第七十六話 丹朱が散る
美蘭に弟ができる。そう母親が宣言してから数週間が経った。
『……引き続き、異常気象についてのコーナーです。専門家の意見を踏まえて……』
「良い加減にこの異常気象も落ち着いて欲しいわね。奏だって心配になっちゃうわよねー」
母親は徐々に大きくなって来た自分のお腹に声を掛けていた。
世界各国の首都において異常気象が同時多発的に起きたというニュースは未だ収まる気配が無かった。そればかりか日を跨ぐ度に降水量等、規模は大きくなるばかりだった。
「………っ!ママ!なんかすごいのできた!」
今より三十年前
この頃世界には"超能力者"の様に、人智を越える力を発揮する者達が現れた。
火を出す者もいれば、水を操る者もいる。生き物と心を通わすと言った者も現れた。
斯く言う美蘭もその一人であり、物体を操る超能力が使えていた。
「あら美蘭……今度は机を持ち上げたの?凄いわね!その机はこっちに動かしてねー」
「うん!」
美蘭が超能力に目覚めた。母親は最初こそ驚いたが、次第に慣れて行きこの頃には生活の一部となっていた。
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世界に超能力と呼ばれる物が蔓延ってから半年ほどが経過した。
この日、如月家には重大な出来事が起きる。
「ママ!がんばって!」
「はぁ、はぁ……う、うん……ありがとう美蘭!ママ頑張るからね!」
この会話が、この親子の最後の会話だった。
五時間程が過ぎた頃、分娩室からは大きな、あまりにも大きな産声が聞こえた。
美蘭が部屋の中を見た時、その光景は美蘭の記憶に一生残るであろう地獄であった。
部屋はそこら中が血塗れになっていた。美蘭の目に映ったのは、泣いている赤子とそれに怯える助産師、そして下半身が抉られた自身の母親の姿だった。
これは後々、能力についての研究が進んでから分かった事実なのだが、この時の奏は能力の暴走状態にあった。赤子故か自身の能力である『波動』をコントロール出来ずに、産声に波動が乗ってしまったのだ。
母親はそんな事を知る由もなく、ただ生まれて来る我が子を心待ちにしていた。勿論だが、母親が波動を避ける事など出来るはずもなく直撃。
これが、この事故の全容だった。
その後、美蘭と奏は母親の親戚の元へと引き取られて行った。母親は奇跡的に一命を取り留めるも、植物状態が続く事になる。
「美蘭ちゃん、ご飯食べないとダメよ?」
「ううん、いいよおばちゃん。今たべれない」
美蘭は母親が"ああなって"から家でも学校でも閉じ籠り気味になっていた。
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五年後・今より二十五年前
「美蘭ちゃんって髪キレイだよねー」
「えー?花ちゃんだってキレイだよ?」
「そうかな?ふふっ」
五年の月日が過ぎ、美蘭は明るい性格を取り戻していた。友人との交流もあり、普通の小学生を過ごしていた。
そんな日が続くと思われていたが、再び如月家において重大な出来事が起きる。
美蘭の親戚の家に一本の電話が掛かってくる。
それは美蘭の母親が入院している病院からだった。




