第六十三話 雷光
未だ戦闘のない静かな廊下。そこに二つの影があった。
「なあ先生。俺単独行動じゃダメか?」
「ダメだ。明、お前前回βの六位の奴に負けてただろうが。一人でなんて動かれると誰も助けに行けないんだよ」
「そうかよ。でも、それなら何でアモンとバルバトスには誰も付いてないんだ?」
「あの二人がピンチになったら校長のジジイが動くことになってる。だから心配すんな」
ちょっと不公平な気もするが……まあ良いか。
そんな事を話していると、突如廊下にコツン、コツンと足音が響いた。
「先生?」
「どうした?」
「この気配、誰だと思う?」
「そうだな………三位だろ」
俺達がそんなことを話していると、正面から人影が現れて言った。
「残念、私は二位の増長だ」
一気に空間の空気が重たくなるのを感じる。
「何の用だ?増長とやら」
「ほう。まさか神話種がいるとはな。氷女とは逆に進んで良かったと考えるべきか。奴では勝てないだろうしな」
増長は指を美蘭に向ける。
「さて……言い残すことは?」
まさかいきなり勝利宣言?先生がそんなすぐに負けるわけ無いだろう。
「クックッ、上等だ。何か知らんが打ってこい!」
先生が言い終わった直後に、パリッと音が鳴った。
「ぐっ、カハッ!」
先生は体勢を崩し、鼻血を出していた。
「な、何だ?今先生に何をしやがった」
「クソッ、『運命』の発動が遅すぎた。今の……電撃か?」
先生は鼻を拭って再び増長に向かい合った。
「良い観察眼だ。如月美蘭よ。私は『雷』の能力者。一度の使用で見抜かれた事など無かったのだが、流石最強と言ったところか?」
増長は機嫌の良さそうに微笑んだ。
「さて、一撃を耐えた褒美だ。面白いものを見せてやるとしようか」
増長は両手を天に掲げる。
「ム、建物が壊れることになるが………まあ良い。どうせ雨で炎は消えるだろう」
増長は手を上にあげながら回転させる。それと同時に空に雲が集まって行く。
「先生……嫌な予感がする」
「ああ、私の近くにいろ。私が能力を使える限りは私達に死はあり得ない」
「でもさっき一撃でやられかけてただろ」
「……来ると分かってれば喰らわなかったさ。ん?雨か?」
美蘭は窓の外を見ると、まさに大雨と呼べるほどの雨が降っていた。
「何で急に………っ!先生っ!」
「ああ分かってる」
「さあ楽しもう。如月美蘭よ」
増長が指を下に向けた途端、空からゴロゴロと大きな音が聞こえてきた。
「防げるかな?『雷光』」
その後、学校中に轟音が鳴り響いた。
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「………何だ……雷か?」
「あ、如月先生、目が覚めたんですか?」
「月島……お前、何で……逃げろって言ったろうが」
「あの状況で如月先生を置いて逃げるのは無理ですよ。それに、私一人であの氷は対処できないでしょうし」
「ああ、そうかよ。面倒だ」
如月は億劫そうに起き上がり、背後に目線を送る。
「もう戻ってきたのか、晶。リベンジマッチでもしにきたのか?」
晶の黒い髪や服は如月の攻撃の影響が抜けていないのか波形を描いていた。
「ハ、ハハハッ。すまなかったな、見くびっていたよ如月奏。あくまで挑戦者は私だったのか」
「……そんなら帰ってもらって構わないんだがな」
「挑戦者として戦うのは久しぶりなのでな、余計に勝ちたくなってしまったよ」
「…………面倒だ」
「さて、再演だ。『氷上の戦』」
晶の足元には一回目よりもはるかに大きなリンクが形成された。
「もう一度やろう。如月奏よ」
「もう体力も無いってのに………面倒だ」
如月は凛の前に立ち、再び晶との戦いに臨むのだった。




