第六話 本物
「まさかの『天使』持ちがこんなところにいるとはな」
「それにしても『天使』に加え二つの能力か。おい明、こいつのことどうするんだ?」
龍が聞いてきたが俺も現実味が無くあまり状況をつかめない。
「天華、お前に家族はいるか?」
「分かりません……でも家族に捨てられて研究所に入れられたんでしょうね」
「お前くらいの歳なら孤児院とかでも引き取ってもらえるだろうし、明日新日本の孤児院に行ってみるか」
孤児院と聞いた瞬間天華の目に少し恐怖の色が見えた。
「孤児院だと嫌か?」
「は、はい、できればやめていただきたいです」
「そうか……」
だとするとどうするか……俺達は世界に常に追われているから人との関係が薄いんだよな
「兄さん、『天使』持ちを普通の施設に預けるのは危険じゃないかな…しかも能力を二つも持ってるし」
「そうだな…うーんだったら…」
「私たちと一緒に暮らすのはどう?」
乃亜が話しかけてきた。
「でも俺達と一緒だと色々と面倒だぞ?常に追われて過ごさなきゃだしな」
天華が俺に疑問を持った顔で問いかけてきた。
「あの、四人は追われているんですか?なにか事件にでもあったとかですか?」
「あれ?言ってなかったっけ、俺達は世間一般でいう四大罪人ってやつだよ」
「えっ」
あ、これ言っちゃダメなノリだったかも。
「あぁいや、四大罪人って言われてるのにはちょっと理由があってさ」
「まさかとは思ってましたけど、やっぱりそうなんですね。旧日本近くに拠点を置いてるのもそういうことでしたか」
天華の声が一気に冷たくなったのをその場にいる全員が感じ取った。
「て、天華?俺達は実は優しいヒーロー集団でだな」
「兄さん、それは無理があるよ」
「………本当に残念ですがあなた達は世界の……そして皆の敵です。少しの恩はありますがここで死んでもらいます」
「お、おい!天華!落ち着けって!」
これが現代の洗脳教育の恐ろしさってやつか。全く。
天華は翼を広げ一瞬で空中に浮遊し始めた。俺は無意識的に冷や汗をかいた。
「あれは、『天使』の飛行能力か!まさか使いこなせるのか?」
「兄さん!『天使』の能力が使いこなせるなら兄さんは不利だ!下がってくれ」
「でも暗、お前だってどうなるか分からないぞ!神話種との戦いなんて」
「兄さんに浄化が当たるよりはマシだと思うよ」
「クソッ、絶対に殺すなよ!そして死ぬな!」
ここで天華を俺達が殺してしまえば、俺達は天華の言う研究所の奴らと何ら変わらない。あいつの味方がいなくなってしまう。
俺はあとの3人に戦闘は任せて拠点の外に出ることにした。
そして俺はとある人のことを考えているのだった。
七瀬天華の能力の一つ『滑走』
地面に両足がついてる時のみ高速で移動することが出来るようになる。ただ、地面にある凹凸に弱くすぐに止まることもできない。天華が明から走りである程度逃げれたのはこの能力の力である。