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大英雄の大罪人  作者: 親の顔よりみた小指
第五幕 能力専門高校生
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第五十五話 喪失

「よし、そんじゃ帰るか」

 俺達が如月に打ち勝ってしばらくした時、それまで休んでいた如月が喋り始めた。

「そろそろ高校に戻るのか?」

「ああ、こんな島に長居する必要はないし、したくもない。光、とっとと全員連れてこい。船は来た時と同じ場所だからな。迷うなよ」

 そう言って如月はすぐに立ち去ってしまった。

「はあ、有馬達探すか。にしてもこの島の中から二人を探すのか……果てしないな」



「いない……だと?そんなはずないだろ。この島から外に出る手段は船以外無いはずだぞ」

 如月の発言は全くその通り。いなくなるなんてあり得ない事なのだ。

 だが現にこの島に、有馬と桐乃の姿は無かった。

「どっちかの能力なんじゃないのか?例えば……『移動』とか」

「それはあり得るな。まあ『移動』の線は無いだろうがな。はぁ、高校まで来て早々に行方不明とは……面倒にも程がある」


「まあ分かった。俺達は高校に帰ろう」

 そう言って如月は船に一人乗り込んで行く。

「おい、あの二人の事はどうするんだよ」

 俺が如月に聞くと、

「……上……つまり協会が動く。結果が届くまで詮索はするな。あんなゴミ共と若いうちから関わるもんじゃ無い」

 と言って船の中に入って行った。


 ゴミ共って……協会なんだから立場上自分の上司だろうに。こう言うところを見ると姉と変わらないな……

 俺はそんな事を思いながら如月について行った。


________________________


「晶様……お伝えしたいことがございます」

「……何だ?言ってみろ」

「βに興味を持つ青年を連れて参りました。是非彼もβに入れてもらえないでしょうか」

「……影、いや、今は桐乃と名乗っているんだったか?随分と偉くなったじゃないか。序列十位以内でないのに名を名乗り、その上私に推薦をする様になるとは」


 晶と呼ばれた女は、桐乃の額に爪を食い込ませて背後に立っている青年の元へと歩み寄った。

「お前だな?βに入りたいと言うのは。名を名乗れ」

「あ、有馬、有馬薫です。入りたいと言うよりかは……興味があるなーと言いますか」

 有馬はこれまでの生意気と呼べる態度は一切表に出さずに会話に臨んだ。


「ほう、面白いな、お前。ここにいる桐乃なんぞよりよっぽど良い」

「あっ、ぐっ」

 爪が食い込んでいる桐乃の額からは、ゆっくりと血が流れていた。

「あっ、晶様っ、離してくださっ、痛いっ!」


「さて有馬よ、お前、名を捨てる覚悟はあるのか?」

「名を捨てる……ですか?」

「ああ、βは序列の十位から下は名乗る権利は無いのだ。私は七位の晶だ」

「……名を捨てる」

「気にするな。すぐに十位まで上がってこい。βは実力主義だ。新人だろうと序列一位だろうと評価の基準は同じなのだ。簡単だろう?」

 晶は冷たくも、また温かくもある視線を有馬に送る。


「わ、分かった。入らせてください」

「ああ、組織の方には私が推薦しておこう。さて、有馬よ、良い子だからお前は一度部屋から出て行くと良い」

「あ、ありがとうございます。失礼しました」

 有馬はそそくさと晶の前から立ち去って行く。


「よし、桐乃、次はお前の番だ」

 晶は桐乃の頭から手を離す。

「晶様、申し訳ございません。申し訳っ、があっ!」

 晶は桐乃の髪を掴み、宙吊りにしていた。

「申し訳ございませんじゃ無いだろう?桐乃よ、お前の役目は何だ?誰が新人を探してこいと言った?」

 晶の手は再び桐乃の顔に伸びている。

「お前は些か自我を出しすぎるところがある。無能、無駄、不愉快だ。そこでだ、私はお前を自由にさせ過ぎたのかもしれない。少し躾けなくてはな」


 晶の指が桐乃の右目に伸びる。

「お前から世界を半分奪う。……これで少しは大人しくなると良いのだが」

「あっ……ひぎっ!やっ、やめっ!ああああああああ」


「これは大切に保管しておいてやる。返してほしければ次こそはしっかりと働くことだ」


 その日、晶の部屋の純白だったタイルは何枚かが赤く染まっていたと言う。

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