第六十六話 幸せなこの世界 其の一
「さーて、それじゃあやってみようか」
僕の推測が正しければこの泥人形とやらはこれが効くはず。
「能力発動『共感』」
カッコつけたけど、失敗したらアモンちゃんにどう言い訳しようかな。
僕の意識は全ての泥人形とリンクしていた。
「……君達が泥人形の中身かい?」
明るくて何もない世界。そんな場所にバルバトスと六人の子供が立っていた。
「んと……ここは………誰ですか?」
「えっと、僕はね、晴人って言うんだ。君達はどうしてあんな事に?」
「晴人さん、あんな事って?俺達はなんでこんなことにいるんですか?中学は?」
「中学……えっと、君達何歳なの?」
「十四です……」
「はい、俺達は能力の研究所に住んでいて、そこで過ごしながら研究に協力してたんです」
「……そうだったんだ。続きを聞いても良いかな?」
「……はい。そこから、えっと、確か一人で能力を複数使えるようになる実験ってのをやりました。心臓に何個も能力の結晶を埋め込むんですよ。研究所の技術力あっての実験なんです。僕達が受けれたのはラッキーでした」
周りにいた全員が一斉に笑い出す。
「ラッキーね………この笑顔のどこに幸運があるんだろうか……続きを教えて?」
「は、はい。それから……あれ?何でだろ、記憶が………無い?えっと、あれ?」
「落ち着いて、ゆっくり思い出してごらん?一緒に実験を受けた人はいる?」
「えっと……葵と春乃と良太と湊と瀬名と、あれ?二人足りない……」
少年は辺りにいる一人一人を指差しながら確認して首を傾げた。
「二人?教えて?」
「えっと、桐乃先輩と……七瀬だ! 天華もいない!」
「えっ…………天…華?」
「え?晴人さん七瀬の事知ってるのか?七瀬元気ですか?あいつは俺達の同い年の中だと一番弱くてモジモジしてたんですよ。桐乃先輩も心配してて……」
「………君達のいた研究所の名前って分かる?」
「ああそれなら、能力総合研究所………施設の人はβって呼んでました」
どういう事だろう。天華ちゃんはβの出身だった?でも天華ちゃんは『天使』の能力者じゃないか。
「………よし分かった。君から色々と聞くのも大変だしさ、君の記憶を見せて欲しいな。良いかな?」
「はい、でもどうやって……」
「気にしなくて良い。君は目を瞑っているだけで良いんだ。君の名前を聞いても良いかな?」
「えっと、俺は恭介。西山恭介……です。晴人さんが何を知りたいのか俺達には分からないけど、きっと晴人さんの役に立つだろうから……俺の記憶なら使ってください」
「うん、ありがとう恭介」
バルバトスは以前一度天華にしたように、額を合わせる。
「…………能力発動。少しの間じっとしててねー恭介」
バルバトスは目を瞑る。
次に目を開けた時、バルバトスは目線が低く、見知らぬ施設にいた。
「ふう、今日は能力の使いすぎかな……少し頭がジーンとする」
さて、僕はここからは見物人だ。一体どんな闇が出てくるのか……探らないとね。
「おい!西山!何故こんな場所にいる。貴様は実験体だろうが。勝手な行動はするんじゃない!」
背後から大人の声が響き渡る。
僕は西山恭介、彼の人生を追体験していたのだった。




