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大英雄の大罪人  作者: 親の顔よりみた小指
第五幕 能力専門高校生
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第六十四話 会心

「この攻撃、防げるかな?『雷光』」


 直後、その場には轟音と焼けるような匂いが漂った。

 校舎の一部が衝撃により崩壊を始めていた。

 美蘭と明が寸前まで立っていた場所に、雷が落ちたのだ。それほどまでに大きな力が自然現象では無く、目の前の男一人の力によって引き起こされた超常的な現象だった。


「さて、肉体が形を保っているのか……見ものだな」

 増長はゆっくりと落雷の跡へと歩みを進める。

「ム、出力を誤ったか?灰になられては結晶の回収も出来ないのだが………困った、これではまた人形に文句を言われてしまうな」

 増長は全て終わった様に先へと歩みを進めた。


「オイ………誰が灰になったって?」

 増長の背後からつい先程まで会話をしていた声が聞こえた。

「………なんと、あの威力で傷一つつかないとは、驚いたな。流石は最強の神話種だ」

「そう見えるか?二人分のダメージを防いだんだ。クッソ体力使ったんだぞ?」

「そうか………正直舐めていたな。『運命』という物を」

 そう言って再び増長は構えを取る。

「もう効かねーよ。お前の雷はな」


 美蘭は一気に増長との距離を詰める。

「……速ッ」

 増長はギリギリで手を構えて防御の姿勢をとる。

 ドゴッという大きな音がした。人の身体からは本来しないであろう音が。

「フッ、折れただろ。その腕」

 美蘭は増長の自由を失ってぶら下がっている腕を見て、得意げに笑みを浮かべた。

「これは……何とも、化け物としか言いようがない」


 遭遇してからずっと上機嫌で余裕を見せていた増長が、初めて焦りの色を見せていた。

「もう戦えないだろ。増長……だったか?今のお前ならここのバカ弟子でも勝てるぞ?」

「舐めないでいただこうか、如月美蘭。これだけで戦闘不能ならばβで二位の座まで行けないのだ」

 増長は背筋を伸ばして目を瞑った。次の瞬間、増長の身体からバチバチと音が鳴った。


「………発動……強制操作、神経麻痺」

 増長が言い終えると、増長の全身の至る所から血が噴き出した。

「ゴフッ、これで……遅れは取るまい」

 血で真っ赤に染まった目を開き、増長は戦闘の構えを取った。


「おいおい、あんな状態で続けるって言ったって酷だろうに。増長は何がしたいんだ?」

「いや、明。あいつの腕を見ろ。さっきの外傷は治っていないのに動いている。奴……何かが変わったんだ」

 増長の腕は明らかにおかしな方向に曲がり始めている。それなのに平然と行使できている。


「増長、痛いだろう?さっきのは会心の一撃だ。降参でも良いんだぞ?」

「な、情けか?フ、フフ……必要……無い。私は、これから……痛みを受け入れな…いのだ」

「フラフラのくせして気持ち悪いな。それなら受け止めてみろ」

 美蘭は先程と同じ様に一瞬で距離を詰めた。だが最初とは違い、増長は動き出しから見えているかの様に美蘭の拳を完璧に受け流した。


「フ、フフッ、どうだろうか?如…月美蘭よ。私は……私の能力は?……脳内に電気を流して、身体を強制的に動かす。ゴフッ、痛みすらも感じない。完璧な体になったのだよ!」

 目の焦点が合っていない。奴……身体に相当な負荷が掛かっているんじゃないのか?それなのに何であそこまでハイってやつになれるんだ。

「聞け明、増長の動きが最初とは別次元の速さになっている。それにおそらくあいつは死ぬまで止まらない。何としてでも生き残るぞ」

「あ、ああ」


 増長はおぼつかない足を少しずつ前に動かし始める。

「次はこちらからやらせて貰おうか。ゴホッ」

 増長は血を吐きながら尚も歩みを止めない。

「最大……出力……如月…美蘭、ゴフッ」

 増長の手からは鳥の鳴く様にバチバチと音が鳴り続ける。


 増長の手が地面に触れた瞬間、身体中に焼けるような痛みが走る。

 耳が聞こえない。クソッ、やられたか。先生の方は……

「おい明!クソッ、『運命』の発動が遅れた。大丈夫か?」

 先生はどうやら大丈夫そうだ。ああ……段々と意識が遠のいて来た。何も……出来なかったな。コイツの決着は先生に任せよう。


 俺はそこで完全に意識が途切れた。


________________________


「まずは…ゴフッ……一人」

「………こいつはこの程度じゃ死なないさ。私の弟子だぞ?」

「そいつは……良かったな……ぁ。次はお前だ、如月美蘭よ」

 増長は再び手に能力を込める。


「またそれか。ただ、好き勝手にやらせちゃこっちも困るんだ。今そこで弟子が倒れてるんでな、殺させるわけには行かないんだよ」

 美蘭は拳を増長に対して向ける。


「発動だ。お前……もう動くな」



「何…だ……体、動かな……」

 増長は完全に動きを止めた。

「お前の運命を弄らせてもらった。もうしばらく動けないだろう。冷静であればこの運命を辿る事も無かっただろうに。………さて、今度は私の番だな。………言い残すことはあるか?」


 増長はしばらく間を空けて、

「私…達の目的について……知りたければ…………富士山へ行け。…………全てが……分かる…だろう」

と途切れ途切れに口にした。


「…………何故そんなことを」

「褒美……だ。私に勝利したな。もう……能力を解く…と良い。能…力の効果が……切れたのだ。もう指一本……動かん」

「………ああ」

『運命』の能力が解け、増長は地面に倒れ込んだ。


「私は……もう戦闘員としての…役割を全う出来……ない身体になっているの…だろう。頼む如月美蘭よ。このまま殺せ」

「麻痺も引いて自分の体のヤバさをようやく自覚したのか。ああ、楽にしてやる」


 美蘭は増長の胸に腕を突き刺していた。



 数分後、降り続けていた雨が突然止んだ。

 直後、足から増長の身体が灰のように崩れ始めていた。

「……何だ?コイツの身体が崩壊し始めて」

 美蘭がその事実に気付いた頃には、既に増長の身体は完全に崩れ落ちていた。


「これは……一体?」

 床には灰が積もって、その中には大きな結晶が紛れていたのだった。

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