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大英雄の大罪人  作者: 親の顔よりみた小指
第五幕 能力専門高校生
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第六十八話 幸せなこの世界 其の三

「おい!良太!どうしたんだ?何だよその体は」

 手足が溶けている良太を見た時、俺達は無意識のうちに駆け寄っていた。

「きょ、恭介……助けて………助けてくれ。腕が……溶けてるんだよ。何で………俺が……うあぁぁぁぁ!」

 発狂してから、良太は全く動かなくなった。


「はぁ、はぁ、おい!おっさん!どうなってるんだ?良太は?」

「うるさいなぁ、ただ一人失敗しちゃっただけじゃん」

 恭介の問いに答えたのは奥の部屋から出てきた人形だった。

「………は?一人失敗?人の命なんだぞ!」

「えっと、君は……恭介君か。恭介君、科学の進歩に犠牲は付き物なんだよ………なんてね。それじゃ、次の人入ってきてね」

「犠牲?家族みたいなもんなんだぞ?そんな言葉で済むと思って……」


「ほら、次行け!」

「ちょっと、嫌!おじさん!やめて!」

 職員は葵の腕を無理矢理掴んで奥の部屋へと引き摺り込んで行く。

 俺達は何も出来なかった。足が動かなかったのだ。

「な、何で?動けなっ……」

 恐怖や怯えから来る物ではない。本当に足が動かなかったのだ。まるで何かの能力を受けている様に。


________________________


 数時間が過ぎた頃、五人が既に実験を受けて体が溶けており、残っているのは俺を含めて三人しかいなかった。

「西山、後はお前と七瀬、それと桐乃だけだ。次は誰にする?」

「………桐乃先輩、七瀬、俺が行くよ。もし二人がこの実験を生き残れたのなら何とかしてここから逃げてほしい。人形は俺達を人と思ってないだろうから」

「恭介!そんな事言わないで!まだ死ぬと決まったわけじゃないから!希望を……持ってよぉ……ぐすっ」

 桐乃は耐えられなくなったのか、涙を流しながら必死に叫んだ。


「恭介君、その……ごめんね………私今まで皆のために何も出来なかったの………皆と馴染めなくて……うっ、ごめん」

「っ!七瀬……いや、天華。お前、そんなこと言うなよ。皆お前のことは家族だと思ってたんだ。お前のことは皆大好きだったんだよ!だからさ、生きてくれよ。生きて学校に行ってくれよ」

「う、うん。私も頑張るから………恭介君も生きてよ」


________________________


 俺は人形の元に引きずられていた。

「お、恭介君じゃないか。そうだな……少しお話ししようか?」

「…………人形。お前は一体何の実験をしてるんだ?」

「おー、いきなり踏み込んでくるね。結晶って知ってるかな?能力者の心臓には結晶があるんだけどねー、それを一人に何個も移植するんだよ」

「それでどうしたら体が溶けるんだよ!」

「耐えられないんだよ、能力の負荷に。はぁ、君で六人目なのに一人も能力の負荷に耐えられる実験体がいなかった。本当、困るよねー」

 やれやれと言った顔で淡々と人形は会話を続ける。


「君はどうかなぁ。全部の結晶の能力を上手く引き出せれば君には新しく神話種『悪魔』とほとんど同じ能力が使える様になるんだけど………頑張って耐えてね?」

「クソがっ!……こ……のやろ」

 そこで麻酔なのか分からないが恭介の意識は落とされた。


________________________


「お、目が覚めた。恭介君、どうやら君の体も期待外れだった様だよ。お疲れ様〜」

 力が入らない。俺の手が持ち上がらない。溶け始めてるんだ。

「人形、おま……お前の行いは許されない。あいつらを返せ……よ」

「だんだん意識が薄れてきたでしょ。もうあまり時間も残ってないし………ここまで楽しませてもらったし君の願い事を一つ聞いてあげるよ。何が良い?」


 願い事……ダメだ。意識がどんどん消えかけて……

「あいつら……あいつらを、蘇らせろ」

 "段々と考える時間が無くなる"そんな恭介の口から何とか出てきた言葉は家族を甦らせるというものだった。

「うーん……これはまた難しい事を言うな。そうだ!兵として君達の体を使ってあげるよ。名前は……そうだなあ、泥人形ってのはどう?君達の体に相応しい名前でしょ」

「テメェ…………なに…………言って」


「ほらほら、最期なんだから笑って逝こうね恭介君。君はβのために実験を受け、βの技術の糧となった。ラッキーだろう?笑いなよ」

 人形は指をこちらに向けている。

「ハ、ハハ」

 完全にコントロールを失った体なのに何故か笑いだけが起きる。意味が分からない。あ、もう限界だ。意識が途切れる。

「あ…………天華……中学校……………行き……か……たな」


 完全に意識が落ちる。西山恭介の人生はこれにて幕を閉じた。バルバトスはいつの間にか何もない世界に戻っていた。

 これで追体験は終わりだ。かなり僕の知りたい事を知れた気がする。

「恭介君、お疲れ様」

 


 いつの間にか、バルバトスの目からは自然と涙が垂れていた。

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