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大英雄の大罪人  作者: 親の顔よりみた小指
第五幕 能力専門高校生
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第七十二話 奇妙な刻

「……よ、よくも!先生を!晶!」

「はぁ、せっかく挑戦者として戦える良い機会だったのだが……貴様が全てを壊してしまった。貴様が如月奏を殺したのだ。不愉快だ。今すぐにでも消えてくれ」

 晶は倒れた如月を氷漬けにしながら凛をあしらった。


「な、何して……」

「ああ、コレか?保存してるんだ。私は強敵の体は氷に閉じ込めておくことにしていてな。こうする事で腐敗を防ぎながら永遠に記憶にある姿で閉じ込めておく事ができる」

「…………は?」


________________________


 怒りが収まらない。コレまで生きて来てここまで怒った事はない。………どうして関わってあまり時間の経ってない先生がやられてこんなに怒ってるんだろう。

「はぁ、はぁ、はぁ」

 呼吸が荒い。怒りの感情からだろうか、身体が震え続けて体温も上がっている気がする。


 その瞬間、パキッと私の胸の中から音がした。私にしか聞こえない音が。

 謎の音が鳴ってから気分が一気に晴れた。先生を殺されたと言うのに………どうしてだろう。高揚感が湧き出て来てる。興奮が止まらない。


「貴様……今何が起きた。……確実に、何かが変わった」

「変わった………そうかな。私は変わってる自信ないんだけど。……アハッ」


 はあぁ、何だろ、気分が良い。頭がスッキリしてる。余計な考えが何も入ってこない。

「さ、始めよ?」

 私は周囲の氷柱を一本折って握る。

「私の氷を?貴様の能力は……一体」

「………これで終わりかな」

 凛は氷柱から溶け出た水を弾丸の様に晶に向けて飛ばす。


「なっ、間に合わなっ」

 ほぼ全ての弾を避けた晶だったが、ギリギリ一発が右足に被弾してしまった。


「あれ?避けちゃった。避けられないと思ったんだけど」

「……貴様。一体何を」

「アハッ、私は私だよ。ただの月島凛。それ以上でも以下でもない。ただの生徒だよ」

 それを聞いた晶は、

「ただの生徒?……教師より強い生徒が居てたまるか」

と顔を顰めながら言った。



 あれ、さっき足に一発当てたんだけど、塞がってる?いや、止血してるのか。まあ良いや。今はただただこの戦いを楽しみたい。

「もう一回……打っても良い?えっと、晶だっけ」

 それを聞いた晶の体は震え始めた。

「クッ、こんな小娘に私は恐怖を抱いてるのか?何の冗談だ。私はβの七位だ。舐めるな!」

 晶は氷柱を形成して放出する。


「………何?これ、遅い」

 あれ、この攻撃が遅いんじゃない。世界がスローになってる。次に取るべき能力のイメージが次々に湧き出してくる。

「何?よ、避けたのか?今の攻撃を?」

「あ、今の攻撃だったんだ。遅すぎて遊んでるのかと思った」

「クソッ、クソッ!月島凛!貴様は必ず氷漬けにして見せる。覚悟しろ」

「アハッ、やってみたら?」



「あのさ、もう満足した?反撃してもいいかな?」

「はぁ、はぁ、何故避けれる。…………この速さを」

「え、だから遅いんだって。遊ばないでよ」

 いつまで遊んでるんだろ。もう攻撃してもいいのかな。

「まずは軽く『水刃』」

「一体何を…………は?」

 晶の右腕が一瞬のうちに切断されていた。あまりにも綺麗な断面で。


「ぐっ、し、止血」

「間に合うかな?次はこっちね」

 そう凛が言い終わると晶は左腕までもが切断されていた。

「いっ……ぐぁああぁぁ、がっ、がえせ。私の腕を返せ!月島凛!」

「あ、名前呼んでくれた。認められたかなぁ。アハッ」

 思ったより弱いのかな、この人。水を一点に集中放出して切断してるだけなんだけど………柔らかいなぁ。


「これさ……つまんないから手加減するねー。もっと頑張って欲しいな?」

「はぁ、はぁ、全く……勝てるイメージが湧かない。貴様は……一体何者だ」

「えー、さっき言ったじゃん。月島凛だよ。それ以上でも以下でもない。ただの……ね」

 凛は最後に笑いを浮かべて見通す様な目で晶の事を見る。


「それじゃ、もうその感知するやつ壊してもいい?」

「はあ?…………感知?」

「あれ?違った?その下の氷だよ。先生の攻撃を完璧にガードしたり、私の水をある程度避けれたのはその氷が感知してるからだと思ったんだけど」

「………何故知ってる?」

「アハッ、今なんか色々見えちゃうんだよねー」


 そう、晶の『氷上の戦』の効果は能力の発動範囲を明確にする以上に役割があった。範囲内に入って来た敵や攻撃を感知すると言うものであり、ほぼ自動的に迎撃する事ができた。そのため、如月の遠距離の波動は氷での迎撃が出来ずに直撃したのだ。


「もう戻って来なくて良いからねー。それじゃバイバイ。楽しかったよ」

 凛は水を大砲の様にサイズを調節し、極限まで圧縮・放出する。

「待て、そんな物飛ばすんじゃなッ!カハッ、ああぁ………死……」

「あちゃー、穴空いちゃったかな?吹き飛ばすだけだったつもりだけど……手加減って難しいなぁ」


 晶は如月の時以上に勢いよく吹き飛ばされる。水の直撃により脇腹には大きく風穴が空いており、ここまでの重傷は同時に晶の終わりを表していた。


________________________


「はあー、疲れた。何かどっと疲れが溜まって……っ!」

 何?急に足が、力が入らなく。……この数分の記憶が朧げだ。一体何が起きたの?

「ゔぐっ、ゔっ、ゴホッ、ゴホッ」

 何?何が起きてるの?肺が痛い。お腹を直接殴られているくらいの痛さが突然襲って来た。

「ゔっ、うオエッ、息がっ、出来なっ」

 ビチャビチャという音が床から響く。

 ああ、もうダメ……意識が…………薄れて。



 凛は氷漬けにされている如月を前に倒れてしまったのだった。

 朧げな記憶の中でも一つはっきりと、晶という強敵を倒したと言う事実だけを胸に留めながら……

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