第五十二話 下剋上
俺達は今、海の上にいた。正確には船上。俺達が何故こんなところにいるのかと言うと、つい数時間前の如月の発言のせいである。
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「さて、今日で一週間だ。何人かはBに落ちる覚悟で臨んでもらう」
全員が落ち着いてから如月が話し始めた。
「場所は協会が所有している島。そこでお前らには俺が持ってるボールを奪ってもらう。協力するも良し、能力だって自由に使ってこい。ルールはそれだけだ」
「如月先生、期間はどのくらいあるんですか?」
全員が疑問に思っていたことを凛が聞いた。
「二日間、そんだけだ」
二日か。それだけあれば何とかなるだろう。ただ、問題なのはこいつらが協力するかどうかだ。アモンとバルバトスは大丈夫だ。オリヴィアとは一週間かけてチームワークを磨いて来た。ただ問題は他の三人だ。
凛はオリヴィアのファンだから何とかなるだろうが、有馬とはほとんど話したことが無いし、桐乃に至っては……何も分からないな。
まあ、仕方ない。今ある手札で勝負するしかないな。
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「うっぷ、ひ、光君。ちょっとだけこっち見ないでね」
「オリヴィア、お前船酔いとかするタイプだったんだな」
「ゔゔぅ、こ、これは、船酔いなんかじゃ、うっ」
海に出てから数時間。オリヴィアはずっとこの有様である。何で強がっちゃうかな。
「お、見えたぞオリヴィア。あれが多分目的の島だ」
「や、やっとついたのかい?はぁ、はぁ、うっぷ」
こいつはしばらくの間は戦力として見ない方が良さそうだな。
「んーっと、上陸したらもう好きに動け。俺は島のどっかをぶらぶらしてっから。あ、ボールってのはこれな」
上陸する直前、如月が全員を集めていた。如月はネックレスの様に一つのボールをぶら下げている。
「よし、んじゃあ、解散」
船がちょうど着いたタイミングで如月の姿は消えていた。相変わらずとんでもないスピードだ。
全員が自由になった途端、有馬が、
「好きに動けって言ってたよな。俺は一人であいつを倒す。そんでもってお前らを蹴落として俺はAに残ってやる。覚悟しとけ」
と言った。
「おい有馬、お前先週先生にやられてるだろ。なのに一人で勝てると思ってるのか?」
「光……だったか?お前みたいな優等生が俺は一番嫌いなんだよ!それに何より……あそこの女と共闘なんかしたくないんだ!」
有馬はそう言いながらオリヴィアを指差した。
「有馬君、先週は本当に悪かった。ボクは調子に乗っていたんだ。だからもう一度ボクと戦ってくれないか?」
オリヴィアは申し訳なさそうに有馬に対して謝罪した。
「フンッ、今更何言ってんだよ。お前の言葉なんて信じられると思うのかよ」
それだけ言い捨てて有馬は島の奥に姿を消して行った。
「……オリヴィア、気にするな。桐乃、お前はどうする?俺達と動くか?それとも単独で行くか?」
「わ、私は……あまり関わらない方が良いですから」
俺が使える手札は、アモン、バルバトス、オリヴィア、凛か。想定よりも少なくなったな。
如月奏は能力以外は姉と大差ないステータスをしている。何とか一発叩き込んでボールを奪いたいが……現状でやり切るしか無いか。
今の俺達で如月奏を倒す。それだけを考える。




