな。……大声を出すのなんていつぶりだろ。発動」

 そう言い、奏は大きく息を吸うのだった。

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