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大英雄の大罪人  作者: 親の顔よりみた小指
第五幕 能力専門高校生
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第六十五話 泥人形

 時は少し遡り、対増長決着前。

「………雷?」

「近くに落ちたんでしょうか……そもそも雨なんて降ってましたっけ」


「お前らよ、よそ見してる暇なんてあるのか?」

 有馬の両手はバチバチと音を立てながら発光していた。

「有馬君、君の能力って何だっけ。君ずっと僕らとは関わりが薄かったし……よく分かんないんだよね」

「そうか……俺はお前達二人の能力について、良く分かっているがな。晴人、お前が弓術か何かで亜門、お前が炎系だろ?」

「アハッ、流石だね有馬君。そこまで分かっておきながら僕らに挑んでくるとは……よっぽど自信のある様だね」


「ああ、俺はβで生まれ変わったんだ。見せてやる。生まれ変わった俺の能力をよ!」

 直後、有馬の両手の光が少しずつ魔法陣の様な形に変化していった。

「桐乃見てろ、これが今の俺の力だ。『召喚』」


 有馬の手を覆う光がより一層強くなる。そして、この世のものとは思えない鳴き声、もしくは叫び声の様なものがバルバトスとアモンの耳を貫く。

「ぐゔぅっ、な、何の鳴き声ですか?この耳をつんざくような雑音は」

「わ、分かんない。………これが有馬君の能力?」


「フッ、まだまだ前座だ。俺の能力の真髄はこれからだ」

 有馬が手を合わせると魔法陣が大きくなり、中から人の手が伸びて来た。

「……アモンちゃん?な、なにあれ」

「や、何で私に聞くんですか?でも何とも不気味というか………気色が悪いと言いますか」


 すると突然、魔法陣の中から人の形をした何かが何体も這い出て来た。液体に塗れているのか、もしくは身体が溶けているのか。その生物が発する物と言えば、救いを求める声と悲鳴だけだった。

「…………ねえ有馬君、君のその能力って一体何なのかな?」

 バルバトスが何かを察したように声色を変えて話す。

「アッハハ、俺の能力はな『召喚』だ。俺が見たことのある奴は好きに呼び出せるんだ。………見事だろう?この泥人形共は。こいつの素体はな、本物の人間なんだよ。必要のなくなった奴を『召喚』で武器にする。これが生まれ変わった俺だけの戦い方だ」


「『召喚』って、確か美蘭さんの友人が使っていたような……いや、それよりも」

「うん、アモンちゃん。有馬、殺そっか」



「お、おいおい。どうしたんだよ突然殺気立てて。晴人?亜門?まさか俺のことを殺す気なのか?冗談だろ?元クラスメイトだろ?」

「ああ…………そういえばそうだったね。………外道すぎて忘れてたよ。頑張って抗ってみれば?」

「は?正気かよお前ら」

 突然態度を変えて自分を狙い始めた目の前の二人に有馬は怒りを隠せずに言った。


「ああ、正気だ。そして君は……正気じゃない」

 バルバトスはすぐに弓を構える。

「βはやっぱり異常だ。こうも倫理観に反した物を作り出すなんて」

「晴人、俺に攻撃するつもりか?泥人形が盾になってくれるからな。その矢が俺まで届くことは無いぜ?」

 有馬は泥人形と呼ぶ人の後ろに隠れる。


「泥人形……嫌な呼び名だ。有馬、君はβで生まれ変わってなんかいない。堕ちたんだよ」

 バルバトスは有馬を睨んだ。

「人形さんの言う通りだ。やはり泥人形がいればコイツらは攻撃出来ない!倫理だなんて何でも良いんだよ、勝てればな。………さて晴人、格闘戦は得意か?」

 有馬は聞く耳を持たずに泥人形を動かし始めた。


________________________


「ぐっ、アモンちゃん、大丈夫?」

「は、はい。大丈夫ですが、このままだと防戦一方ですね」

 バルバトス達は何体もの泥人形と直接戦闘をしていた。

「くっ、僕はあんまり戦闘が得意じゃ無いんだけどな。それにこの人達を殺すわけにはいかないしな」

 二人は、泥人形の素体として使われた人達の身を案じ、トドメを刺すことが出来ずにいた。


「有馬……あいついつの間に。アモンちゃん!有馬の姿が見えない。近くで寝ていた桐乃ちゃんも!」

「なっ、この人達を残しておいて自分達は逃げですか。呆れる。まだそれほど遠くには行けてないはずです。早く追いましょうバルバトス!」

 逃走を許してしまった焦りからかアモンは早口気味に叫んだ。


「先に行ってアモンちゃん。この人達は僕に任せてよ」

「え、ですが、二対一の時点でもう限界そうじゃないですか。任せるなんて無理です。私が手を汚します。バルバトスは離れていて……」

「アモンちゃん、僕に策があるんだ。僕を信じて」

「………わかりました。失敗は許しませんからね。バルバトスの様な人でもいなくなったらボスが悲しむでしょうから」


「フフッ、任せて、アモンちゃん」

 バルバトスは泥人形の攻撃を防ぎながらアモンにピースサインを送ったのだった。

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