第七話 衝突
「ふう、兄さん無しでの戦闘は久しぶりだなあ」
「ちょっと暗!本当に良かったの?あいつを逃しちゃって、私達だけで神話種なんて倒せるわけないじゃない!」
「最悪『移動』で逃げるか?暗」
「いや、もう少し僕達だけで足掻いてみましょう」
「「了解」」
久しぶりにこの能力を使うなあ。最近は戦闘が増えてきてるし戦いのカンってやつを戻しておかないとね。
「……発動『防衛』……いくよ?天華」
「…光弓」
もう弓まで作れるのか。この速度で成長していたら将来はかなり強い能力者になるだろうね。
「打ってくるといい、しっかり僕を狙ってね」
「くっ」
さっきはああやって啖呵を切っていたが天華はまだ中学生くらいだろうし自分から人を傷つけるのには慣れてないか。それともまだ天華の中で僕達が敵なのか悩んでるのかな。
「天華、安心して、僕達はそんなにヤワじゃない。全力でくるといい。思う存分相手をしてあげる」
「は、はい」
そして、少し悩んだそぶりを見せながらも天華が弓を引いた。
光弓……確か、相手の能力を貫通しながらダメージを与えてくるんだったかな?ただ、僕の能力なら受けれるはずだ。
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俺は走っていた。相手が神話種となると最終的に能力軽減の指輪が必要になると読んでの行動だ。能力軽減の指輪はその名の通り能力の効果を軽減する。だが旧日本の中部地方にしか存在しない。伝統技術が使われていたことによって制作数は少なく、現在市場に出回ってるものはさらに少ない。
『光』で全力ダッシュ中だが、これでも時間がかかる。
ああ、実際に光の速さで移動ができたらどんなに便利だったか。
俺は自身の能力を悔やみながら走り続けていた。
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光弓の矢は僕に当たった瞬間に折れた。能力を使うのは久しぶりだったから実は内心ヒヤヒヤしてたけど…
「えっ、どうして、私の矢が当たらない」
天華はヤケになってどんどん矢を連発してくる。
だが天華は反応的に『天使』の能力に完全に覚醒したのはつい先程のはずだ。開花したての神話種をそんなに雑に使ったら先に体力が切れるはずだ。
ゲームっぽく言うならば相手のスタミナが切れれば僕の勝ちだ。
「ちょっと暗、どうやって倒すのよ、あんたの能力だと受けれても反撃できないじゃない」
「もうそろそろ勝てるはずだよ、乃亜。多分覚醒したての『天使』だから僕に通る攻撃はないはず」
「あっ力が入らなっ」
天華は浮遊を維持できなくなり地面に落ち失神した。
やっと体力が切れたか。今回はかなり疲れた。
「暗、やるじゃんか、まさかの神話種単独撃破なんてな」
「龍…でもこれで解決にはならないよ。天華はこのままだと回復したらすぐに争いになるはずだ。それまでに兄さんが戻ってこないとね」
「え?あいつどっか行ってるの?」
「うん、多分だけど先生から能力軽減の指輪を貰うつもりだと思うよ」
「はぁ?先生のところに行ってるの?絶対怒られるじゃない!早く帰ってきなさいよ明!」
稲光暗の能力『防衛』
自分と相手との間に壁を生み出す能力。使用者が相手の攻撃を防ぐ想像ができなければ能力は発動しない。使用者の想像次第で強くも弱くもなる能力。通常の能力と比べ体力の消耗は少ない。